町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

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第28章 王都の暗雲と枢機卿の陰謀

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王都の暗雲と枢機卿の陰謀

王都ルミエールはヴァルシア王国の繁栄の象徴として白亜の建築と魔法の光に彩られているが、その裏では不穏な影が広がっていた。モートン枢機卿の禁断の計画が静かに動き出し、ヴァルシア王国に危機が忍び寄る。密輸、奴隷売買、魔獣の襲撃が王国を揺さぶり、闇の勢力が台頭する中、王宮と民衆の間に緊張が高まる。

王都の暗部

ルミエールは人口50万を誇るヴァルシア王国の政治・文化の中心地だ。白亜の塔がそびえ、魔法学院や商業ギルドが軒を連ね、街路には馬車と魔力の光が交錯する。しかし、港の暗がりや裏路地の闇市場では、隣国のオルティス帝国や南のカルヴァド公国からの密輸品が取引され、禁じられた奴隷売買が横行していた。ヴァルシア王国では奴隷制度が法で禁止されているが、貴族たちが外国で購入した奴隷を密かに持ち込む事例が後を絶たなかった。

 闇市場の薄暗い倉庫では、金貨を握り潰す貴族たちが、鎖に繋がれた人々を品定めする姿が広がる。「オルティスの労働奴隷、鉱山で五年は持つぞ」「カルヴァドの歌姫、夜会で貴族の目を引く」と商人が囁く声が響く。衛兵隊長ラルフは密輸船を摘発するたびに新たなルートが現れる現実に苛立ちを募らせていた。「王国が奴隷を禁じても、金に目が眩んだ貴族が後を絶たん。港の監視を強化しても、裏路地の取引は止まらねえ」と部下に吐き捨てる。

 辺境の魔獣と騎士団の苦戦

 王都から遠く離れた辺境の村々では、異形の魔獣の襲撃が頻発していた。牙を持つ狼型魔獣は月光の下で不気味に吠え、鱗に覆われた巨大な蛇は農地を這い、額に魔力石を宿す熊型魔獣は家畜を一瞬で引き裂いた。これらの魔獣は異常な速度と魔力を発し、従来のものとは異なる凶暴性を持っていた。辺境の農夫は村の酒場で震えながら語る。「まるで魔王の軍勢だ。奴らの目が赤く光って、畑が一夜で枯れた。魔力が濃すぎるんだ‥」

 ヴァルシア王国の第一騎士団長オルウェンは、精鋭部隊を率いて辺境に派遣されていたが、魔獣の出現範囲は広大で対応が追いつかない。陣営で地図を広げ、部下に問う。「魔獣の巣を突き止めねばならん。だが、動きが予測できん。」部下の一人が報告する。「閣下、魔獣の魔力石から黒い霧が立ち上るのを兵が見ました。まるで呪いだ」オルウェンは眉をひそめ、「魔王の残滓が再び蠢いているのか‥調査を急げ」と命じる。彼はかつて魔獣大戦を戦った英雄たちと共闘した経験を持ち、魔王の封印が不安定化している可能性を疑っていた。

 第二騎士団長も「辺境の村は壊滅寸前です。援軍を増やさねば」と進言するが、騎士団の兵力は王都の防衛にも割かれており、限界に近づいていた。オルウェンは「魔獣の背後に何者かがいる。単なる自然現象ではない」と直感していた。

 王宮の会議と重い空気

 ルミエールの王宮の大広間では、国王レオニス・ヴァルシア、貴族、騎士団長、ミリス教の枢機卿たちが連日会議を開いていた。燭台の光が揺れる中、長いテーブルの上には地図、魔獣の報告書、密輸の摘発記録が山積みだ。国王が重々しい声で言う。「密輸、奴隷売買、魔獣の襲撃‥我がヴァルシアは危機に瀕している。解決策を述べよ」

 第一騎士団長オルウェンが進み出る。「陛下、辺境への騎士団派遣を増やしますが、魔獣の数が異常です。広範囲で魔気を調査すべきかと」第二騎士団長が補足する。「村々の被害は深刻です。農地が荒れ、食糧不足の恐れも」財務卿が反論する。「騎士団の増派には莫大な金がかかる。密輸摘発に衛兵を割くべきだ。港の監視が先決です」貴族の一人が声を上げ、「奴隷はオルティスやカルヴァドでの取引だ。王国の法では裁けん」と開き直る。別の貴族が「魔獣は辺境の問題。王都の我々に何の関係が?」と無責任に言う。会議は紛糾し、貴族たちの利害がぶつかり合う。

 ミリス教のモートン枢機卿は静かに手を上げ、冷ややかな声で言う。「魔獣の襲撃は神の試練。ミリス教は祈祷で民を導く。騎士団は無駄な戦力を使わず、信仰に頼るべきです」国王レオニスは鋭い目で枢機卿を見据え、「祈祷だけで魔獣は止まらん。民の命を何と心得る?」と一蹴。モートンは微笑を浮かべ、「陛下のご判断に委ねます」と一歩退くが、その目は不気味な光を帯びていた。会議の後、側近に囁く。「国王は愚かだ。魔王の復活が、真の秩序をもたらす」

 貴族の中には、モートン枢機卿の影響力に迎合する者もいた。ある伯爵が「ミリス教の祈祷は民の心を落ち着ける。騎士団より効果的だ」と言い、他の貴族が頷く。一方で、騎士団寄りの侯爵が「枢機卿の言葉は無責任だ。魔獣の脅威は実在する」と反発。会議は結論を出せないまま、国王は「明日も議論を続ける」と宣言し、疲弊した表情で退席する。

 暗闇の研究室

 モートン邸の地下に隠された研究室は、燭台の薄暗い光に照らされ、魔力石から漂う黒い霧が部屋を満たしていた。モートン枢機卿は黒いローブをまとった男たちと密談し、テーブルの上に置かれた魔力石を手に取る。その石は脈打つように光り、触れる者に不気味な囁きを響かせる。「魔王の魔気を制御できれば、王国の秩序は我々の手に。奴隷も、魔獣も、全ては神の意志を体現する道具だ」と枢機卿は低く言う。

 ローブの男の一人が不安げに進言する。「枢機卿、魔獣の実験は進むが、制御は不安定です。騎士団に計画が露見する恐れが‥」モートンは冷笑し、「騎士団など、魔気の前に脆い。ハーシーが我々の駒として完成すれば、敵は自ずと潰れる」もう一人の男が「闇市場の魔力石の取引は順調です。オルティスからの密輸ルートも確保しました」と報告。モートンは頷き、「奴隷と魔力石を確保せよ。魔王復活の儀式に必要だ」と命じる。

 ハーシーは王都に残り、父の命令で研究室に呼び出されていた。黒い水晶を握り、父の言葉に耳を傾ける。「憎悪を育てろ。お前の心が魔王の力を呼び覚ます」ハーシーの目は狂気を帯び、「全てを奪う…私のものだ」と呟く。モートンは微笑み、「その憎悪こそ、我が息子よ。魔王の器として完成せよ」と満足げに言う。ハーシーは水晶の囁きに導かれ、魔獣を操る魔術の実験に参加。モートン枢機卿は闇市場を通じて魔力石を大量に仕入れ、魔王復活の儀式を加速させていた。

 研究室の奥には、巨大な祭壇が隠されている。祭壇の中央には、魔王の封印を解くための魔術陣が刻まれ、黒い霧が渦を巻く。モートンは祭壇に手を置き、「我が主、魔王よ。復活の時は近い。ヴァルシアは我々の手に落ちる」と誓う。ローブの男たちが「ミリス教の名の下に」と唱和し、研究室は不気味な静寂に包まれる。

 王都の民衆と不安の広がり

 ルミエールの民衆の間にも、不安が広がっていた。市場の商人たちは「辺境の魔獣が王都に近づいてるってよ」と囁き合い、パン屋の老婆は「ミリス教の祈祷じゃ魔獣は止まらん。昔の英雄みたいなのが必要だ」と愚痴る。冒険者ギルドの依頼板は魔獣討伐の依頼で埋まり、受付嬢エマは「こんな数の依頼、初めてだよ。ギルドも人手不足だ」と頭を抱える。

 酒場では、冒険者たちが魔獣の噂で盛り上がる。「黒い霧の魔獣、剣が通りにくいんだ」「魔力石を砕くと、変な声が聞こえるぜ」彼らの話は、確たる証拠はない。衛兵隊長ラルフは酒場に立ち寄り、冒険者たちに「情報があれば俺に持ってこい。報酬は弾む」と呼びかけるが、誰も名乗り出ない。今や王都のみならず国全体に不穏な空気が流れているのは間違いなかった。
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