23 / 40
23>> ルナリア
しおりを挟む
-
「……ごめんなさい、お姉様」
ずっと静かだったルナリアがアリーチェを見ていた。
「ルナリア……」
サバサが末娘の名を呟く。サバサはルナリアがアリーチェに謝った事に少なからずショックを受けていた。
そんな母を気にすることなく、ルナリアはアリーチェにツラそうに歪めた表情で視線を向けた。
「わたくし、何も見ていなかったわ。
お姉様が勉強ばかりしているのも、お庭に顔を出さないのも、遊びに誘っても断られるのも……、全部お姉様の意思だと思っていましたわ。
わたくし……何も考えていなかったのね……」
「ルナリ……」
ロッチェンが無意識に言葉を零す。
「あ、貴女が気にする事じゃないわ……っ」
サバサはルナリアを庇おうとした。
そんな両親を気にすることなくルナリアはアリーチェに向けて自分の気持ちを伝えた。
「……わたくし、子供の頃はずっとお姉様と遊びたかったの。
綺麗な花を見つけたらお姉様に持って行って上げたかった……
でもお母様が……、お姉様は勉強で忙しいから邪魔しちゃいけませんって……、わたくしが何故お姉様と一緒にお菓子を食べてはいけないかお母様に聞いた時も、お姉様は勉強の邪魔をされるのが一番嫌いなのよって言われて……」
ルナリアに言われてアリーチェは少しだけ驚いた。
「まぁ、お茶に誘ってくれようとしていたの?
わたくしも一度くらいルナリアと庭でゆっくりお菓子を食べてみたかったわ……
邪魔になんて思う訳がないじゃない。
むしろ誘ってもらえるのをずっとずっと待っていたのよ。だってそんな事がない限り、ずっと机に縛り付けられているみたいなものだったもの」
その言葉にルナリアは母親を睨みつけた。小さい頃に、母が一度でも自分たち姉妹を一緒に遊ばせてくれていたなら、今の二人は違った関係になれただろうと、今の会話だけでも窺い知れたからだった。
そんなルナリアの視線にサバサは心が冷え切り青褪める。
「あ、そんな……、わたくしが悪いというの……?」
酷いわ……、そう言いたそうな母の言葉に、アリーチェは呆れたような声で返した。
「少なくとも、わたくしとルナリアが一緒に遊べなかったのは、わたくしやルナリアが理由ではない、ということですわね」
何か間違ってます?
そう言いたそうな娘二人の視線にサバサは血の気の失せた手を合わせて震え、小さく頭を振った。
「わたくしは……わたくしは…………」
さめざめと泣き出した母親に、ルナリアさえも冷めた視線を向けていた。
-
「……ごめんなさい、お姉様」
ずっと静かだったルナリアがアリーチェを見ていた。
「ルナリア……」
サバサが末娘の名を呟く。サバサはルナリアがアリーチェに謝った事に少なからずショックを受けていた。
そんな母を気にすることなく、ルナリアはアリーチェにツラそうに歪めた表情で視線を向けた。
「わたくし、何も見ていなかったわ。
お姉様が勉強ばかりしているのも、お庭に顔を出さないのも、遊びに誘っても断られるのも……、全部お姉様の意思だと思っていましたわ。
わたくし……何も考えていなかったのね……」
「ルナリ……」
ロッチェンが無意識に言葉を零す。
「あ、貴女が気にする事じゃないわ……っ」
サバサはルナリアを庇おうとした。
そんな両親を気にすることなくルナリアはアリーチェに向けて自分の気持ちを伝えた。
「……わたくし、子供の頃はずっとお姉様と遊びたかったの。
綺麗な花を見つけたらお姉様に持って行って上げたかった……
でもお母様が……、お姉様は勉強で忙しいから邪魔しちゃいけませんって……、わたくしが何故お姉様と一緒にお菓子を食べてはいけないかお母様に聞いた時も、お姉様は勉強の邪魔をされるのが一番嫌いなのよって言われて……」
ルナリアに言われてアリーチェは少しだけ驚いた。
「まぁ、お茶に誘ってくれようとしていたの?
わたくしも一度くらいルナリアと庭でゆっくりお菓子を食べてみたかったわ……
邪魔になんて思う訳がないじゃない。
むしろ誘ってもらえるのをずっとずっと待っていたのよ。だってそんな事がない限り、ずっと机に縛り付けられているみたいなものだったもの」
その言葉にルナリアは母親を睨みつけた。小さい頃に、母が一度でも自分たち姉妹を一緒に遊ばせてくれていたなら、今の二人は違った関係になれただろうと、今の会話だけでも窺い知れたからだった。
そんなルナリアの視線にサバサは心が冷え切り青褪める。
「あ、そんな……、わたくしが悪いというの……?」
酷いわ……、そう言いたそうな母の言葉に、アリーチェは呆れたような声で返した。
「少なくとも、わたくしとルナリアが一緒に遊べなかったのは、わたくしやルナリアが理由ではない、ということですわね」
何か間違ってます?
そう言いたそうな娘二人の視線にサバサは血の気の失せた手を合わせて震え、小さく頭を振った。
「わたくしは……わたくしは…………」
さめざめと泣き出した母親に、ルナリアさえも冷めた視線を向けていた。
-
497
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
“いつまでも一緒”の鎖、貴方にお返しいたします
柊
ファンタジー
男爵令嬢エリナ・ブランシュは、幼馴染であるマルグリット・シャンテリィの引き立て役だった。
マルグリットに婚約が決まり開放されると思ったのも束の間、彼女は婚約者であるティオ・ソルベに、家へ迎え入れてくれないかというお願いをする。
それをティオに承諾されたエリナは、冷酷な手段をとることを決意し……。
※複数のサイトに投稿しております。
妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~
紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの?
その答えは私の10歳の誕生日に判明した。
誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。
『魅了の力』
無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。
お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。
魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。
新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。
―――妹のことを忘れて。
私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。
魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。
しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。
なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。
それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。
どうかあの子が救われますようにと。
わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました
柚木ゆず
ファンタジー
より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。
「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」
現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
悪役令嬢と呼ばれた私に裁きを望むならご自由に。ただし、その甘露の罠に沈むのはあなたですわ。
タマ マコト
ファンタジー
王都で“悪役令嬢”と噂されるリシェル・ノワゼルは、聖女と王太子による公開断罪を宣告される。
しかし彼女は弁明も反抗もせず、ただ優雅に微笑むだけだった。
甘い言葉と沈黙の裏で、人の嘘と欲を見抜く彼女の在り方は、やがて断罪する側の秘密と矛盾を次々と浮かび上がらせていく。
裁くつもりで集った者たちは気づかぬまま、リシェルが張った“甘露の罠”へと足を踏み入れていくのだった。
真実の愛のおつりたち
毒島醜女
ファンタジー
ある公国。
不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。
その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。
真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。
そんな群像劇。
透明な貴方
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。
私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。
ククルス公爵家の一人娘。
父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。
複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。
(カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる