悪役令嬢ですか?……フフフ♪わたくし、そんなモノではございませんわ(笑)

ラララキヲ

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卒業パーティーで婚約破棄


 ロザリア国、王立貴族学園。
 王城の次に絢爛豪華なその白い建物の中で今まさに卒業生たちの為の卒業パーティーが行われていた。

 昼間に行われた卒業式は厳かに、夕方から始まったパーティーは華やかに行われている。きらびやかに飾り立てられた室内や人々。豪華な料理。流石にお酒は置かれてはいないが、どれも一見ジュースには見えない輝きを放っている。踊りやおしゃべりで渇いた喉を色とりどりのジュースで皆潤していた。

 卒業生のルカリファス・ゴルデゥーサ侯爵令嬢も薄い青色の爽やかなジュースで喉を潤していた。赤い紅が塗られた唇がグラスの縁に触れ、離れる瞬間を周りにいた男性たちはバレないように横目に見てしまう・・・・・
 学園でも1・2を争う程に見目麗しいルカリファスを周りの者たちはどうしても目で追ってしまう。その艷やかな黒髪と宝石よりも深い色合いで輝く真っ赤な瞳は1度見たら忘れられないと言われている程に美しい。
 自分が見られていると気付いたルカリファスはグラスを置いて唇をナフキンでサッと整えると視線を感じた方へ向けて少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。そんな顔を見てしまった人達は心を掴まれた様にグッと息を止めて視線を逸した。こんなところで取り乱す訳にはいかず貴族らしく表情に出す事はなかったが、心の中では『ルカ様のはにかみっっっ!!』と悶え苦しんでいた。

「ルカリファス!出て来い!!」

 和やかな会場内に王太子の少し怒りを含んだ様にも感じる声が響いた。全員が何事かと声のした方を見る。パーティー会場の数段上にある壇上に王太子とその側近たち、学園での王太子のお気に入りの平民から男爵家に養女になって学園に来た令嬢が王太子の横に寄り添う様に立っていた。
 こんな余興の予定があったのか?と皆が興味津々で見守る中、ルカリファスが王太子たちと向かい合う様に会場内の中程へと進み出た。

「カルロス様、お呼びでしょうか?」

 ルカリファスが見惚れるようなカーテシーをした後に優しく微笑みかけた王太子カルロス・ロン・ロザリアは顔を顰めたままルカリファスを睨む。カルロスは輝く金髪に夏の空の様な青い瞳を持つ学園一の美形だ。その横では男爵令嬢アンジェリカ・プリオンがルカリファスに怯えた様にカルロスの後ろへと体を隠す様に下がった。それを見て王太子の周りにいた側近たちがアンジェリカより一歩前へと出てルカリファスを睨む。

 アンジェリカはピンクの髪と輝く金色の瞳を持つ、大変可愛らしく美しい女性だった。声は小鳥の様に可憐で耳に馴染み、その笑顔は曇った空を晴らすのではないかと思わせる程に眩しく輝いていた。ルカリファスとは真逆の美貌を持つ彼女に庇護欲を駆り立てられない男はいない。……プライドが高く、自信過剰な男は特に……。
 彼女は外見だけでなく中身も健気で儚く、立場も弱かった為に王太子やその側近たちは『守ってあげなければ』と思った。
 側近たちは皆 上位貴族の令息でそれぞれ、宰相の息子・エース、騎士総師団長の息子・ビルマ、魔術師会総長の息子・ショーン、外交官の息子・ディオ、そして異色ながらその中に当然の如くまざっている学園長の息子の学園の先生・エリック(28)。
 この学園の卒業生は皆18歳なのでエリックだけ10歳年上となる。彼自身はアンジェリカを『守るべき教え子』だと言い張ってはいるが、その感情が教師が生徒に向けるものでは無いと彼ら▪▪以外の全員が気付いている。
 そしてエリック(28)以外の側近たち全員に婚約者が居るのだが、彼らは自分たちを『次期王妃を守る者』と言ってはばからず、婚約者と関わるよりもアンジェリカの側に居た。
 現時点での“次期王妃”はルカリファスなのだが、彼らは王太子の寵愛が厚いアンジェリカが次期王妃になると信じて疑いもしていないようだった。周りの皆は何故誰も指摘しないのか?と思っていたがそれぞれの父親、当主たちが何も言わない事を外野から口出しする訳にもいかず、学園内の学生たちは王太子たちを遠巻きに見守ってきたのだった。
 そして今日、卒業の日に遂に何かが動こうとしていた。会場内の全員が不安と期待で事の成り行きを見守っていた。

「ルカリファス。
 貴様のその作り笑いには反吐が出る。
 貴様は私の婚約者である事をかさに着て悪事を働き、平民出身である事を一方的に目障りに思いアンジェリカを迫害し、その命を危険に晒した。

 皆は気付かなかったであろう。その見た目に惑わされ真実は隠された。

 我らはその事実にいち早く気付き、一人で怯える事しか出来ない哀れなアンジェリカを助けた。そのせいでさらにルカリファスを刺激する事になってしまったが……それが逆に良かったのかもしれない。

 ルカリファスのような悪辣あくらつな女を王妃に出来るはずなどない。

 見目は良くても中身は何よりも醜い。悪女だ。

 知っているか?ルカリファス。

 お前の様な淑女の仮面を被った悪女な貴族令嬢を平民たちの間では『悪役令嬢』と呼ぶそうだぞ。
 貴様にはぴったりな呼び名ではないか。

 悪役令嬢 ルカリファス・ゴルデゥーサ。

 私は貴様との婚約破棄をここに宣言する!
 そして……ここに居る麗しく心の清らかなアンジェリカ・プリオン男爵令嬢を次の私の婚約者とする。

 皆は彼女の地位が気になると思うが、その話も既についている。
 彼女は然るべき地位の家に養女に入り、皆の不安は解消されるであろう」

 王太子の話が終わると会場内は静寂に包まれた。
 誰も何も言えない。隣の人のツバを飲み込む音が聞こえる程だった。

「……フフフ」

 そんな中で柔らかな笑い声が会場内に響き渡る。ジッと話を聞いていたルカリファスが扇の下で笑ったのだ。

「……何がおかしい」

 怒りに顔を歪めた王太子が低い声でルカリファスに問う。
 それにルカリファスは目を細めて王太子を見返した。

「申し訳ありません。
 ……わたくしが“悪役”であるなら、そちらの方は主人公か何かなのかと思いまして……」

「はっ!何を言うかと思えば。
 貴様が悪役ならば、それに立ち向かう王太子の私が主人公の王子だ。

 そして彼女は王子の守る姫、ヒロインだ!」

 アンジェリカの肩を抱き寄せ勝ち誇った顔でルカリファスを見下ろす王太子カルロスに、ルカリファスは楽しそうに目を向ける。

「カルロス。王子だけがヒロインを守るなんて守備が狭すぎます。ヒロインは“みんな▪▪▪”の姫なのですから」

「そうだぜ!俺はアンジェリカに剣を捧げた身!全てをかけて守ってみせるぜ!!」

 宰相の息子のエースが言えば、それに続いて騎士総師団長の息子のビルマが拳を上げて宣言する。それに周りの男たちも賛同する様に声を上げた。

「みんな……ありがとう……
 わたし嬉しい……」

 男たちに守られてアンジェリカは頬を染め薄っすら瞳に涙を浮かべて微笑んだ。
 それだけで周りの男たちは頬を緩める。
 会場内のどこからか、4つの溜め息が聞こえてきた。

「悪役なんて……フフフ♪」

 盛り上がる壇上の集団を気にする事なくルカリファスは楽しそうに笑う。
 それに王太子やその側近たちは怒りをあらわにルカリファスを殺気と共に睨んだ。

「まだ笑うか!」

「申し訳ありません……ですが……フフフ♪

 わたくし、そんなモノ▪▪ではございませんわ」




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