町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

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第37章 モートン領の地獄とルシアンの危機

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モートン領の地獄とルシアンの危機

王都ルミエールは、ヴァルドール領のキメラ製造疑惑で混乱に包まれていたが、学院は10日間の春休みに突入していた。

モートン領でのクララの苦難

モートン領のモートン邸、別館の鉄格子が嵌められた部屋で、クララ・モントールは2ヶ月を過ごしていた。ハーシー・モートンとの婚約を名目に軟禁された彼女は、モントール領から連れてきた執事エドウィンとメイドのフィオナだけが心の支えだった。春休みにハーシーがモートン領に帰還し、クララに初めての面会に来た。ハーシーの目は憎しみと狂気に満ていた。「貴様も気の毒な女だな!」とクララに当たり散らすのだ。「ハーシー様、落ち着いてください‥」と優しく声をかけ、内心で涙を飲み込む。ハーシーは「ルシアンの女だろ! あの傷物の女もそうだ!」と叫び、クララへの憎しみをぶつける。クララは「ハーシー様、私はあなたの婚約者です」と優しく接し、心を閉ざして耐え続けた。ハーシーはそのまま部屋を出て行った。

2日目、3日目も同様の苦しみが続き、クララの心は疲弊していた。だが、彼女はモントール領の民のためにと覚悟を決ている。ハーシーは相変わらずクララに当たり散らすだけ。その度にクララは優しく声をかける。「下手に抵抗したら何をするかわからない」ハーシーはそれだけ憎悪に満ちた顔をしている。4日目の昼、ハーシーは突然クララを外に連れ出し、モートン領の街へ向かう。雪が溶け始めた街の屋台で、ハーシーは名物の串焼きを買い、「食えよ」とぶっきらぼうに渡す。クララは「ありがとう、ハーシー様」と微笑み、串焼きを食べる。ハーシーの周囲に渦巻く黒い霧が、ほんの一瞬、薄れたように見えた。クララはハーシーの変化を感じ、「この人は‥本当はこんな人じゃない?」と希望を抱く。実際に前はこんなにひどい訳ではなかった。

その夜、ハーシーはクララに初めて優しい声で話しかける。「クララ‥なんでお前、俺をそんな目で見る?」クララは「ハーシー様は‥本当は優しい方だと信じてます」と答え、勇気を出して尋ねる。「ハーシー様、森の奥の工場って何なんですか? 荷馬車がよく行ってるけど‥」ハーシーの表情が硬くなり、「あそこには近づくな。親父の実験場だ」とだけ答える。クララは「実験場‥」何の実験?」と心の中で疑念を深める。ハーシーはそれ以上話さず、本館に戻る。

クララは部屋に戻ると、執事エドウィンに囁く。「エドウィン、森の奥の実験場、絶対怪しい。冒険者ギルドに『眠れる羊』のクラン章を持って手紙を届けて。モートン領の異常を報告してほしい」クララはクラン章をエドウィンに渡し、「ここを出るのは難しいけど、クランなら信じられる。モートン領の冒険者ギルドに持って行って。他は信用できない」と言う。エドウィンは元冒険者の経験から危険を察し、「クララ様、危険ですが‥必ず届けます」と頷く。フィオナが「クララ様、無理はしないでください」と心配するが、クララは「私の領地のため、クランのみんなのため‥負けられない」と決意を新たにする。

クララとハーシーの悲劇

翌朝、クララが別館の窓から外を眺めていると、清教徒騎士団の兵士が部屋に押し入り、「モートン枢機卿の命令だ!」と叫びながらクララを連れ出す。エドウィンとフィオナが「クララ様!」と叫び、兵士を止めようとするが、剣が振り下ろされ、二人は血を流してその場で息絶える。クララは「エドウィン! フィオナ!」と叫び、涙を流すが、兵士に引きずられ、森の奥の工場へ連行される。駆けつけたハーシーが「なんだこれは!」と叫ぶが、兵士は「ハーシー様もご一緒に」とハーシーを押さえつける。

工場の中は、魔力石の不気味な光と呻き声が響く地獄だった。石造りの部屋には錆びた鎖や器具が並び、魔獣の咆哮のような音がこだまする。クララは冷たい鉄の器具に繋がれ、兵士が彼女の腕に何本もの薬を注入する。クララは叫びながら激痛に悶える。身体が熱くなり、皮膚が鱗に覆われ、魔獣のような姿に変形していく。クララの意識は薄れ、「ルシアン…みんな‥」と呟くが、鎖に繋がれ、工場の奥に連れていかれる。

ハーシーは「やめろ! やめてくれ!」と何度も叫び、兵士に押さえつけられる。クララがキメラに変形する姿を見て、ハーシーの心は完全に壊れる。「親父! ここまでするか! ヴァルドールか! あいつが!」と叫び、虚ろな目で崩れ落ちる。クロヴィスの計画通り、クララはキメラにされ、ハーシーの心は魔王の器に近づいた。兵士はハーシーを本館に連れ戻し、クララは工場の奥で鎖に繋がれたまま闇に消える。

ルシアンの逮捕

時間は少し戻り、ルミエールのヴァルシア学院は春休みに突入していた。ルシアンは、クラン「眠れる羊」の仲間セリア・フィオーレと冒険者ギルドに行く約束をしていた。セリアを迎えに王都のヴァルドール屋敷を出たルシアンは、突然、清教徒騎士団の兵士に囲まれる。隊長が「ルシアン・ヴァルドール、キメラ製造の疑いで逮捕する!」と告げ、ルシアンは剣を抜こうとする。「何!? ヴァルドールがキメラ? ふざけるな! 証拠はどこだ!」と叫ぶが、兵士の槍が周囲を封鎖し、抵抗虚しく手錠をかけられる。

ルシアンは「父上やフォルテシアがそんなことするわけない!」と叫ぶが、兵士は無表情でルシアンを馬車に押し込む。セリアが遠くから「ルシアン!」と叫ぶ声が聞こえるが、馬車は王宮の牢へ向かう。ルシアンは馬車の中で拳を握り、「絶対に許さない!」と心に誓う。
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