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    なんやかんやで兄弟が言い合いを始めてしまいましたので見計らって退散させて頂き絶賛帰りの馬車の中です。



阿呆の相手って疲れますね、ぐったりです。



さて、お気付きの方もいるとは思いますが無事あちら家のと縁を切る事に成功しました!



やー長かった。あのクズ男が女性のお尻を追いかけ回している間、私は奴の素行調査を過去も含め徹底的に行いました。



え?そんなの婚約する前にするだろって??



それがしてないですよー!するつもりも無かったんですー!!!



    何故かと言いますと、この婚約は向こうの家からゴリ押しのゴリ押しでお断りをしてもしてもしてもしても何度も婚約が申し込まれ押しに弱かった父が負けて頷いてしまい、その場で本人達が不在のまま父とクズ男の兄であるカインが結んだものなのです。



    あちらの家族は末っ子であるあのクズを大層溺愛していまして、我儘放題に育てた結果婿入り予定の家から婚約を破棄をされ、新たに別の婿入り先でも同じ様に破棄を繰り返しそして当時婚約者が居なかった年頃の娘が私しか残っていなかった(家格を選ばなければもっといた)という…。



    当時の私に婚約者は居なかった事になっているが我が家で私と一緒に後継者教育を受けている青年がいました。内々に彼との未来を話していた事もあったのですが私が婚約した話を聞くと直ぐ居なくなってしまいました。



    まあそんな事は置いておいて、徹底的にクズ男を洗った結果…出てくる出てくる醜聞が。



曰く、下町のパン屋の看板娘に宝石を渡しお礼にデートしろと通い詰め店主に出禁にされたとか、飲み屋に勤める女性に「俺の言うことを聞けば夫人にしてやる」と言って関係を強要したとかとかとか。



ちなみに今回の初恋相手は下町に住んでいて喫茶店を営む未亡人の美女です。更にちなみに一切相手にされていません。



自分に媚びない人=初めて=運命だ!



の図式がクズ男の頭で出来たようです。なんというか残念すぎる方ですよね?同情はしませんが。



むしろこれが下町以外にバレていなかったのにびっくりです。ほんとに。下町では有名人でしたよ。金持ち商家の息子辺りかと思っていたらしく貴族と聞いて驚かれてましたけど。



    こうして纏めた奴の素行調査を昨日の早朝に父・向こうの家・更には王宮(ここはおまけです。どうせ破棄されていると思います)に送り付け、読み終わった父が



「お前に負担を掛けたすまない」



と言い残し静かな顔で王宮へ向かい昨日の内に婚約解消しました!やったね!



という事で今日は素敵なおひとり様を満喫する予定が朝から呼び出されての初恋宣言あれでしょう?



白々しく『婚約解消ですね?』と聞いた私もなかなかだと思うけど、もう他人ですし。



    それにしても『親の面倒みてくれ』は吃驚したは…婿養子の意味すら分かってなかったのよ…



つくづくあのクズ男が我が家に入って来なくって本当に良かったと思いましたまる



「ただいま戻りました」



「やあお帰り」



屋敷の中に入りいつものメイドの応えでは無いと気付き見回すと彼が居た。

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