青い扉と銀の鈴 - 世間知らずのお嬢様と魔王討伐の生き残りと魔王の息子とが出逢った頃の物語

仁羽織

文字の大きさ
27 / 62
砂嵐の精霊と錬金術師と私達とが知りあう偶然

3

しおりを挟む
 「いいえいいえ、ご丁寧な挨拶をありがとう。あなたには何一つ無作法などございません。」

 砂色の毛玉の精霊はそう言うと、チョコンと私の手の中に飛び込んできた。手の中で見るとサイズはずいぶんと小さく感じる。うちの猫は手のひらには収まるサイズじゃあない。遠くにいるときにはうちの猫くらいに見えた。けど、近くに来たら小さくなったんだろうか?なんかおかしくないそれ?それと手のひらにいるのに、重さを感じない。…これって持ってて平気?

 「聖なる聖霊のあなたの前に、このような力無き姿にて顕現しましたことこそお許しいただけますと幸いです。」

 聖なる聖霊って、何それ?ミラクのこと?この魔王の息子が?それに力無き姿って、これって本当の姿じゃないってこと?このサイズでもあれだけの砂嵐をおこしてたのに?

 私がそんなことを考えながら聞いていると、どうもオジサン…じゃなくてジョジさん、の方も同じようなことを考えているみたいだった。目をまんまるに見開いてミラクを見ていた。

 「お気になさらず。それよりも伺いたいのですが、なぜこの地をあのような砂の嵐で封じられていたのでしょうか?お話しいただければご助力も可能かと思いまして参りました次第です。」

 「そういうことでしたら、助かります。実は二年ほど前の話になります。この地に二人の錬金術師が現れまして、彼らの頼みにより半年ほど前からこの辺り一帯を封鎖しております。」

 なんか話がトントンと進んでいく。もう砂嵐の原因がわかっちゃった。

 「その錬金術師の望みとは?」

 「賢者の石となる輝石を探すのを手伝って欲しい、と。そうして探し終えるまでの間、この地に他の人を近づけないでくれと。」

 「なるほど、そういうことですか…。」

 あ、出た。賢者の石。そもそも錬金術師ってあたりで『また中二病か!』って叫びたかったんだよね。そういうのってあれだよね、中世の頃にヨーロッパとか北欧あたりで横行した寸借詐欺の常套句とかだったって聞いたことがる。

 ヨホ・マジノの話だと、錬金というのはその昔、アトランティスという島に暮らしていた人々が、海水から金を生成するためにつくった炉の名前だったとか。それを、近隣の島々に暮らしていた人たちが後世に伝えていたのが戦乱の中で焼失してしまって、今はもう影も形もないって。でも話じたいは大好きだったな。だからよく覚えてる。

 賢者の石については更に真偽が怪しいって言ってた。そもそも、賢者の石というのは、オリハルコンを精製するために必要な触媒となる土くれだったらしいっていうのが書籍に残されていた通説らしい。でも、どういうわけか不老不死のために必要な妙薬を造るのに使う貴金属だって書かれている本もあったり、全ての物質を金に変えることができる宝石だっていう文書もあったりで、本当は何なのかすらわからないって話。

 何よりも賢者って、なんなのよ?ってヨホは怒ってた。単に賢いだけの人なら大学に行けばいくらでもいるじゃない?でもあの人たちは賢者とは呼ばれず、教授と言われてる。それよりももっと賢い人だって言うんなら、例えばどんな人を言うんだって。そんなの私には想像すらできないわ。

 「輝石の場所はどうやら知らぬみたいでした。なのに人払いをしてほしいと乞うのです。はじめのうちは面倒と思って耳も貸さずにいたのですが、しばらくして大変に魅力的な報酬をたずさえてまた戻ってまいりました。」

 「へえ、報酬?それはどのようなものだったんでしょうか…?」

 ミラクの言葉にちょっとだけ気迫みたいなものが込められたのを感じた。何かを怒っているみたいだ。それを受けてなのか、手のひらにいた精霊さんがふわっと飛び上がって、さっきまで砂嵐の激しかったあたりまで飛んで行った。

 「聖なる聖霊様、どうか静まりください。それは私共精霊にとって抗いようのないもの。如何なることわりをもってしても変えようのない道理。」

 「確かにそれは理なのかもしれません。しかし本来ならば、その権利をもたない者が、他の者の権利を勝手に報酬とすることは道理でしょうか?あなたはそのことをご存じだったのでしょうか?もしそうなら、それは理を外れた行為ではないでしょうか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...