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7>>男は気付かず女は気付く
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リルナの居る隠れ家に通っているメイドも当然雇い主はナシュド侯爵当主だ。
コザックがちゃんと自分でメイドを面接して雇っていれば雇い主はコザックになっていたが、コザックは自分付きの侍従に「口の堅いメイドを数人リルナの家に回してくれ」と指示しただけだった。
コザック付きの侍従は当然『ナシュド侯爵家に雇われている侍従』なので雇い主はナシュド侯爵当主・コザックの父だ。
だがコザックは昔から自分の言う事を聞く従順な侍従は『自分の命令を1番に聞く』と思っていた。それが当然の事だと思い込んでいたのでコザックは何の疑問も何の確認もせずに自分付きの侍従に指示を出していた。その為、コザックの指示を聞きそれを雇い主であるナシュド侯爵当主に話して指示を仰いだ侍従が雇い主の指示で選んだ『隠れ家の世話をする口の堅いメイド』たちは、自分たちの雇い主の指示をしっかりと聞き、仕事をこなしていた。
コザックが自分の金がどのように動いているかぐらい一度でも確認していればどこかで気づけたかもしれないが、コザックはそれすらもせず、『引かれているから自分が払っている』と何の疑問も持ってはいなかった。正確には『ナシュド家が雇い、その分の費用をコザックの金から引いている』だけだったのだが……。
リルナが自分が妊娠しない事に気付いたと同時にある言葉が頭に浮かんだ。
『避妊薬』
何故その可能性に思いつかなかったんだろうと、その言葉が思い浮かんだリルナは自分の体から血が引いていくのが分かった。自分が何の疑問も持たずに口にしていた物に薬が混ぜられていたかもしれないのだ……いや、確実に混ぜられていた。その事にリルナは恐怖した。
この隠れ家に連れてこられた時にコザックが「ここにいれば安全だ」「この家は俺たちの家だ」「ここにいれば父もイリーナも手出しできないから」と言っていた言葉をそのまま信じた。紹介されたメイドに門番に護衛。この人たちが自分を守ってくれるんだと思った。自分に微笑んでくれるメイドに気を許した。美味しいお茶に美味しいご飯にいつでも飲める様に部屋に置いてある新鮮な水の入った水差しに平民では食べられない様なお菓子……。3年後に次期侯爵夫人となる自分に与えられる当然の待遇なんだと思っていた。勉強はツラいけど働かなくても食べていけるメイドのいる生活に何の疑問も持たなかった。
なんて……バカだったんだろう……。
自分が歓迎されていない愛人だという事をすっかり忘れていたなんて……。
全てをコザックが用意したと言っても、コザックは所詮『侯爵家の息子』でしかない。貴族の子供は権力を持つがそれは所詮『親の力』だ。リルナはその親に受け入れられなかった。だから侯爵家の敷地内にあった別邸から出されてここに隠れて暮らしている。
そんな自分が妊娠? 正式に婚姻を結んだ貴族の令嬢である妻を差し置いて?
そんな事を侯爵家当主が許す訳がない。
そんな簡単な事にリルナは……コザックは気付かなかったのだ。
リルナは自分が妊娠しない事を不思議に思ってやっとその事に気付いた。
『避妊もしていないのに妊娠しないのは何故か』
自分の体やコザックの不能を疑うよりも先に『避妊薬』が思い浮かぶ。そしてそれが間違いじゃないという謎の確信がリルナにはあった。
だって自分は『愛人』だから。
『愛し合っている』『本命は自分』だと分かっていても、『自分の方が不倫相手』である事は変わらない事ぐらい、リルナにも分かっていた。それが自分が選んだコザックとの関係だという事も……。
リルナは自分に出される物に何かが入れられていると気付いて数日は食が細くなったが直ぐに気にしない事にした。
身体に害のある毒ではないと食べ続けてきたリルナ自身が身を持って理解していたからだ。だから今更自分で食事を作りたいだなんて言う気もない。
食事くらいは作ってもらわないとやっていられない。子供が出来ないくらいなら、命を取られるより何倍もましだった。
リルナは今更コザックとの間に子供が欲しいなどと思わなかった。
ただ早く解放されたいと、いつしかそんな風に思う様になっていた……。
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リルナの居る隠れ家に通っているメイドも当然雇い主はナシュド侯爵当主だ。
コザックがちゃんと自分でメイドを面接して雇っていれば雇い主はコザックになっていたが、コザックは自分付きの侍従に「口の堅いメイドを数人リルナの家に回してくれ」と指示しただけだった。
コザック付きの侍従は当然『ナシュド侯爵家に雇われている侍従』なので雇い主はナシュド侯爵当主・コザックの父だ。
だがコザックは昔から自分の言う事を聞く従順な侍従は『自分の命令を1番に聞く』と思っていた。それが当然の事だと思い込んでいたのでコザックは何の疑問も何の確認もせずに自分付きの侍従に指示を出していた。その為、コザックの指示を聞きそれを雇い主であるナシュド侯爵当主に話して指示を仰いだ侍従が雇い主の指示で選んだ『隠れ家の世話をする口の堅いメイド』たちは、自分たちの雇い主の指示をしっかりと聞き、仕事をこなしていた。
コザックが自分の金がどのように動いているかぐらい一度でも確認していればどこかで気づけたかもしれないが、コザックはそれすらもせず、『引かれているから自分が払っている』と何の疑問も持ってはいなかった。正確には『ナシュド家が雇い、その分の費用をコザックの金から引いている』だけだったのだが……。
リルナが自分が妊娠しない事に気付いたと同時にある言葉が頭に浮かんだ。
『避妊薬』
何故その可能性に思いつかなかったんだろうと、その言葉が思い浮かんだリルナは自分の体から血が引いていくのが分かった。自分が何の疑問も持たずに口にしていた物に薬が混ぜられていたかもしれないのだ……いや、確実に混ぜられていた。その事にリルナは恐怖した。
この隠れ家に連れてこられた時にコザックが「ここにいれば安全だ」「この家は俺たちの家だ」「ここにいれば父もイリーナも手出しできないから」と言っていた言葉をそのまま信じた。紹介されたメイドに門番に護衛。この人たちが自分を守ってくれるんだと思った。自分に微笑んでくれるメイドに気を許した。美味しいお茶に美味しいご飯にいつでも飲める様に部屋に置いてある新鮮な水の入った水差しに平民では食べられない様なお菓子……。3年後に次期侯爵夫人となる自分に与えられる当然の待遇なんだと思っていた。勉強はツラいけど働かなくても食べていけるメイドのいる生活に何の疑問も持たなかった。
なんて……バカだったんだろう……。
自分が歓迎されていない愛人だという事をすっかり忘れていたなんて……。
全てをコザックが用意したと言っても、コザックは所詮『侯爵家の息子』でしかない。貴族の子供は権力を持つがそれは所詮『親の力』だ。リルナはその親に受け入れられなかった。だから侯爵家の敷地内にあった別邸から出されてここに隠れて暮らしている。
そんな自分が妊娠? 正式に婚姻を結んだ貴族の令嬢である妻を差し置いて?
そんな事を侯爵家当主が許す訳がない。
そんな簡単な事にリルナは……コザックは気付かなかったのだ。
リルナは自分が妊娠しない事を不思議に思ってやっとその事に気付いた。
『避妊もしていないのに妊娠しないのは何故か』
自分の体やコザックの不能を疑うよりも先に『避妊薬』が思い浮かぶ。そしてそれが間違いじゃないという謎の確信がリルナにはあった。
だって自分は『愛人』だから。
『愛し合っている』『本命は自分』だと分かっていても、『自分の方が不倫相手』である事は変わらない事ぐらい、リルナにも分かっていた。それが自分が選んだコザックとの関係だという事も……。
リルナは自分に出される物に何かが入れられていると気付いて数日は食が細くなったが直ぐに気にしない事にした。
身体に害のある毒ではないと食べ続けてきたリルナ自身が身を持って理解していたからだ。だから今更自分で食事を作りたいだなんて言う気もない。
食事くらいは作ってもらわないとやっていられない。子供が出来ないくらいなら、命を取られるより何倍もましだった。
リルナは今更コザックとの間に子供が欲しいなどと思わなかった。
ただ早く解放されたいと、いつしかそんな風に思う様になっていた……。
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