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第1章 MAXコーヒーが繋いだ奇跡

第41話 なぜ、なぜなの、なぜなのよー(真人過去編)

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 この話は真人の過去に受けた仕打ちにより、女性苦手になる話からのなぜかざまぁ話です。
 後書きに末路が投げやり気味に書かれてます。
 不適切な言葉や感情が多々出ることになるのでそこら辺を嫌悪されない方は続きをどうぞ。
 



――――――――――――――――――――――――――――

 罰ゲーム、嘘告白というものが流行る少し前の時代。
 俺がされた事はその走りだったのかもしれない。

 高校時代、特段して目立つ事のない俺はモテるわけでもなければ全く相手にされない程モテないというわけでもない。
 ない……と思う。

 告白した事もされた事もなかったけど、異性の友人はいたし仲間内で遊びにいったりとか普通にあった。

 高校2年の10月に修学旅行があるのだが、発端はその少し前。
 夏休みも終わり、9月も少し始まったまだ暑い頃だった。

 突然一人の女子に体育館裏に呼ばれた。

 ヤンキーの呼び出しか?と疑わないわけではないが、彼女は学年の中でも可愛い女子の上位に入る部類だった。
 実際○○が告白して玉砕したとか言う話は、然程興味のない自分の耳にも入ってくるくらいだから。

 そんな彼女に呼ばれればヤンキーが待ってるを疑うのも仕方ない。
 こんな娘が俺に告白なんてありえない。そう思っていたからだ。

 だけど実際はその可能性の低い方だった。

 「越谷君の事が好きです。付き合ってください。」

 驚いたけど、特に好きとか嫌いとかなかったし、学年の中でも可愛い上位だし、みんなが玉砕する高嶺の花からの告白に舞い上がったのかも知れない。

 少し考えてOKを出した。

 それから俺達は付き合う事になった。

 でもそれは勘違いも甚だしかった。

 一緒に帰る事もない。遊びに行くこともない。
 何か理由をつけて拒否されるのだ。

 実際そういう事もあるだろうと最初は信じていたが……

 流石に2週間もそれが続けばおかしい事に気付く。

 ある時教室で二人になった所で尋ねてみた。

 なぜ恋人らしい事は何もしないのかと。別にえっちな事がしたかったわけではない。

 手繋いだり一緒に帰ったり寄り道で駄菓子屋によったり…そんなありふれた事がしたかっただけなのだ。

 それなのに…

 「あーめんどくさい。もう2週間経つし良いでしょ。これはね、罰ゲームなの。賭けに負けた私は罰ゲームで適当な男に告白してしばらく偽恋人として過ごすっていう。」

 「つまり好きでもなんでもない人と手繋ぐとか遊ぶとかHするとかありえないわけ。」

 「……弄んだと?」

 「あの日も私が罰ゲームをきちんとしてるか見られてたんだから。汚らわしい。」

 「汚らわしいのはお前らだ。」

 「そう。これはシナリオにないけど…」

 彼女は突然大声をだした。

 「きゃーーーーーーー」

 そして俺の手を取り自分の制服の胸元に手を掴ませ徐に引っ張る。

 ばりばりっと制服が破け胸元が露わになる。
 その瞬間パシャパシャと誰かに写真を撮られた音が聞こえた。

 「これであんたは終わりね。付きまとわないで頂戴。」

 しかしこれで終わりではなかった。
 大声に釣られてやってきた生徒や先生が教室にやってきたのだ。

 それからは何が起こったのかわからない。
 先生が馬乗りになり腕を決められてずるずると生徒指導室に連れていかれて延々と説教をされていたらしい。
 でも仕方がない、あれよあれよと物事が進み、説明もさせてもらえずただ一方的に叱責されるのだ。

 生徒も教師も誰ひとり話を聞かない。
 嘘泣きで演技する彼女の言う事しか聞かない。
 そしてあの撮影の音。
 あれは罰ゲームをすることになった元のゲームを彼女と一緒に行った仲間。
 その彼女が撮影した写真を教師は証拠として鵜呑みにした。
 
 普通都合よくそんな写真撮れるか?とか疑いもせずに。
 こういう時、普段良い方で目立ってると得である。
 何かあった時、一方的に信用される。

 その結果2週間の停学を受ける事になった。
 当然修学旅行は自宅待機。
 修学旅行も勉学の一環、通常の授業と変わらない。
 其処に恩恵も何もあったものではない。

 唯一…ではないけど、結城を始め数人の男子生徒は何かの間違いだと楯突いたらしいけど。
 教師から進路や内申の事をチラつかせられると黙ざるを得なかった。
 みんながすまん力になれなくてと言ってくれたが、それだけでも救いだった。

 停学が開けて登校すると机には菊の花。落書きでレイプ未遂魔とか学校来るなとか粗チンとか油性マジックで書かれていた。
 誰かが消してくれたのか、消えては書いての繰り返しに見える。
 多分結城達が消してくれていたのだろう。

 俺は泣かない。男の子だもん。

 ただ、その瞬間女子を始めその他大勢がブタにしか見えなくなった。
 豚に失礼なのでブタという表記になる。

 ブタがブヒブヒ言ったところで気にもならない。
 こいつらはファンタジーに出てくるオークだ、ゴブリンだ。
 あいつらが何を言っても相手にしなければ良い。

 残り1年半近い学校生活を独りで過ごすだけだ。
 そう思った。

 でもそれで済ませてくれる程高校生は後を考えられない人物が多い。
 全くこの件に携わっていない生徒までがちょっかいを出してくる。

 冬に差し掛かったある時流石に我慢出来なかった。
 それは俺の友人の悪口まで言われたからだ。

 あいつらは関係ないだろうと、殴ってしまった。
 これは言い逃れも出来なかった。
 クラスメイトも教師もいる前での事だったためだ。

 殴る前に何か言い合いしてるな程度は目撃されていてもだ。
 
 再び停学になるのだが、やはり聞く耳は一切持ってもらえなかった。

 だけど俺は一切謝罪もしなかった。
 「あなたはブタに謝罪しますか?」
 どちらかというとこの一言で退学になったような気が今ならしてくる。

 一部の友人を除きブタの学校を取りあえずは卒業しないと、後の就職に影響してくる。
 停学になろうとも、学業そのものは疎かに出来ない。

 そういや、2度の停学にはなったが当然親も呼ばれているけど、親も謝罪しなかったな。
 「子供のいう事信じないで何が親ですか。」
 と先生に言ってた気がする。
 まぁ話を聞いてくれたのは親と友人数名だけだしな。
 こっちが話そうとすると教師は言葉を遮るし。

 そういや一人だけ教師でも熱血なのがいたっけ。
 ブタに見えなかったから何となく覚えてる。

 この学校、クラス替えは1年から2年に上がる時の1回しかない。
 当然あの本物のブタさん達とも2年一緒なわけだが…

 卒業時のクラスでの一人一人の挨拶でぶっこんでやった。

 「これでブタさんの檻から抜けられる。これからは人間達とやっと触れ合える事が出来てせいせいするよ。あ、ブタさんの言葉わからないので日本語で喋ってごめんね。」
 厳密には3月31日までは学校に籍があるのでこれは問題発言ではあるのだが、もうどうでも良かった。

 そして友人達以外で、あの事があって以来初めての「ごめん」という言葉だった。
 まだ数人の挨拶が残っているが、この場にいたくなかったのでさっさと後にした。

 ちょっと人間としてどうなの?と言われそうだけど、自分が受けた冤罪と強制、孤独という仕打ちに比べれば鼻くそみたいなもんだろう。
 結城達数人の友人には申し訳なかったので、メールを送り裏門の前で待ち合わせをして謝罪と感謝の言葉を伝えた。

 どうにか卒業までこれたのはお前達のおかげだと。

 ただ俺は自分壊れてしまったのは理解出来る。
 だから数年後心にゆとりが出たら連絡いれるから、番号変えないでくれと付け咥えて。

 その他大勢も嫌だったが、女というものが信用も信頼もおけなかった。


☆☆☆
 
 この時は傷が癒えるのに何年かかるかなと思っていたけど、それは思ったよりかからない事を後に知る。
 卒業生というのはどういうわけか、母校に足を運ぶ事が多い。
 今仕事や大学でこういうことしてると報告したいのか何なのか。

 人によっては子供を連れてくる者までいる。
 
 23歳にる年、あの一人熱血教師(女)から連絡が入った。
 どうしても話したい事があるから学校に来て欲しいと。

 理由は聞かなかったし、聞いてもしょうがないし。
 この頃の俺はエロゲやゲーム等二次元で満足してたし。
 二次元は裏切らない。子供は作れないけど。をモットーに仕事とゲームの自堕落な生活をしていた。
 たまに野球に誘われて身体を動かすくらい。
 ついていけないのもかっこ悪いと思っていたので、筋トレやバッティングセンターはたまに行っていた。

 呼ばれて学校内の応接室に入ると5人の男女と小さな子供数人と、数人の教師が待ち構えていた。
 その中にあの熱血ちゃんもいた。

 全員が土下座をしてきた。
 子供達は何?って顔をしている。

 「ナニこの茶番。」

 俺はあの時の教訓として自分で証拠を持つように心がける事にした。
 応接室に入る前にボイスレコーダーのスイッチはONにしてある。
 そしてそのボイスレコーダーは一つとは言っていない。
 映像も必要かと思い、伊達眼鏡にカメラが仕込んである。
 盗撮と言われるかも知れないが、自己防衛だ。悪さに使わず保存しておくくらいは構うまい。

 嫌な予感がして持ってきて良かった。

 「まずはあの時の事、全員で謝罪させていただきます。異動で居なくなってしまった先生達もいるけれど。」

 熱血ちゃんが代表して言った。
 冷静に思い返してみると、この先生は糾弾してきた教師の中に交じってはいなかったな。
 姿がある時は決まって、一方だけの言い分を聞くのはおかしいですとか一応平等を取ろうとしてたっけ。
 やっぱり視野が狭くなっていたなと思う。

 どうして発覚して謝罪するまでに至ったか。

 簡単な事だ。
 卒業生は何かと母校に顔を出したくなる。
 その母校に来た時にバカみたいにあの時の事を大声で喋っていた。
 それをたまたま通りかかった熱血ちゃんが聞いて、問いただしたと。
 熱血ちゃんが色々諭したところ、今は家庭や仕事があるから大事にされるのは困ると保身に走った奴らが…
 謝罪して俺の裁量に任せるという妥協案を熱血ちゃんが持って行ったと。

 まぁ赦さないけどね。

 そういや、嘘告したクソ女、子供連れてるな。
 あぁ。どこかのゴブリンだかオークだかと修学旅行の後から付き合いだしてたっけ。
 バージン卒業おめでとうとか騒いでたな。

 どうやらそいつとそのままゴールインしたっぽいな。
 でもそいつが見当たらないが……
 後で聞いた別ルートの話では、卒業後結婚はしたけど子供を産んですぐ離婚したそうな。
 理由はクソ女のホスト通いだそうで。
 よくそれで親権取れたなと思ったら、男がそんな女の子供はめんどう見きれないと放棄したそうな。
 
 慰謝料なし。養育費の一部を一括支払いという事で離婚したらしい。

 その金もまたホストに貢いだらしいが。そんなの知るか。

 とにかく形だけの謝罪という茶番になぜ今更付き合わなければならないのだ。

 こっちは女というだけで反吐が出る程拒絶したいのに。

 熱血ちゃんだって本当はどう思っているんだか。

 
 ただ、この場を用意するだけの手腕は認めても良いとは思ってる。


 「俺が赦すと思うのか?考えてもみろ。お前らのくだらない遊びに巻き込まれ、男心を弄ばれ、やってもいないのにレイプ魔と罵倒され、関係ない奴からも避難の目をみけられ、直接間接問わず悪口を言われ、ダチにまで飛び火した。」

 「学校生活の半分だぞ。修学旅行も行けない、2度も停学を喰らう、ダチはずっと信じてた数人だけだ。お前らが勉強や遊びや部活にせいを出している間、俺はダチにも迷惑かけられないからと独りでいるしかなかった。」

 「返せるのか?青春を。時間戻してやり直しさせてくれるのか?出来ないだろう。お前らも教師達も。そもそも俺の話は一言も聞こうとすらしなかった。今初めてだよな、俺の言葉を聞くのは。」
 子供が俺の見幕にびっくりして泣き出した。

 「黙らせろ。」

 この時の俺は自分でも自分が怖かった。

 「俺はあの仕打ちの中でも一度も泣いていない。ダチに弱音を吐くことはあっても泣いてはいない。泣いて済むのなら泣いただろうけどな。」

 実際数人の女は泣いていた。男も顔面蒼白だった。知るかっ

 このままいくと自分が悪者になってしまいそうだ。

 「あの嵌められた時から俺は女が怖くてしょうがない。近寄られると吐き気がしてくる。必要最低限の付き合いでこれまで仕事もしてきた。根底として根付いたモノは社会に出ても纏わりついてくるんだよ。」

 「当然童貞だよ。ABCのAすら出来そうにねぇよ、文句あるかっ。」

 「この5年近く、のうのうと生きてきたお前らが、たった一言二言ここで心の籠ってない形だけの謝罪でなかった事になると思うなっ」

 「出来る事なら、業務用巨大シュレッダーにお前らを放り込みたいよ。もしくは肥料会社にある濃硫酸にぶっこんでやりたいよ。」
 偏に残虐に殺してやりたいという事だが。

 「これ以上関わらないならば、訴訟だけは起こさないでいてやる。だからお前ら、明日から毎日100万円持って来い。」

 うん。何を言ってるんだろうね俺。でもこれのおかげで少し冷静になれた気はする。

 「まぁ流石にそれは冗談だが…お前らの謝罪は全然誠意が感じられない。熱血ちゃんに絆されこの場に集まったという事だけは評価してやる。」
 
 「私の名前は有馬…」

 あぁはい、そういえばそういう苗字でしたね。

 主犯であるクソ女が一人言葉を発した。

 「本当にごめんなさい。どんな罰でも受けるのでこの子だけは…」
 あれ?なんか俺を悪者にしようとしてませんか。
 
 「他のメンツを赦しても、お前と写真を撮ったお前と、俺を押し倒し聞く耳持たず説教垂れ流した教師だけは赦さない。」

 鬼のような形相であろう俺の顔を子供は怯えてみていた。
 この子供の人生も狂わせたな、クソ女。

 「有馬先生、あなただけは唯一このブタの掃き溜めの中で平等であろうとした。あなただけは赦そうと思う。」

 そう言って俺は応接室を出て行った。
 出て行ったが去ったとは言っていない。

 中ではどうすんだとか、もう黙ってればどうとかいう声が聞こえてきた。
 レコーダーの一つは扉ギリギリに置いてあるので言葉を拾ってることだろう。

 有馬先生はそれでも、そうじゃないでしょう。例え拒否されても謝罪を続けるべきだ。
 彼の言うとおり学校生活の半分を奪い、今でも苦しめている。

 という声が聞こえてくるが。

 もう俺壊れてますからね?
 
 ガラララララ
 応接室の扉を開けた。

 「あ、言い忘れてたけど、今日の様子はレコーダーで録音してるから。悪さには使わないけど、何かあった時の証拠としてとっとくから。」
 最後に

 「俺が一度退出した後の会話もばっちりだからね。盗撮盗聴が証拠にならなくても、護身用のは採用されると思うから。」

 まぁ子供に黙れと言ったところも残ってるわけだけど。
 

 そうしてぶちまけたら心にゆとりが出来たのか。

 3次元を見ても吐き気はしなくなった。

 それどころかコミケに参加するようになり、多少人付き合いが出来るように戻った。
 結城の結婚式にも出れるようになったし。

 五木さんと知り合う事で真理恵さんとも遊ぶようになり段々回復するのだが。

 その前にもう一つスッキリする事があった。


☆☆☆

 多少の人付き合いが出来るようになった事で飲み会やその後まで連れて行かれる回数が増えた。
 酒は苦手なので最初の1~2杯しか飲めないのだが。

 ある時上司が金を出すからお前童貞捨ててこいと、風俗に連れていかれた事があった。

 ある程度治ってきたとはいえ女とそういう事出来る程ではなかった。
 事情説明して話すだけなら誤魔化せるかと思い、フリーで入場した。


 「ふけつです。」
 回想に突然友紀さんが乱入してきた。


 「いや、俺まだ魔法使いですよ。」

 それと、そういう人達も仕事なので、プライド以って仕事してる人達は立派ですよ?
 まぁ俺についたフリーの嬢はクソなんだけど。

 「「あ……」」

 あのクソ女だったのだ。
 この頃は結城経由で事情を聞いた後だったので知っているのだが。
 ホスト代か子供のためか生活費か知らんが、確かに給料は良いだろうな。
 風俗嬢となったクソ女とこんなとこで再会した。

 「じゃ、そゆことで。」
 俺は退出しようとした。

 「待って、ちゃんと仕事しないとお給料貰えない。」
 そう言って足にしがみついてくる。

 「やめっ。うっ」
 一番の元凶だからだろうか。触れられた事でトラウマが蘇り吐き気を催してきた。

 どうにか洗面所に辿り着き胃の中身を吐き出す。

 「……本当だったんだ。」
 「あ?何が。」

 「女性に触れられると吐き気がするって。」

 「嘘ついてどうするんだよ。ここにきたのだって上司が金出すから童貞捨ててこいて無理矢理だよ。」

 「ごめんなさい。」
 上下共下着一丁のクソ女が土下座をする。
 あ、うん。ここだけ見たら俺が悪者だな。

 「子供のためか?」
 それは謝罪に対してではなく、風俗…ソープランドで働いている事に対して聞いた。

 「え?うん。ホスト遊びはもうしてない。どうせどこからか情報は入ってるかも知れないけど。

 子供は実家に預けソープで働いてまとまった金額を稼いでるらしい。
 両親もタダでは面倒を見ないそうだ。
 もっともソープで働いてるとは思ってないみたいだが。
 昼も夜も違う所で働いてると言っているらしい。

 聞く気もなかったが、すぐに出ると仕事をしてないと判断されるらしい。
 
 正直50分も同じ空間にいたくないのだが仕方ない。

 「俺は好きでも嫌いでもどちらでもなかったよ。あの学年でアイドル的だったお前に告白されて有頂天になったのは否定しない。」

 「そこから始まるって事もあるからな。だが裏切られた。いや、お前からしたら必然だったんだろうな。だから今があるのも必然だ。」
 
 「業務用シュレッダーに放り込みたい気持ちも濃硫酸にぶっこみたい気持ちも本当だ。だが子供に罪はない。時間いっぱい俺は休ませてもらう。」

 横向けになって目を瞑る。

 ソープに来て睡眠的な意味で寝る客など他にいないだろう。

 ずっと正座をしていたクソ女が動いた音が聞こえる。
 すぐ傍に気配を感じる。
 まさか殺る気か?と思ったが、流石に怖い兄ちゃんとかもいるのにそれはないか。

 すると横を向いている俺の頬に温い液体が数的落ちてきた。

 今頃泣いて謝っても遅いだろ。知るかっ

 

 上司には、高校の同級生が相手だったので出来なかったと報告した。
 普通そういう時は燃えるだろうと言われけど…ありえませんとつっぱなねた。


☆☆☆ 


 「こうして俺は未だに魔法使いなのです。」

 「じゃない、女というものが苦手になったのです。もっともヲタ活動をしてるうちに解消されてはいったんだけどね。」

 「五木さんと真理恵さんの天草家の2人の存在は大きかった。詳細話さなくてもわかったわかった皆まで言うなって感じでいろいろやってくれたから。」

 「大手の列に並んだり、企業ブース並んだり、荒療治かもしれないけど、色々な人と触れ合う事で大分元に戻っていけたよ。」

 「ってなんで友紀さんが泣いてるの?」

 「ぐすっ、え?だって裏切られても騙されても自分の強さで立ち直ってるから。凄いなって。頑張ったんだなって。」

 「まぁ数少ないダチと家族のおかげだよ。その数人がいなかったら殺人してたかも知れないけど。」

 「真人さんは、周りが敵ばかりでも腐らなかった。独りになったり、友達のためとはいっても暴力はよくなかったかもしれませんが。」

 「よく耐えたと思います。」

 真人には見えないよう、友紀は自分の左手首を抑える。

 「これ、最近web小説が流行り始めてますけど、ざまぁってやつなんでしょうか。墜ちていった彼女も少し気の毒に思いますが。」

 「さあね、どうだろう。あの時の俺は自分が壊れているのを実感していたから。そんな状況でも一緒にいてくれた人には感謝だよ。」

 「それとやっぱり、友紀さんにも感謝なんだよ。天草家の2人に色々仕込まれていく中、あの日コスプレ広場で友紀さんを見かけなければ…ここまで踏み込めなかったと思う。」

 「一番気になったレイヤーさんだとか濁して言ったかもしれないけど、多分一目惚れだったんだと思う。」
 あ、一目惚れの言葉は軽くスルーされた。今ぶり返されても恥ずかしいし? 

 「それからの1年、友紀さんことゆきりんさんをおっかけるためにイベント探したし。」

 「その時は四面楚歌で気付かなかったかもしれないけど、もしかするともう少し味方はいたのかも知れませんね。」

 「視野が狭くなったのは事実だと思う。目に見えるその他大勢、特に女性は恐怖でしかなかった。」

 「でも今は?」

 「恐怖だったら友紀さんとデートなんて出来ないし一緒の部屋で寝たり出来てないよ。」

 「はっ、もー。それは恥ずかしいからやめてー。」

 場が少し明るくなった。明るくはなったのだが、友紀さんの表情はまだどこか寂しそうだ。

 そんな友紀さんの表情を見てふと思い出した記憶がある。

 「もしかしてだけど、1年半くらい前に○○駅で変な着ぐるみから風船貰った事ない?」
 そうだ、あの時寂しそうにしていた女性が…似てる。今の表情の友紀さんに。

 「??そういえば1年ちょっと前に貰ったような?」

 「やっぱり~。その時、「元気だしてください」みたいな事言われた?」

 こくこくと頷く友紀さん。

 「あ~あの着ぐるみの中の人、俺。最後に大人の女性に風船配ったという記憶と、今の友紀さんの寂しそうな表情に見覚えがあって。」

 「え~……もうどれが私たちのファーストインパクトかわかりませんね。」

 その友紀の言葉はフラグである事はやはり二人とも気付かなかった。
 これはもう少し家族との好感度が上がった時に判明する。  

 「真人さんは友人と家族のお蔭で過去を乗り切ったのですね。」

 「友紀さんにもだよ。今なら完全に振り切れたと言える。」
 もうどこで何をしているのかわからない学校の奴らの事なんか気にもならない。

 あの頃味方をしてくれた友人と有馬先生の事くらいしか。

 あぁ、俺は友紀さんに恋をしているんだ。
 そう実感した瞬間である。遅いよ。
 だから俺はこの人を笑顔にしたいし、それを守りたいと思った。


 そして今度は覚悟を決めた友紀さんの昔話を聞くことになる。
 その話を聞いた後、俺は自分の過去なんて道端の石ころくらいにしか感じない程度だと理解することになる。
――――――――――――――――――――――――――――――――

 後書きです。

ちなみに罰ゲームになる元のゲームに参加した男3女2のアホの末路。
男1 この件が嫁にバレて喧嘩になる。酷いやつだと思われるようになる。一応家庭の体裁を保ちながらも離婚には至らず。
 ただし、仕事はうまくいかなくなりミス連発で出世街道から外れる。

男2 別件で暴力事件を起こしてしまい、相手が暴力団のボスの親族とかで娑婆にいるとまずいという理由で服役を選ぶ。
 出てきたらどうなるんでしょうね。

男3 大学卒業ご社会人1年目の時の謝罪茶番だったためそれが会社にバレる。罰則はなかったがやはり人間性の問題を重視され、出世街道からはずれ、27歳の時に高卒同期に抜かれ上司となる。
 同期とはいえ年下に使われるのが嫌なのか時期に会社をやめバイト生活。
 会社を辞めた影響か、付き合っていた彼女に振られる。そこで快感を得たのかM性感とSM系のお店にハマる。
 現在玉一個捧げた事で年下の女性に飼われている。

女1 21で結婚と出産をするが、23の時の謝罪茶番で精神不安定に。子供にママ怖い嫌いと言われ、親権を父に譲り離婚。
 精神がある程度治り、28歳の時に再婚し新たに子供を儲ける。一応反省したのか再婚はうまくいっている。

クソ女 28まで夜の店で働き、子供は両親によってほぼ育てられる。おじいちゃんおばあちゃんっ子に。
 夜の店を辞めた後は近所のスーパーで働き、同僚に声を掛けられ3ヶ月程付き合う。
 でもそれは流行り始めた罰ゲームからの嘘告白だった。誰にも相談できずにパートを辞める。
 因果応報であるため、訴えたり職場の他の人には言えなかった。
 ちなみにそんなクソ男は誰にも相手にされなくなった。それも因果応報。

教師達 主任等役職あった人は全員平に。当時の教師全員1年間の減給。教育委員会にまで報告があがったためだ。
 ただし、真人が大事にしなくていいと言ったため、公表はされなかった。
 当時の校長、教頭も1ランクダウン。

有馬先生 減給を受け入れ、その後唯一出世。まだあの学校で教鞭を取っている唯一の先生。
 ちなみにまだ独身。付き合ってる男性はいるがどちらも魔法使い。38歳。
 えぇ、事件当時はまだ赴任して間もない若輩先生だったのです。だから熱血だったのです。
 担当教科は国語。彼氏も国語。


 あれ?これざまぁじゃね?
 と思ったけど、制裁ないとだめだよなと思って末路を。
 それと有馬先生だけ特別感半端なくない?
 一応数少ない中立だったという事で。
 スピンオフは…あると思います?希望でもあれば。
 最初の説明文や余計な改行とか全ダッシュがあるとはいえ1万字超えてる…
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