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精霊探し 水の精霊編
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白兎(水の精霊)の絶叫が部屋中に響く。僕は教えたつもりはないから、あれだけの会話でレイミリアさんも見抜いてたってことなのか。すごいなと素直に思えた。白兎(水の精霊)の方は、それきりまた動かなくなってしまっていた。ときどき手足がピクピクっと動いているから、中にいるのは間違いない。
「ミラちゃん、ひょっとしたらこの中から出られたってことかな?」
レイミリアさんがかなり心配そうにそう聞いてきた。僕にもそれは見当がつかない。
「とりあえずミカエラのことは置いておきましょう。もともと生き物かどうかもわからない存在でしたし、銀の鈴…あ!そうか!」
「なにがそうかなのよ?」
「レイミリアさん、銀の鈴!あれでミカエラを出したのはレイミリアさんじゃないですか。それで出てきてからは銀の鈴の代わりみたいになっていたんでしょ、ミカエラ。だったらまた銀の鈴で呼び出してみたらいいんじゃないでしょうか?」
「ははん、なるほどね。でもねミラク、よーっく考えてね。その銀の鈴が使えなくなってミラちゃんの入っていた白兎を代用で使ってたわけでしょう。そのミラちゃんがいなくなった白兎には、今はこれが入っているわけじゃない。そしたらこれ、使えっこないわけよね。」
「ですから今はそこを確かめるために銀の鈴を使ってみましょうって提案なんです。早とちりしないでください。」
「なんでよ!使うまでもないでしょう。いい?銀の鈴はミラちゃん白兎だったの。そのミラちゃん白兎のミラちゃんがどっか行っちゃったら、これはただの白兎ってことになるの!そしたらこれ、使えるわけないでしょって話。そっちこそもうちょっと考えなさいよ!」
ああああああああああ。なんか久々にちょっとイライラってきそう。すぐ横でジョジロウさんが、「また昔話の続きでも話してやろうか」みたいな顔して僕を見てる。いいです、今は。それよりもこの問題をさっさと解決しなきゃ…。
「それなら僕がやります。銀鈴使いますんで邪魔はしないで下さいね。」
「だから使えっこないって言ってるでしょ。それとも何?無駄だってわかっててやるの?」
「無駄じゃないかもしれないから試したいってことです。もう、いいですから。そこで黙って見ていてください。」
なんだかちょっとだけ嫌な予感。海でレイミリアさんが意識を失ってた時、僕もジョジロウさんもモリトの道具を呼び出すことすらできなかった。今はレイミリアさんは気絶はしていない。だから使えると思うんだけど、本当に使えるのかな?
そもそもモリトの道具からミカエラみたいなのが出てくるなんて話も聞いたこともない。他にも、この部屋で僕が発見されただとか、『たそかれの世界』が実は亜空間だとか、外に出られるのはパスポートを持ったレイミリアさんたち人間だけだとか。父上がわざと教えないできたのか、それとも今までそういうことに無頓着だった僕が悪いのか、それとも…。
「なんだ、出るじゃない。ねえ、ミラク、ほら。銀の鈴出たよ。」
え?
「なんで出してるんですか。僕が出すって言ったじゃないですか。そもそもそれを出してどうするつもりなんですか?」
「まあまあ、どうどう。落ち着こう、な、坊ちゃん。」
ジョジロウさんが僕の肩を揺するように抑えて声をかけてくれた。レイミリアさんはケロッとした顔で、両手の間に銀の鈴を浮かべて勝ち誇った顔で微笑んでいる。その右手の指先に白兎(水の精霊)が揺れていた。
「せっかく出たんだし、ミラちゃん呼ぶのもいいけどその前に。」
そう言ったレイミリアさんの、手の中の銀の鈴が輝きだしていくのが見えた。
「ちょ、待ってください!まだここでやることが…。」
僕の叫びが白い輝きの中に消えていく。いったい何を願ったんだこの残念すぎるお嬢様は…。
次に目の前に広がったのは、今度こそ本当に何が何だかわからない雑然とした部屋の中だった。
目の前の床には、足の踏み場もないくらいにいろいろなものがある。その置き方は、少なくとも誰かがそう配置しようと考えて置かれた様子はない。何も考えずに放り投げた感じだ。脱ぎっぱなしの衣類、食べかけの皿、使い終わって洗ってない食器類、投げ出された雑誌、城下の街で大人気だと聞いているお菓子類。封が開いているものもいくつか見える。極めつけが、何か生き物が這ったような跡。部屋の真ん中を通って入り口まで続いている。
部屋の広さはけっこう広い。僕が寝起きする部屋よりもずっと大きな部屋だ。窓辺には淡いピンク色のカーテンが広がっていて、窓枠の辺りにそれよりもずっと厚めの、おそらく遮光性だろうビロード生地っぽいカーテンがまとめられている。
あとは…。
「そろそろいいでしょ。この部屋、私の部屋なんだから。汗かいたから着替えるの、出てってよ。もう!」
レイミリアさんに背中を押され、僕とジョジロウさんは部屋を追い出された。
「これも持ってって。」
白兎(水の精霊)もだ。放り投げられて僕の手に乗っかった。
「あと、覗くなよ。見たら祟るからね。」
そう言うとレイミリアさんは、部屋の扉をバタンと閉めた。僕はもはや何も言うことがない。無茶苦茶に疲れたし、なにもかもがわからないまま。更にわからないことが増えて、これ以上何かを考えるのも面倒な気分。
「坊ちゃん、行きましょ。」
ジョジロウさんにそう即されて、僕らはその部屋を後にした。特に何処へ行こうっていう目的地も思いつかない。
「腹減ってたらウチくるかい?例の骨格標本もできてるよ。」
ああ、それは嬉しい。でも今はいいかな。なんか、もうちょっといろいろと解決してから見たいな。
[ 水の精霊と交渉 ]
会話が難しい。
何処のなまりなのかわからないしゃべりで、一向に無理難題を吹っかけていく。
やがてオウニの話となったとき、怒り狂いだす水の精霊。その時、白兎(ミカエラ)が水の精霊をぬいぐるみの中に取り込む。驚く一行はそれきり動かなくなった白兎を見守る。
「ミラちゃん、ひょっとしたらこの中から出られたってことかな?」
レイミリアさんがかなり心配そうにそう聞いてきた。僕にもそれは見当がつかない。
「とりあえずミカエラのことは置いておきましょう。もともと生き物かどうかもわからない存在でしたし、銀の鈴…あ!そうか!」
「なにがそうかなのよ?」
「レイミリアさん、銀の鈴!あれでミカエラを出したのはレイミリアさんじゃないですか。それで出てきてからは銀の鈴の代わりみたいになっていたんでしょ、ミカエラ。だったらまた銀の鈴で呼び出してみたらいいんじゃないでしょうか?」
「ははん、なるほどね。でもねミラク、よーっく考えてね。その銀の鈴が使えなくなってミラちゃんの入っていた白兎を代用で使ってたわけでしょう。そのミラちゃんがいなくなった白兎には、今はこれが入っているわけじゃない。そしたらこれ、使えっこないわけよね。」
「ですから今はそこを確かめるために銀の鈴を使ってみましょうって提案なんです。早とちりしないでください。」
「なんでよ!使うまでもないでしょう。いい?銀の鈴はミラちゃん白兎だったの。そのミラちゃん白兎のミラちゃんがどっか行っちゃったら、これはただの白兎ってことになるの!そしたらこれ、使えるわけないでしょって話。そっちこそもうちょっと考えなさいよ!」
ああああああああああ。なんか久々にちょっとイライラってきそう。すぐ横でジョジロウさんが、「また昔話の続きでも話してやろうか」みたいな顔して僕を見てる。いいです、今は。それよりもこの問題をさっさと解決しなきゃ…。
「それなら僕がやります。銀鈴使いますんで邪魔はしないで下さいね。」
「だから使えっこないって言ってるでしょ。それとも何?無駄だってわかっててやるの?」
「無駄じゃないかもしれないから試したいってことです。もう、いいですから。そこで黙って見ていてください。」
なんだかちょっとだけ嫌な予感。海でレイミリアさんが意識を失ってた時、僕もジョジロウさんもモリトの道具を呼び出すことすらできなかった。今はレイミリアさんは気絶はしていない。だから使えると思うんだけど、本当に使えるのかな?
そもそもモリトの道具からミカエラみたいなのが出てくるなんて話も聞いたこともない。他にも、この部屋で僕が発見されただとか、『たそかれの世界』が実は亜空間だとか、外に出られるのはパスポートを持ったレイミリアさんたち人間だけだとか。父上がわざと教えないできたのか、それとも今までそういうことに無頓着だった僕が悪いのか、それとも…。
「なんだ、出るじゃない。ねえ、ミラク、ほら。銀の鈴出たよ。」
え?
「なんで出してるんですか。僕が出すって言ったじゃないですか。そもそもそれを出してどうするつもりなんですか?」
「まあまあ、どうどう。落ち着こう、な、坊ちゃん。」
ジョジロウさんが僕の肩を揺するように抑えて声をかけてくれた。レイミリアさんはケロッとした顔で、両手の間に銀の鈴を浮かべて勝ち誇った顔で微笑んでいる。その右手の指先に白兎(水の精霊)が揺れていた。
「せっかく出たんだし、ミラちゃん呼ぶのもいいけどその前に。」
そう言ったレイミリアさんの、手の中の銀の鈴が輝きだしていくのが見えた。
「ちょ、待ってください!まだここでやることが…。」
僕の叫びが白い輝きの中に消えていく。いったい何を願ったんだこの残念すぎるお嬢様は…。
次に目の前に広がったのは、今度こそ本当に何が何だかわからない雑然とした部屋の中だった。
目の前の床には、足の踏み場もないくらいにいろいろなものがある。その置き方は、少なくとも誰かがそう配置しようと考えて置かれた様子はない。何も考えずに放り投げた感じだ。脱ぎっぱなしの衣類、食べかけの皿、使い終わって洗ってない食器類、投げ出された雑誌、城下の街で大人気だと聞いているお菓子類。封が開いているものもいくつか見える。極めつけが、何か生き物が這ったような跡。部屋の真ん中を通って入り口まで続いている。
部屋の広さはけっこう広い。僕が寝起きする部屋よりもずっと大きな部屋だ。窓辺には淡いピンク色のカーテンが広がっていて、窓枠の辺りにそれよりもずっと厚めの、おそらく遮光性だろうビロード生地っぽいカーテンがまとめられている。
あとは…。
「そろそろいいでしょ。この部屋、私の部屋なんだから。汗かいたから着替えるの、出てってよ。もう!」
レイミリアさんに背中を押され、僕とジョジロウさんは部屋を追い出された。
「これも持ってって。」
白兎(水の精霊)もだ。放り投げられて僕の手に乗っかった。
「あと、覗くなよ。見たら祟るからね。」
そう言うとレイミリアさんは、部屋の扉をバタンと閉めた。僕はもはや何も言うことがない。無茶苦茶に疲れたし、なにもかもがわからないまま。更にわからないことが増えて、これ以上何かを考えるのも面倒な気分。
「坊ちゃん、行きましょ。」
ジョジロウさんにそう即されて、僕らはその部屋を後にした。特に何処へ行こうっていう目的地も思いつかない。
「腹減ってたらウチくるかい?例の骨格標本もできてるよ。」
ああ、それは嬉しい。でも今はいいかな。なんか、もうちょっといろいろと解決してから見たいな。
[ 水の精霊と交渉 ]
会話が難しい。
何処のなまりなのかわからないしゃべりで、一向に無理難題を吹っかけていく。
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