赤い剣と銀の鈴 - たそかれの世界に暮らす聖霊の皇子は広い外の世界に憧れて眠る。

仁羽織

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精霊探し 水の精霊編

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 「おでは、おめらに、なんもせんよ。」

 あらためて面と向かって相対すると、水の精霊はかなり大きなクラゲに見える。立ち上がったジョジロウさんよりも高い位置に本体が浮かび、そこから地面までふわふわといくつもの触手が垂れ下がっている。

 「それはわがったから、とんあえずわの話さ、ぎけ。」

 白兎(ミカエラ)が、レイミリアさんの頭の上に立ち上がって水の精霊と話をしている。僕らはようやく目的の相手と、こうして対面で話をしていた。

 「ぎげっつのはどげなはなすだ?」

 「どげもこげもねっつの。だまっでぎげ。」

 「ちょっとミラちゃん、そんなじゃいつまでたっても話がはじまらないし、わかんない。普通に話せないの?」

 もとい、まだ話ははじまっていなかったみたいだ。

 「そんなこと言ったってレイミリアたん、こいつ水の精霊だよ?腹立たねぇわけがねえでしょって話っすよ!そもそもお前達がモリトに力を貸さなきゃ、誰一人『たそかれの世界』なんつう所に飛ばされたりしなかったんだよ!」

 ブシャーっと、クラゲが水を吹いた。その水が白兎(ミカエラ)とレイミリアさんにかかるのが見えた。

 「んとにもう、いい加減にして!」

 レイミリアさんはそう言うと、頭上のミカエラを右手でつかんで、足元に叩きつけた。そしてその上に右足を踏み出すと言った。

 「ささえて!ミラちゃん!」

 嘘?っと僕は思ったけど、言われた当の白兎(ミカエラ)は逆に嬉しそうにレイミリアさんの足元で両手をあげた。そこにレイミリアさんの足がかかる。そして赤いドレスの裾をひらひらっとさせて左足ものせた。白兎(ミカエラ)はそれを両手で支えながら後ろ足で立っている。

 「これでいいわ。ちょっと精霊様、お話はできるかしら?」

 「問題ありません。どのような御用でしょうか?」

 躊躇せず普通に話しだす水の精霊に、レイミリアさんの足元から「けっ!」と何かを吐き捨てるような声が聞こえた。

 「え?えーと…で、では伺います。あなたは水の精霊様ですか?」

 「ええ、そうです。海の精霊とも呼ばれていたことがあります。」

 「そうしたら教えてちょうだい。どうしてこんなところにいるの?」

 「ここに連れてこられた理由ですか?それともここに連れてきた相手を答えたらいいでしょうか?」

 どうしたことか、水の精霊がやけに素直にレイミリアさんの質問に答えていく。さっきまでの聞き取りにくい言い方は?それにレイミリアさんも動揺をすぐに取り返した。いつもならもっと食いついたろうに。なんで?いや、今はその方がいいけど。僕は、隣にまだ立っているひいじい様にその疑問を聞いてみることにした。

 「あれって、なんでさっきまでとあんなにも態度が違うんでしょうか?」

 僕の質問にひいじい様はこんなふうに答えた。
 
 「まあ、当然と言えば当然のことじゃな。男性恐怖症のようだ、あれは。以前に傍にいた相手がよほどひどい奴ばかりだったのか、話しかける相手が男性の場合あんなふうに自己防衛をしているみたいだ。」

 「精霊にも性別ってあるんですか?」

 「うーむ。正確に言えば、ない。しかし、精神的には男性よりとか女性よりというものもあるだろう?」

 「なるほど。そういう意味で女性なんですね。彼女。」

 僕とひいじい様はそう言ってそこで佇むしかなく、あの会話には参加しないほうがよさそうだって判断した。


 それからしばらくの間、水の精霊とレイミリアさんの会話がつづいていた。ジョジロウさんは気がつくと僕の隣でしゃがみこんでいた。僕とジョジロウさんは手持ち無沙汰になってしまい、ひいじい様はいつの間にか消えている。ミカエラはなんだか息も荒くレイミリアさんの下にいる。そりゃ、これだけ長い時間レイミリアさんを持ち上げているんだもの、息も切れるでしょ。


 「だいたい分かったわ。ありがとうね、水の精霊様。そしたら少しだけ待ってて。他のみんなと話をして決めるから。」

 どうやら話が終わったようだ。レイミリアさんは僕らの方に振り返って、何歩か歩み寄ってからこう言った。

 「精霊様、オウニの居場所とかわかんないって。」

 けっこう長い時間話してたと思ったんだけど、それだけ?どういうことだろう?

 「でもね、思い当たるところはあるって。地の精霊のところまで行けばわかるかもしれないって言ってる。」

 …なにそれ?水の精霊探すのだけでこんなに苦労してきたのに、まだ他にさがさないといけないってこと?

 「それとね、交渉次第になるみたいなんだけど、自分を海に戻してくれたらその地の精霊のところまで案内を出してくれるみたいよ。」

 「案内って、水の精霊は?」

 僕は少し不安になって聞いてみた。着いてくるものだとばかり思っていたので、ちょっと気になる。

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