処刑前夜

夏角しおん

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1.序章

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硬質な靴音が石畳に反響する。
日の挿し入る余地のない地下牢は、時間や天気に関係なく常に黴と湿気の匂いが立ち込めていた。燭台に揺らめく炎が浮かび上がらせるのは、この場に不釣り合いな良質の衣類を身に纏う若い男女だ。
貴族か、はたまた王族か。豪奢な服装に宝飾品を煌めかせて一歩先を進む男は、最奥の牢を前にして後ろを振り向いた。
「大丈夫か? マリア。気分が悪くなったらすぐに言ってほしい」
「大丈夫よ、ギル」
言葉少なに頷く少女もまた、高級なドレスを身に纏っている。男と並んで牢を覗き込むと、その先に立つ人の姿に可愛らしく整った顔立ちを引き攣らせた。
「ロザリンド様!?」
最奥の牢は狭い。通路と同じだけの幅に、奥行きは二歩程度のものだろう。それは投獄者を寝かせる必要がないからで、壁に打ち付けられた手枷に全体重を乗せた少女が一人、肩に顔を埋めさせたまま力無い呻きを洩らしていた。
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