赤い剣と銀の鈴 - たそかれの世界に暮らす聖霊の皇子は広い外の世界に憧れて眠る。

仁羽織

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賢人マーリン・ネ・ベルゼ・マルアハ

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 「一回目、俺はお前さんとお前さんのおふくろさんの命を狙った。そのことは覚えてるのか?」

 「ええ、赤い剣で送り戻した人のことは忘れられないみたいです。」

 僕がそう答えると、ジョジロウさんは頭をデッキにこすりつけて謝りだした。

 「本当に、すまなんだ。謝ってすむものじゃないんだけど、すまない。」

 「何を謝ってるんですか。」

 「だから、一回目のとき…。」

 いよいよ頭から煙が出るんじゃないかというくらい、ジョジロウさんは力強く頭をこすりつけている。僕は困って、こう答えた。

 「それはもうなかったことです。というか、二回目には僕を助けてくれたじゃないですか。妹さんの襲撃から。」

 「それは…。それに、お前さんが覚えているかどうかわからなかったから、それにつけこんでまんまとこの国に移り住んでよ、これまでしらばっくれて来たんだ。それも悪かった。」

 「そのおかげで、いろいろとありがたいこともありましたから。前は確か、ジョジロウさんがいなくて、ドラゴンの子がレイミリアさんに大怪我をさせたところからはじまって、街の人々が大災害に見舞われましたし。」

 「そんな大ごとになってたのか?けど、あれはたまたまだぞ。たまたま、この国に移る手続きをしにお嬢ちゃん家まで来てて、そんでたまたま山まで見に行ったら、ドラゴンの子とお嬢ちゃんが落石にあいかけてて…。」

 ようやく頭をあげてくれた。

 「それが偶然かどうかは関係ありません。結果として、あなたのおかげで多くの人が助かりました。…とはいえ、それを知っているのはごく限られた人だけなんですが。」

 あの時、母も父上も結果を聞いてずいぶんと喜んでいた。やはり二人は気づいているみたいだ。

 「レイミリアさんにいたっては、いまだに混乱しているみたいですし。けどあの性格ですから、もう忘れてしまったかもしれませんね。」

 そう僕が言うと、「ちがいねえ。」と言ってジョジロウさんが笑った。それでこの話は終わり。

◇◇◇

 「そう言えば、お嬢ちゃんずいぶん遅くないか?飯の最中に来るものとばかり思ってたが…。」

 ジョジロウさんがそう言って僕を見る。僕は、銀鈴の位置を感じとろうとしてみた。

 「…まだ、家にいるみたいです。寝坊ですかね?」

 「お寝坊、ですか。まったく、困ったお嬢様だ。」

 どうやらまた後でひと悶着ありそうな予感。今日はマーリンさんもいるから、レイミリアさんに勝ち目は薄いかも。

 そんなことを考えていると、そこにヒカリさんが来て言った。

 「あなた、マルアハ様がこれを…。」

 その手には、小さな宝石がはめ込まれている綺麗な指輪がのっている。大小ふたつ、色は薄い紫と濃い緑。

 「私のお父様から、預かってきたって。二人の結婚を認めるって。あなた…。」

 ヒカリさんはジョジロウさんの胸に抱きつくと、静かに嗚咽して泣きはじめた。ジョジロウさんも強くヒカリさんを抱きしめて、感動しているみたいだ。

 僕は二人の邪魔にならないように、そーっとキャビンへと降りていった。
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