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裏切りと誤解と優しさの偶然
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私のときは、学校全体がなんだかそうみたいな感じがしてた。同級生はもとより、先生だって…。
けど今は、因果がはっきりしている。この鈴から全部はじまったのだから、これをちゃんとミラクに返して、そうして堂々と胸張って家に帰ろう。
そうして全部隠しごとなく、お父様にもお母様にも、教育係のヨホ・マジノにも、御者のロイ・ステイにも、料理長にもマニちゃんにも、従兄のジケイにも話して聞かせたい。こんなことがあったんだよって。今のまま帰ったら、それができない気がした。だって手の中に鈴があるんだもの。みんな面白がって使って見せろって言ってくる。そこで使って、例えばみんなをどこか遠くへ旅行に連れてったとして、じゃあどうやってそれを手に入れたのって聞かれて、「みんなが大変な時にコッソリと帰ってきちゃった。てへ。」なんて言えない。私には、言えない。
「リアライズ」
深く強くそう思いながら、私は静かにそう唱えた。そうして鈴の輝きをみつめる。周囲がだんだんと白い光に溶けていく…。
次に見えたのは、頭に傷を負って血が左目を覆うように流れているミラクの姿だった。
「ミラク!大丈夫なの?」
驚いてそう言って駆け寄る私を、ミラクはちらっと横目で見た。
「とんでもないところに来ちゃいましたね。しかも銀鈴を使ってなんて…。」
「ちょっと血が!いいから、話さないで、座って!」
ミラクはけれど、その場で立ったままじっと目の前を注視している。しかたないので私は、ドレスの裾を引っ張って裂いて、簡単な包帯をつくった。このドレス、ずいぶんと砂やホコリで汚れてしまったけど、止血ぐらいなら大丈夫だろう。
「これ、ずっと洗ってないドレスでしょ?傷から細菌とか入っちゃいません?」
「失血多量で死んじゃうよりいいでしょ!血さえあれば白血球とかが頑張ってくれるはずよ!」
そんなやりとりの中、別の声が聞こえた。
「おいおい、お嬢ちゃん。駄目駄目、そんなことしちゃあ。本当に世間知らずすぎだなぁ。」
ジョジさんの声。でも、なんで?ミラクがじっと警戒している方から聞こえてくんの?
ぱっとそっちを見ると、そこにジョジさんとミラクのお母さんがいた。ふたりの距離は少し離れている。ミラクから見て近い方にジョジさん、その向こうにお母さんの姿。けれどなんだか少し嫌な感じ…。
三人がいるこの場所は、広めの高台だった。おそらくだけど、高山の中腹あたりだろう。以前に従兄に連れられてきた記憶がある。これをもう少しのぼると、竜の住処がある。とはいえ多少の騒ぎでは竜は顔を出すことも稀なので、そちら側は気にしなくてもいいだろう。
今は、この状況が何なのか知らなきゃいけない!
「ジョジさん!ミラクのお母さん!何してるんですか? ミラクがこんなに血を流して。このままだと死んじゃいますよ!」
「だからお嬢ちゃん、世間知らずだって言ってるんだ。」
そう言ったジョジさんの姿が視界から消えた。と、次の瞬間、私の目の前、ほんの数センチの所に、黒い金属が現れた。あとちょっとで眉間に当たってた…。
「息子に手は出させません。それと、その子にも。」
ミラクのお母さんがそう言って手をあげる。すると私の目の前で停止していた金属が、ゆっくりと上にあがっていく。見るとそれは忍者もののドラマや本で見たことのある、手裏剣の形だった。
けど今は、因果がはっきりしている。この鈴から全部はじまったのだから、これをちゃんとミラクに返して、そうして堂々と胸張って家に帰ろう。
そうして全部隠しごとなく、お父様にもお母様にも、教育係のヨホ・マジノにも、御者のロイ・ステイにも、料理長にもマニちゃんにも、従兄のジケイにも話して聞かせたい。こんなことがあったんだよって。今のまま帰ったら、それができない気がした。だって手の中に鈴があるんだもの。みんな面白がって使って見せろって言ってくる。そこで使って、例えばみんなをどこか遠くへ旅行に連れてったとして、じゃあどうやってそれを手に入れたのって聞かれて、「みんなが大変な時にコッソリと帰ってきちゃった。てへ。」なんて言えない。私には、言えない。
「リアライズ」
深く強くそう思いながら、私は静かにそう唱えた。そうして鈴の輝きをみつめる。周囲がだんだんと白い光に溶けていく…。
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「ミラク!大丈夫なの?」
驚いてそう言って駆け寄る私を、ミラクはちらっと横目で見た。
「とんでもないところに来ちゃいましたね。しかも銀鈴を使ってなんて…。」
「ちょっと血が!いいから、話さないで、座って!」
ミラクはけれど、その場で立ったままじっと目の前を注視している。しかたないので私は、ドレスの裾を引っ張って裂いて、簡単な包帯をつくった。このドレス、ずいぶんと砂やホコリで汚れてしまったけど、止血ぐらいなら大丈夫だろう。
「これ、ずっと洗ってないドレスでしょ?傷から細菌とか入っちゃいません?」
「失血多量で死んじゃうよりいいでしょ!血さえあれば白血球とかが頑張ってくれるはずよ!」
そんなやりとりの中、別の声が聞こえた。
「おいおい、お嬢ちゃん。駄目駄目、そんなことしちゃあ。本当に世間知らずすぎだなぁ。」
ジョジさんの声。でも、なんで?ミラクがじっと警戒している方から聞こえてくんの?
ぱっとそっちを見ると、そこにジョジさんとミラクのお母さんがいた。ふたりの距離は少し離れている。ミラクから見て近い方にジョジさん、その向こうにお母さんの姿。けれどなんだか少し嫌な感じ…。
三人がいるこの場所は、広めの高台だった。おそらくだけど、高山の中腹あたりだろう。以前に従兄に連れられてきた記憶がある。これをもう少しのぼると、竜の住処がある。とはいえ多少の騒ぎでは竜は顔を出すことも稀なので、そちら側は気にしなくてもいいだろう。
今は、この状況が何なのか知らなきゃいけない!
「ジョジさん!ミラクのお母さん!何してるんですか? ミラクがこんなに血を流して。このままだと死んじゃいますよ!」
「だからお嬢ちゃん、世間知らずだって言ってるんだ。」
そう言ったジョジさんの姿が視界から消えた。と、次の瞬間、私の目の前、ほんの数センチの所に、黒い金属が現れた。あとちょっとで眉間に当たってた…。
「息子に手は出させません。それと、その子にも。」
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