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8>>手作りクッキー
両手で顔を覆って泣き出したフリーネを慰める者は誰も居ない。
「お義姉様が……お義姉様がみんなに嘘を言わせているのよ……わたくしは何もしていないわ……全部ぜんぶお義姉様が仕組んだ事よ……」
フリーネが何を言おうとも、『お菓子を作ったのがフリーネ』であり、『お菓子を配ったのがフリーネ』である過去が変わる事は無い。
仲の良い姉妹であれば『一緒に作った』と言って姉のせいにも出来ただろうが、お菓子をフリーネが一人で作った事は邸の全ての者が知っていたし、だからこそ、皆安心してお菓子を口に出来ていたのだ。今更『義姉が』と言われても誰も信じる事は出来ないだろう。
『フリーネが一人で手作りしたお菓子』だからこそみんなが口にしていたのだから。
「……私も、リネットに会いに行った公爵家でフリーネにクッキーを貰いました……」
ギルベルトが口を開いた。
「っ! ギル様っ、わたくしっ!!」
「私は、リネットの妹だからと、フリーネに貰った物を疑いもせずに口にしました。リネットから毒見もせずに物を食べるなどと言われましたが、公爵家の、それも妹が作った物を疑うようなリネットに不快感を抱いた事を覚えています」
「……私は学園で、ギルベルト様と親しくしているフリーネ様から貰った物を無下にするのは気が引けて、クッキー1枚だけならと思い食べました。その後は、むしろ次はいつ貰えるのだろうかと楽しみに思っていました……」
「同じく」「俺も」
「み、みんなに喜んでもらいたくて作ったの!! お義姉様がそんな変な物を仕込んでいるなんて知らなかったのよっ!! 信じて!! わたくしは何もしてないの!!」
「魅了薬はな……」
「っ!!」
国王の声にフリーネは涙まみれの顔でそちらを見た。
国王は頬杖を突いたままフリーネを見下ろしていた。
「魅了薬は、魅了させたい者が薬を口にした者の目を見ていないと効力を発揮しないのだ」
「っ!!」
「義姉が義姉がと言っているが、周囲の者が皆義妹の虜になることが、リネットに何の得があるんだ?」
呆れを含んだ声で国王に言われて、フリーネは一瞬口を噤む。
「あ……、あねは……、あねはきっとこうなる事を見越して、っ、こんな事をしたのですわ……わ、わたくしを嵌めて……こ、こんな風に酷い目に遭わせる為に………」
唇を震わせてフリーネはまた涙をポロポロと流して悔しそうに呟いた。
「酷い目というが。
国外追放にされてドレスのままで何もない国境へと放置され、一人で生きねばならなくなったリネットの方が酷い目に遭ってはいないか? 彼女は生まれながらの公爵令嬢だぞ?」
「っ!!」
「「…………」」
国王の言葉に、フリーネは唇を噛みしめ、ギルベルトと公爵は悲痛に顔を歪めた。
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