6 / 12
6>>疑念
「お、お父様!? わたくしはお義姉様に殺されかけたのですよ!? なぜ今更そんな事を言い出すのですか!?」
遂に泣き出したフリーネにロッド公爵は悲しげに顔を歪めて目を閉じた。
「……お前が毒を飲まされ、その毒の解毒薬をお前の母であるセリーが直ぐに飲ませる事が出来てお前は無事に難を逃れた……。当時はその事を心から喜び、大切なフリーネを殺そうとしたリネットを憎んだ……。
だが今、冷静になって思い返してみると、お茶の席を用意出来た事、その席にはリネットを嫌っているメイドしかいなかった事、その場にリネット本人は居なかった事、セリーが直ぐに解毒薬を用意出来た事……全てに違和感が残るんだよ……。
騒ぎの時、私はリネットが嘘を言っていると思ってまともに話を聞かなかったがリネットはこう言っていたんだ。
『わたくしは知りません。この家に居場所の無いわたくしに、何が出来ると言うのですか?』と。
居場所が無いなどと訳の分からない事を言って話をはぐらかし、罪を隠蔽しようとしているのだと思ったが、もしリネットの言葉が事実なのだとしたら……お茶の席を用意したのは誰なんだろうな……」
濃い疑いの色を浮かべた目でロッド公爵に見つめられたフリーネは顔を青くしてただただ否定するように首を横に振った。
「そ、そんな事知りません! わたくしは毒を飲まされたのです! あのお茶の席にはお義姉様から呼ばれたから行ったのです! 信じてください! こんな風に疑われる事こそお義姉様の策略ですわ! それ程にわたくしはお義姉様に憎まれていたのですね!? ただ母が違うというだけで同じ父の血を引いているのにっ! お義姉様は自分だけが裁かれるのを良しとせず、わたくしをも嘘の罪を着せて皆から嫌われるようにしているのです!! わたくしは何もしていないのにっ!!
あぁ! ギル様助けて! わたくし怖いのっ!!」
自分の体を抱きしめて悲痛に泣きじゃくる顔でフリーネはギルベルトを見る。彼が直ぐに抱きしめてくれると疑いもなくフリーネはギルベルトを見た。
しかしギルベルトはフリーネを見もしなかった。
ただ俯き、一点を見つめているギルベルトにフリーネは驚き目を見開く。その目から数滴の涙が流れた後、止まった事を国王は静かに見ていた。
「ぎ、ギル様……?」
おずおずとフリーネがギルベルトに声をかける。
しかしギルベルトはフリーネを見ない。
フリーネは横にいる側近たちを見た。
皆、卒業式の日までフリーネを囲んで楽しく笑いあい、フリーネを愛おしそうに見てくれていた男たちだ。
侯爵令息のマムリム。騎士団総長の息子のクリオン。辺境伯の息子のゼゼオ。
3人ともフリーネを守ると誓ってくれた男たちだ。ギルベルトの妻になった後もずっと側にいるよと声をかけてくれたのに……。
その全員が、今一番助けを求めている時に見向きもしてくれない。その事にフリーネは心底驚愕していた。
「……数日前に突如として異変が起きた」
国王は静かに話し出した。
「必要な時に必要な薬を使う。それが人道に反していたとしても、それが国の為になるのであれば必要な処置として許される」
「……?」
フリーネは国王が何を言い出したのか分からなかった。
「悪事を働く者、害になる者、将来災いになる事……、それらを事前に知る事や行動を把握する事も民を守る我らの仕事だ。
その為ならば世に禁止されている物も使おう……」
「っ……!」
国王の言葉にフリーネの顔が僅かに引きつる。それを国王も公爵も見ていた。
「フリーネ・ロッド。
『魅了薬』を知っているな?」
「っ!!!」
「「「「…………」」」」
国王の言葉にフリーネは傍目にも分かる程に体を強張らせた。悲鳴は上げなかったが、自分で我慢したというより『声も出ないほど驚いた』という方が正しいだろう。それほどにフリーネは全身で反応した。
それを気配で感じ取ったギルベルトたちは、卒業式の日以降違和感を感じて薄々気付き始めていた事が当たっていたのだと確信した。
あなたにおすすめの小説
妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
真実の愛のおつりたち
毒島醜女
ファンタジー
ある公国。
不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。
その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。
真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。
そんな群像劇。
その婚約破棄、卒業式では受け付けておりません
柊
ファンタジー
卒業パーティの最中、第一王子アデルは突如として婚約者クラリッサに婚約破棄を宣言する。
いわゆる『公開断罪』のはずだった。
しかし、周囲は談笑を続け、誰一人としてその茶番に付き合おうとしない。
困惑する王子と令嬢たちの前に立ったのは……。
※複数のサイトに投稿しています。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?