青い扉と銀の鈴 - 世間知らずのお嬢様と魔王討伐の生き残りと魔王の息子とが出逢った頃の物語

仁羽織

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砂嵐の精霊と錬金術師と私達とが知りあう偶然

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 「強き者が弱き者を食らうは、太古からの理と思われますがいかがでしょうか。その理を控えて四百年という歳月を過ごしてまいりました。戒めがそれを許さずにいたからです。彼らはその戒めの元となるものを取り払うと言い出しました。そう言われて断るのはいかがなものかと。」

 精霊を中心に次第にまた風が流れはじめている。私とジョジさんの目の前十メートルくらいのところに、ミラクくんが歩き出て行くのが見える。それよりも更に十メートルくらい先に、砂色をした猫の姿の精霊さんが、小っちゃな砂嵐をまとって浮かんでいる。これもありえない光景だ。二人が近づいていくたびに、そこだけ密度のつまった空気が膨らんでいくように見える。

 私は、目の前に繰り広げられる光景を見て、すっかりと思考がショートしてしまった。かわいいお子様ものとかわいい動物ものが、どちらも世界を破壊するかと言わんばかりの迫力で対峙している。何がどうなってこんなアニメかゲームみたいなことになるの?ってそれしか思いつかない。

 その時、ジョジさんが私の頭をツンと指で小突いた。

 「俺たちはちょっと席をはずそう。どうやらその方がよさそうだ。」

 「なによ。話についていけなくて退屈したってこと?大人なのに、だらしない。」

 「そんなんじゃねえよ!あの精霊の出方次第だが、あのお子さん、やる気だ。」

 「やるって何を?戦うの?こんな近くで?私、数百メートルは離れてていいって言ってたじゃない!」

 「うるさい!だから離れるぞって言ってんだ!この世間知らず!」

 そう言うが早いか、ジョジのオジサンは私を抱えて走り出した。驚くほど速い!また青扉を使ってるんだろうか?

 「暴れるなよ。落っことしたらとりに戻らねえぞ。」

 言われなくても、こんなスピードでお姫様抱っこされて走られてて、暴れようにも怖くってできるわけがないでしょ。って、悪態もつけない。ちらっとミラクの方に目をやると、砂嵐がさらに強く吹き荒れはじめている。

 「ここまで離れればいいか。」

 そう言ってジョジさんは私を砂の上に落した。街の外れにある砂の丘、その頂上に私たちはいる。少し離れたところに乗ってきた馬車が見えた。ここからなら、さっきまでいた場所が一望できた。

 「何よ!乱暴ね!下におろすならもう少し優しくおろしなさいよ!」

 ジョジさんにそう言いながら、けれど私はミラクと猫ちゃんが気になってそっちに目を向ける。いよいよ激しい砂嵐の中に、ピカッと稲妻が走るのが見えた。二人の姿はもう幽かにしか見えない。

 「おっかねえな。あんなのに巻き込まれたら、お嬢ちゃん黒焦げだぜ?」

 「オジサンみたいに?」

 「馬鹿言うな。俺のこの装備は、一応は最新式のものばかりなんだぜ。…つってもこないだの戦闘でずいぶんとダメージを食らってたか…。」

 ジョシさんはそう言うと、おもむろに青扉を手に広げて出した。はじめて見た青扉は、なるほど確かに小さな扉の形をしている。名前の通り、色も青い。いやむしろ群青色かな。

 「たぶん一日二日じゃあ結果が出ないはずだ。少し早送りして様子を見よう。」

 そう言って、何やらぶつぶつと唱える。すると、砂漠の景色がだんだんと変化していく。

 空がものすごい速さで動き出していた。雲が何もないところにふわっと生まれて、風に流されてあっという間に散っていく。頭の上にあった太陽がどんどんと地平線に吸い込まれていって、夜が来た。すると星が、流れるように頭上を回る。天の川が大河ごと、頭の上を通り過ぎていくのが見えた。

 その間も、ミラクと猫ちゃんのいる場所で砂嵐は勢いよく吹きすさんでいた。稲妻も何百となく激しく光り、オアシスの街並みが崩れていくのが見えた。全部がまるで早回しみたいに見えて、私は今度こそ言葉を失って驚いていた。
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