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5>>指摘
「その“罪”とやらだがな……」
国王は王座の肘置きに肘を突いて頬杖を突き姿勢を崩した。空いた手で控えていた人物を手招きする。
「不審な点を指摘する者が居るのだ」
「……」
国王の手招きで隣室で控えていたロッド公爵が王の横まで歩いてくる。公爵の顔を見てフリーネは安堵の表情を浮かべたが、父の顔が暗く眉間に深いシワが刻まれている事に違和感を覚え、すぐさま不安に瞳を揺らした。
そんなフリーネに視線を向けたロッド公爵は、今まで見せたことのない疑心に満ちた瞳でフリーネを射抜く。
「フリーネ……。
お前がリネットに毒殺されそうになった茶会はリネットが開いたと言ったな?」
「は、はい!そうです!」
父が何を聞きたいのか分からなかったが、フリーネは両手を胸の前で組んで瞳にうっすらと涙を浮かべて縋るような面持ちで父を見た。
「お、お義姉様がわたくしと仲直りがしたいからと、お庭にお茶の席を用意して下さって……お断りするなんて出来なくて、わ、わたくしお義姉様が怖かったけど、メイドのみんなも居てくれるから……って思って、お義姉様が待ってる席に行ったんです……。でも、お義姉様はまだ来ておられなくて……、メイドが少し遅れるから先にお茶だけ飲んでいてって、お義姉様が言ったと言ってわたくしにお茶を出してくれたんです……。わたくし、冷ましちゃいけないと思って……、お義姉様が先に飲んでいてと言ったのだから、飲まなくちゃって、お茶を飲んだんです………そしたら………」
話の途中から顔を青褪めさせ、胸の前で組んでいた手を自分の体を抱くように体に回したフリーネが、思い出した恐怖に怯えるように小刻みに震える。
今までなら、そんなフリーネの様子を見たらギルベルトも側近たちも直ぐにフリーネに駆け寄ってその肩を抱きしめてくれていたはずなのに、今は誰一人として動きはしない。それどころか、見なくても感じる冷たい視線に、フリーネは密かに混乱した。
「……お茶の席はリネットが用意したんだね?」
フリーネを気遣う言葉もなくロッド公爵は質問する。
「……はい……そうです……」
何故そんな事を聞かれているのか分からない。
フリーネは不安げな顔で父を見た。
目が合ったロッド公爵は沈痛な面持ちでフリーネを見ていた。
「……リネットには指示を聞いてくれる侍女が2人しかいない。その侍女2人がそんなお茶の席は用意していないと言っているんだ」
「……え?」
「メイドたちはリネットを嫌がってほとんど近づかない……リネットの事はその2人だけが世話をしていたようなものだ。それなのにそのお茶の席はメイドが用意して何名かのメイドが側に居たんだね?
……リネット付きの侍女すら知らなかったそのお茶会を、リネットはどうやって開いたんだろうね……?」
ロッド公爵は優しく問いかける。
しかしフリーネには自分が責められているようにしか聞こえなかった。
「そ、そんなの知りません! お義姉様が密かにメイドたちを脅して用意させたんですわ! お義姉様はメイドたちも怯えさせていましたし! お義姉様に逆らえる者などあの邸にはおりませんわ!」
怯えた表情から一転、焦りの表情を見せて言い訳するように話すフリーネに国王は訝しむ視線を送る。
しかしロッド公爵を見ているフリーネは気づかない。
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