聖力を奪われたので、まぁいいかと力を上げたら文字通り弾け跳んだ話

ラララキヲ

文字の大きさ
8 / 10

8>> 彼女の罪 

      
 
 
 
 
 
 王家がメリッサについて調べると、出るわ出るわの悪事の数と言わんばかりに芋づる式に彼女の過去の所業しょぎょうが出てきた。

 なんと彼女は他国で指名手配されていたのだ。
 どうやらメリッサ彼女と一緒にいた男性2人が死体で見つかっていて、その死がどうにも不自然なのでメリッサに話を聞こうとしたが既に行方知れずとなっていて、彼女が殺して逃げたんじゃないかと疑われていたらしい。
 彼女の名前は平民ではそこまで珍しくない為に行方を探せなくなっていたが、今回の事で我が国の王家が彼女の似顔絵を使って足取りを探していくと、『聖女と同じ村出身のメリッサ』を探しているその国へと辿り着いたらしい。

 その国は魔道具の生産で有名な国だった。
 行商人の男と2人でやって来たメリッサは、半年ほどとある街に滞在していたらしい。その時に魔道具製作士の男と知り合い親しくなったようだが、メリッサと知り合った人たちは皆メリッサが行商人の男の妻だと思っていたから問題を起こさなければいいなぁと思っていたらしい。しかしメリッサと何度か話をした人が言うには、メリッサは行商人の男とは結婚してはいないと笑って言っていたらしく、しかしある人は行商人の男はメリッサを妻だと紹介していたとも話していたという。
 事実はもう誰にも分からないが、兎も角ある日、行商人の男は泊まっていた宿屋の一室で首を吊って死んでいて、その次の日には魔道具製作士の男が自宅の浴槽で溺死しているところを見つかったという。魔道具製作士の家からは幾つか魔道具が無くなっており物取りの犯行も考えられたが、先ずその日に魔道具製作士の家に訪れていたことが分かっているメリッサに話を聞こうとすると、既に彼女の姿は街の何処にもなく、彼女の連れである行商人の男も死んでいたということだった。
 行商人の男は自殺に見えたが彼の部屋にあるはずの金品が一切無くなっており、そして彼自身が誰かに贈る為に魔道具の指輪を依頼していたことから、このタイミングでの自殺は不自然だと思われた。何よりメリッサの姿がその日を境に忽然こつぜんと消えていたのが不自然過ぎた。メリッサはその街から出た姿すら確認されていない。最初は彼女も何処かで殺されている可能性も考えられたが、彼女の私物の鞄も荷物も無くなっていたことと、何より街から出た者の中に身分証明を無くしたと言って出て行った美しい女がいることが分かったことから、その女がメリッサだったのではないかと思われた。
 魔道具製作士の家から無くなった魔道具が何かは分かってはいないが、もし魔道具を使っていたならば外見を変え門番を惑わせて街を出ていくのも可能だった。

 亡くなったメリッサの部屋からは幾つかの魔道具が見つかっている。それらの用途を調べれば彼女が何をやったのか直ぐに分かるだろう。顔を変え、私からちからを奪い、周りを惑わせる。魔道具があればできることだった。私は納得すると同時に、そこまでして私にこだわったメリッサが気持ち悪くなった。
 彼女はそこまでして聖女になりたかったのだろうか?
 
 王太子殿下の調べで、彼女が村からどうやって出たのかも聞くことができた。
 彼女は私が聖女として村を出て行って直ぐから自分が本物の聖女なんだと騒いでいたらしい。キアラメリッサ彼女ちからを奪ったのだと言い張り暴れるメリッサに、村人もメリッサの親も本当に困ったそうだ。だってそんな話一体誰が信じるというのか。
 キアラが聖女に選ばれた時にメリッサは全然違う場所に居たのに、キアラはどうやってメリッサから聖女のちからを奪って先代聖女たちをだましたのかということになる。ただの村娘で、家も別に裕福でもなく、親からどちらかといえば放置されてるキアラが、一体どうやって聖女のちからなんていう『とんでもないちから』を奪えるというのか。教養のない村人だって疑問に思うことを言葉のままに信じる人なんてそうそう居ない。
 当然私の家族だってメリッサの言葉を否定した。しかも長女が
「キアラがそんなことできるなら誰だって聖女になれるじゃん!? あのキアラだよ?! 聖女だって分かった瞬間にめちゃくちゃ迷惑そうな顔して聖女様に『それ絶対に間違いですよ』とか言ったキアラだよ?! あの子が聖女なら私たち家族なんか神様だよ!?!」
とか言ったらしく村人たちもキアラが聖女に見つけられた時のことを思い出して、メリッサの言葉がありえないと納得したらしい。
 メリッサは私が先代聖女様に見つかった時のことを知らないからどうとでも言えるのだろうけど、私が先代聖女様に見つかった時には私以外にもたくさんの村人が居て──聖女様が村に来ているのだ。娯楽の少ない村にとってはそれだけで祭り状態で、皆仕事を放り出してでも聖女様の後を付いて歩いていた──、丁度私と一緒に居た母が先代聖女様に「この子がですか?!」「本当にこの子ですか!?」「間違いではなくて?!」「え? この子ですか??」「本気で言ってるんですか聖女様?!?!」と何度も確認したので先代聖女様は何度も私を確認して私が聖女なのだと母や周りを説得していた程だった。
 それなのに誤認??? 
 あれ以上確認すると逆に先代聖女様に失礼だと止められたのに(私も否定した)『誤認』だなんてありえないと誰もが思うだろう。
 当然のようにメリッサは村中から嘘吐きだと嫌われた。メリッサは村娘の中では可愛い方だったので彼女を気に入っていた人は多かったけど、人を見下し村を馬鹿にする言動が多々あったので、彼女を気に入っていた男性は多かったけれどそれ以上に苦手としていた人たちが多かった。そこに加えて自分が聖女だと騒ぎ出した所為で完全に村から浮くことになり、自分の言動を棚に上げて自分を信じない村人たちが馬鹿だからだと言った所為で彼女を溺愛していた親でさえも、彼女を庇えなくなってしまった。

 村で完全に孤立してしまったメリッサは偶然村に来た行商人の男に目を付け擦り寄った。
 村中の人から嫌われている、親からも愛されないと泣くそこそこ可愛い少女に、行商人の男は同情とともに下心が湧いたことだろう。行商人の男は若くもなく顔も整ってはいなかったが、大らかな性格だったらしい。そんな男にメリッサは泣き付きその懐に入り込み、自分の言葉を信じるように誘導した。そして彼女の親が気付いた時には行商人と共にメリッサは村から居なくなっていたという。
 そして行商しながら移動して、遂に魔道具で有名な国へと辿り着いた……と。
 魔道具の国へと行ったのは行商人が元々決めていた移動先だったのか、メリッサが誘導したのかは分からない。だがメリッサは魔道具と出会い、魔道具を手に入れた。それ自体も彼女が狙ってやったのか偶然なのかもう分からないが、兎も角彼女は自分の姿を変え、他人を操る術を見つけ、聖女のちからさえ奪える道具を手に入れてしまったのだ。

 メリッサは元々知っていたのかも知れない。聖女が王族と縁付くことを。だからこの国に帰ってきて私の前に現れた。ただの村人から貴族になる為に。頭を下げる身分から、頭を下げられる身分になる為に……
 すごい執念。自分の全てを掛けて私の立場になりたがった彼女を尊敬する気持ちすら湧いてくる。目的の為に人を殺してるかもしれないところも私には考えもしないことだから。その情熱は少し羨ましい気さえもする。

 ただ一つ彼女が残念なことは、私が恵まれていると思い込んで私から奪うことに執着したようだけれど、彼女が求めた“私の立場”を、私自身は全く執着していなかったことだと思う。
 欲しければ上げたのに。
 
 
 
 
 
      
感想 5

あなたにおすすめの小説

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

繰り返しのその先は

みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、 私は悪女と呼ばれるようになった。 私が声を上げると、彼女は涙を流す。 そのたびに私の居場所はなくなっていく。 そして、とうとう命を落とした。 そう、死んでしまったはずだった。 なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。 婚約が決まったあの日の朝に。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

《完結》悪役聖女

ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……