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一章
◎13.斑の狼リン・オルム
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白と黒が結婚して……子どもが産まれる。
その子どもは白、または黒。
灰色は生まれない。
灰色は存在しない。
それが色んな種族を持つ人の絶対。
人狼と吸血鬼が結婚したら、産まれる子どもは人狼、または吸血鬼。
どちらかの種族特性のみを引き継ぎ…受け継ぐ。
そんな中、引継ぎ…受け継ぐような種族特性を持たない人間という種族は、自然と数を減らしていった。
一部の人は、人間を劣等種と呼んだ。
数を減らした人間は、滅びへの恐怖からか…人間以外の人を、異常変異したけだものと罵り嫌悪した。
自分たちこそが正しい人だと。
だから人間は、お互いに人間と確信してる者同士で子どもを作るようになった。
「………ははっ」
お笑い種だ。
お互いに人間と確信してる?
種族特性を持たない人間は、人間と自分たちがけだものと罵る人との違いがわからないのに?
俺の母さんは、一族風にいえば由緒正しい人間の血筋の一人娘だった。
正しい血統…高貴な血統の娘が、密かに身ごもり、産んだ子ども。
だから……俺が人間ではないと思われなかった。
あそこの常識では、地位も名誉もある家の美しい娘が、汚らわしいけだものの子どもを殺さず産むなんてありえないから…。
扉が開く気配を感じて、顔をあげる。
「やぁ待たせたかね?」
「いや。……それよりこんなものを、学園長室の机に置いとくなんて不用心じゃ?」
暇つぶしに読んでいた紙束を、バサバサと揺らす。
「きみがくると知っていたからの、おもてなしだったのだが?」
「へぇ…」
お気に召さなかったかな?と、この学園の学園長が肩をすくめる。
相変わらずの悪趣味だ。
けだもの駆除計画、実験の生体データ、行方不明になってもおかしくない素行の生徒リスト……。
手の中にある紙の文字を思い出し、笑ってみせる。
「狂ってんなー」
「きみもこちら側だろうに。そんな感情を吐露するとは意外だね」
「ま、俺の事はどうでもいい。それより…」
「あぁ…ノアくんの事かい?」
「………なんで入学させた」
「変な事をいう。弟くんの実力だろう?」
「この学園の試験でノアが首席?笑わせるなよ」
「やぁ酷いお兄ちゃんだ。ノアくんは通常問題が、満点だったのだから首席でもおかしくはないだろう?」
「………………」
この学園のテスト…解答欄の下には大きな余白がある。
その余白に何を書く…いや書けるかで、配点が大きく変わる。
それぞれの種族特性を利用して、問いかけられる問題。
例えば…俺なら…におい…。このにおいは何かと、においで質問がきて、それを余白に埋める。
これをまったく埋められないような存在……人間は…それこそ通常問題で満点でも取らないと、合格は出来ない。
表向き人間の差別をしてないはずのこの学園に、これまで人間が入れなかったのはそのせいだ。
人間は問題がある事にも気づけない…。
それなのに…入学という無理をノアはやってのけた。
確かにすごい……それでも首席はありえない。
原因を知る相手を見ると、それが愉快だとばかりに、にやにや笑う。
「なぁに…とある劣等種の一族が興味深い研究をしていたので…ね」
「………」
「面白く…優秀な道具を作ったご褒美に、実験場くらいは提供してあげようかと思ったまでだよ」
「…………」
「だから彼には、人間である事を考慮して、配点を施してあげたわけ、だ」
「劣等種、ね。自虐的な言葉を使うもんだ…」
「そうかな?私はあくまで種として劣っているという事実を認めているだけなのだがね?」
「やっぱ、狂ってんな~」
「どうかな?」
「……それで俺を呼び出した理由は?」
「実験場の管理人をやって貰おうかと思ってね」
「…………」
「どの道あちらからも、ノアくんの補助に入るよういわれているのだろう?飼い犬は飼い犬らしく、黙って従えばいい。簡単さ」
目的の為に全てを受けいれる。そう決めている。
だから今回も答えは……。
「了解」
是、だ。
…巻き込まれるであろう…相手には、同情する。
ノアにも……。それでも…俺はおまえの味方になれない。
学園長から必要書類を受け取り、代わりに暇つぶし用に用意されていた紙束を机に置く。
雑に置いた衝撃から…一枚……束ねられていなかった紙がはらりと落ちた。
「……っと」
落ちたそれをそのままにする気になれなくて、思わず拾う。
そしてそのままなんの気なしに、書かれた紙の文字を読んだ。
「……っ」
欠陥品の可能性あり。
赤い文字でこう書かれた紙には、写真も印刷されていた。
「こ、れ……は…」
この男の前で、出来るだけ動揺は見せたくなかった。
それなのに…俺はここにきて……一番の反応を見せてしまった。
「暇つぶしの資料が気になるのかい?」
「い…や…」
「ふむ。彼をどうこうする予定はないよ今のところは」
「……関係ない」
「あぁそういえば、昨年…人間ではないのに…例の解答欄が空欄だった変わり者がいたのだよ。もちろん彼は首席とはいかなかったが……」
「……関係ない」
口内が渇く。
「ふふふ。そうかね?」
これ以上その場にいる気はないと、学園長室を出る。
写真の顔が頭から離れない。
トワ………トワだ。
あれはトワだった。
知っているトワよりだいぶ大きくなってた…。
トワの事を考えていたせいか………トワのにおいを感じる。
「気のせいに決まっ…………」
気のせいじゃない。
トワがいる。……泣いてる。
トワが泣いてる!
その瞬間、全てを放って、俺は四つ足で廊下を駆けた。
その子どもは白、または黒。
灰色は生まれない。
灰色は存在しない。
それが色んな種族を持つ人の絶対。
人狼と吸血鬼が結婚したら、産まれる子どもは人狼、または吸血鬼。
どちらかの種族特性のみを引き継ぎ…受け継ぐ。
そんな中、引継ぎ…受け継ぐような種族特性を持たない人間という種族は、自然と数を減らしていった。
一部の人は、人間を劣等種と呼んだ。
数を減らした人間は、滅びへの恐怖からか…人間以外の人を、異常変異したけだものと罵り嫌悪した。
自分たちこそが正しい人だと。
だから人間は、お互いに人間と確信してる者同士で子どもを作るようになった。
「………ははっ」
お笑い種だ。
お互いに人間と確信してる?
種族特性を持たない人間は、人間と自分たちがけだものと罵る人との違いがわからないのに?
俺の母さんは、一族風にいえば由緒正しい人間の血筋の一人娘だった。
正しい血統…高貴な血統の娘が、密かに身ごもり、産んだ子ども。
だから……俺が人間ではないと思われなかった。
あそこの常識では、地位も名誉もある家の美しい娘が、汚らわしいけだものの子どもを殺さず産むなんてありえないから…。
扉が開く気配を感じて、顔をあげる。
「やぁ待たせたかね?」
「いや。……それよりこんなものを、学園長室の机に置いとくなんて不用心じゃ?」
暇つぶしに読んでいた紙束を、バサバサと揺らす。
「きみがくると知っていたからの、おもてなしだったのだが?」
「へぇ…」
お気に召さなかったかな?と、この学園の学園長が肩をすくめる。
相変わらずの悪趣味だ。
けだもの駆除計画、実験の生体データ、行方不明になってもおかしくない素行の生徒リスト……。
手の中にある紙の文字を思い出し、笑ってみせる。
「狂ってんなー」
「きみもこちら側だろうに。そんな感情を吐露するとは意外だね」
「ま、俺の事はどうでもいい。それより…」
「あぁ…ノアくんの事かい?」
「………なんで入学させた」
「変な事をいう。弟くんの実力だろう?」
「この学園の試験でノアが首席?笑わせるなよ」
「やぁ酷いお兄ちゃんだ。ノアくんは通常問題が、満点だったのだから首席でもおかしくはないだろう?」
「………………」
この学園のテスト…解答欄の下には大きな余白がある。
その余白に何を書く…いや書けるかで、配点が大きく変わる。
それぞれの種族特性を利用して、問いかけられる問題。
例えば…俺なら…におい…。このにおいは何かと、においで質問がきて、それを余白に埋める。
これをまったく埋められないような存在……人間は…それこそ通常問題で満点でも取らないと、合格は出来ない。
表向き人間の差別をしてないはずのこの学園に、これまで人間が入れなかったのはそのせいだ。
人間は問題がある事にも気づけない…。
それなのに…入学という無理をノアはやってのけた。
確かにすごい……それでも首席はありえない。
原因を知る相手を見ると、それが愉快だとばかりに、にやにや笑う。
「なぁに…とある劣等種の一族が興味深い研究をしていたので…ね」
「………」
「面白く…優秀な道具を作ったご褒美に、実験場くらいは提供してあげようかと思ったまでだよ」
「…………」
「だから彼には、人間である事を考慮して、配点を施してあげたわけ、だ」
「劣等種、ね。自虐的な言葉を使うもんだ…」
「そうかな?私はあくまで種として劣っているという事実を認めているだけなのだがね?」
「やっぱ、狂ってんな~」
「どうかな?」
「……それで俺を呼び出した理由は?」
「実験場の管理人をやって貰おうかと思ってね」
「…………」
「どの道あちらからも、ノアくんの補助に入るよういわれているのだろう?飼い犬は飼い犬らしく、黙って従えばいい。簡単さ」
目的の為に全てを受けいれる。そう決めている。
だから今回も答えは……。
「了解」
是、だ。
…巻き込まれるであろう…相手には、同情する。
ノアにも……。それでも…俺はおまえの味方になれない。
学園長から必要書類を受け取り、代わりに暇つぶし用に用意されていた紙束を机に置く。
雑に置いた衝撃から…一枚……束ねられていなかった紙がはらりと落ちた。
「……っと」
落ちたそれをそのままにする気になれなくて、思わず拾う。
そしてそのままなんの気なしに、書かれた紙の文字を読んだ。
「……っ」
欠陥品の可能性あり。
赤い文字でこう書かれた紙には、写真も印刷されていた。
「こ、れ……は…」
この男の前で、出来るだけ動揺は見せたくなかった。
それなのに…俺はここにきて……一番の反応を見せてしまった。
「暇つぶしの資料が気になるのかい?」
「い…や…」
「ふむ。彼をどうこうする予定はないよ今のところは」
「……関係ない」
「あぁそういえば、昨年…人間ではないのに…例の解答欄が空欄だった変わり者がいたのだよ。もちろん彼は首席とはいかなかったが……」
「……関係ない」
口内が渇く。
「ふふふ。そうかね?」
これ以上その場にいる気はないと、学園長室を出る。
写真の顔が頭から離れない。
トワ………トワだ。
あれはトワだった。
知っているトワよりだいぶ大きくなってた…。
トワの事を考えていたせいか………トワのにおいを感じる。
「気のせいに決まっ…………」
気のせいじゃない。
トワがいる。……泣いてる。
トワが泣いてる!
その瞬間、全てを放って、俺は四つ足で廊下を駆けた。
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