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12>>変わる未来
しおりを挟む6歳の頃に決まった未来は崩れ去った。
婚約者が亡くなったわたくしはもうシェイロズ侯爵家には嫁げない。
シェイロズ侯爵家にはカハル様の弟君がいるけれど、その方にも勿論婚約者が居る。色々ごたついたものの、弟君がシェイロズ侯爵家を継ぎ、その婚約者の方が嫁入りする形に落ち着いたようでした。
元々弟君は婿入り予定でしたから、相手側の家を継ぐ者はどうするのかと心配でしたけれど歳の離れたまだ婚約者の居ない妹君がおられたようで、安心して交代が出来たようですわ。むしろ侯爵家に娘が嫁ぐ事になって喜んでおられるかもしれません。
悲しい事が起こったのですから、少しぐらい喜ぶ人がいてもいいと思いますの。
……わたくしは、学園を卒業した後に修道院へ入る気でおりましたが、両親の説得とシェイロズ侯爵夫妻との話し合いの末、修道院へ行くことはやめました。
悲しいし、婚約者が亡くなった事と年齢の事で貴族の令嬢としての瑕疵は避けられませんが、同情してくださった方々のご厚意で、次の嫁ぎ先を見つけられそうでした。
妹のアリシュアにも、何とか次の婿が見つかったようで、同じ学園に通いながら心を通わせていくようでした。
アリシュアの新しい婚約者はラフラー伯爵家の三男ジャック様と言う方です。
ジャック様は婚約者を亡くして落ち込んでいるアリシュアに根気強く寄り添ってくれているようで、「僕が彼女を守ってみせます」と言ってくれました。
剣が苦手だそうで、剣が楽しくて居なくなってしまった婚約者を持っていたわたくしたち姉妹からすれば、少しだけ安心できる要素だと思いました。
わたくしとアリシュアは突然訪れた未来に、それでも進んで行かなければいけません。
あんなに楽しくて幸せだった時間は突然終わりを告げました。
わたくしとアリシュアとカハル様とセッドリー様。
ずっとずっと4人で楽しく笑い合う未来を夢見てきたのに、その未来はもう2度と訪れません……。
何が良かったとか、何が悪かったとかではないのです……。
ただ“運命が別れた”だけ。
そう思うことで……わたくしは前を向くのです……。
心残りがあるとすれば……
ハル様とセド様の本心が聞けなかった事でしょうね……………
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