─ 短編ホラ ー[2作品]

ラララキヲ

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2― 天井から落ちてくる雫

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<現代×古アパート×天井×一人暮らし×女主人公×水>
 ──────
     
    
    
    
 ピチャン


「きゃっ?!」

 突然の腕の感覚に私は驚いた。
 水なんて無いはずの天井から水滴が落ちてきたのだ。

「え~~? なにぃ~??
 雨漏り~???」

 雨は降ってないのに部屋の天井から雫が落ちてきて私は混乱した。見上げて天井を凝視してみるも何も無い。天井は四角い板を張り巡らせたような作りで板と板の間には溝がある。そこから何かが漏れたのかもしれないが一体何が漏れるというのか?
 天井に水管が通っているとは聞いていないしこの部屋は2階だ。上の階はない。天井裏に水管があるとは思えないし……それでも古い建物だから水が溜まる何かがあるのかもしれない……

「やっぱ、安いからって古いアパートにするんじゃなかったかな~……」

 天井を見上げなら愚痴を溢す。
 一人暮らしを初めて独り言が増えた気がする。でも一人だから誰も聞いていないしまぁいいかなと思っている。

「も~、ほんと何の水~?」

 嫌な気持ちになりながら雫が落ちてきて濡れた腕を近くにあったタオルで拭いた。
 ネズミのオシッコとかじゃなきゃいいけど。なんて思いながら私は勉強を再開した。


 大学入学で始まった一人暮らし。
 親はオートロックのマンションにしなさいって言ったけど、通学の時間を考えて私が今の部屋に決めた。アパートに住んでる人も同じ大学の人ばかりで大家さんも若くてしっかりしてる感じだった。私は2階に住んでるけど1階には女性も居る。治安も良いって噂だし、私は何も心配してなかった。

 変な水漏れがなかったら、本当に何にも問題がない環境だと思えたのに……

「も~! またっ!!」

 ポタリッ、と落ちてきて雫が今度はノートにシミを作ったので私は大分苛ついた。何これ?! 何から出てるの?! 雨だって降ってないのに?! 汚れた天井を伝って流れてきたって考えられるから余計に気分が悪かった。絶対に汚れてる水だから。

「も~!!」

 天井を睨みつけて無意識に頬が膨らんだ。
 ポタリ。

「!?!」

 顔に雫が落ちてきて私は飛び上がって驚いた。

「も~!! 汚いっ!!!」

 直ぐにタオルを引っ掴んで顔を拭いた。頬に落ちた雫が目や口に入らなくて良かった。
 私は天井の溝を睨みつけた。

「最っっ、悪っ!!!!」

 拭いたタオルを床に投げつけて私は大家さんに言うことを決めた。








☆ ☆ ☆








 大家さんは私の話を邪険にすることなくちゃんと聞いてくれた。直ぐに私の部屋に来てくれて押し入れの天井板を外して天井裏を見てくれた。
 懐中電灯で照らしながらしっかり見てくれた大家さんは長い沈黙の後で、
「問題は……、無いですね。
 でも心配は心配でしょう。
 こちらでも原因を探ってみますね」
そう言って苦笑いを浮かべながら帰って行った。
 何も無いと呆れられたらどうしようかと思ってたから気にかけてもらえて安心した。

 そして次の日。

 バタバタバタッ!!

「っ!?!?」

 天井から凄い音がして私は驚いた。天井も揺れた気がする。

「えっ?! なに何なに?!?!!」

 私はただ混乱した。
 外から人の声もする。何人かの声がして、怒鳴り声から喧嘩してるのかと思った。
 怖くて部屋で自分の体を両手で抱いて震えていると、外が静かになって……そして家のチャイムが鳴った。

「………………」

 私は怖くて息を殺して居留守を使ったけれど、時間は既に夜で部屋の明かりから私が家に居ることは一目瞭然だった。
 2度目のチャイムが鳴った後に
「夜分にすみません。警察です」
そう声が聞こえた。

「え? け、警察??」

 私は更に混乱した。本物かも分からない相手に玄関を開けてもいいのかも分からない。どうしていいのか分からない私に対して玄関の外からは別の声が聞こえた。

「大家です。チェーンを付けたままでいいので少し話せませんか?」

 その言葉にさっきの天井から聞こえた音が原因なんだと気付いた。
 私は慌てて玄関扉を開いて外に居た警察の人と大家さんと対面した。

 結論から言うと。
 天井裏には2部屋隣の住人が潜んでいたらしい。

 彼は夜な夜な天井裏に登って密かに私を覗いていたらしい。私なんて可愛くないのになんで?! なんて驚いた私に警察の人は「被害に遭う人に外見など関係ありませんよ」と凄い冷静に言ってきた。可愛くないのに覗いてて楽しいのだろうかと私が不審に思ったのが伝わったのか、今度は大家さんが「女性であるだけで見る目が変わる人もいますからね」と警察の人の言葉に相槌を打つかのように話した。女の私が『私なんか』と思っている事に対して男性である二人がその考えを訂正するようなことを言っていることになんだか不思議な感じがした。
 可愛いとか可愛くないとか関係なく、私が被害者なんだと改めて思った。

 その日は安全確認をされて、改めて後日話を聞くことになった。
 親に電話をすると母が文字通り飛んできてくれて直ぐに引っ越すことになってしまった。部屋も気に入ってたし学校へも近いから私自身は引っ越したくなかったけれど、引っ越さないと母がここに住むと言うから私の方が折れた。
 覗かれてたと言ってもその瞬間を私自身が見たわけじゃないから実感がなかった。
 気持ち悪いと思っても怖さとかなかった。
 警官さんから話を聞くまで。

「落ちていたのは唾液です」

「はぃ?」

「彼は天井の細い細い隙間に独自の虫眼鏡ルーペを使って貴女を覗いていました。その時に口から唾液が垂れてしまったと。
 1度目は無意識だったが貴女の反応が嬉しくて、次からはわざと落としたと……」

「唾液……を?」

「本人はそう言っています」

 それを聞いて私は気が遠くなる気がした……
 
 天井から落ちてきたのは唾液……

 誰のものかも知らない、知らない男性の……唾液……

 私を覗いて興奮した男の唾液……唾……

 それが私の腕に……
 顔に……落ちて……………………

「ヒキャアアアアアア!?!!!」

 
 私は悲鳴を上げて、速攻で引っ越しを決意した。







【完】











──────
白い雫はさすがに遠慮しました。罪人のを切り落としたくなるので。
 
※大家は祖母からこのアパートの管理を引き継いだ男性。天井裏を覗いた時に異変に気付いたがこれは現行犯でしか捕まえられないと気付いた上で女性に伝えては怯えて犯人に気付かれると思い黙っていた(のぞき魔を捕まえることを優先した)
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