乙女ゲームのメインヒーローに転生してしまったのだが…

ミミミミミミミ ミ

文字の大きさ
30 / 30
三章

▽2.初日のセス・ソエットと二人の委員長

しおりを挟む
「やぁ、ルトエくん…とイニアスくん」

僕は待っていた相手と、そのおまけをテリトリー保健室に招きいれる。

「セス先生お待たせしました」
「…二人は不要でしたか?」
「いや、そんな事はないよ。人手が多い方が早く終わるだろうし…」

口元に適当な笑みを浮かべながら、僕は内心で舌打ちをする。
あぁ不要だったとも。
これから始まる面倒な共同生活に辟易して、音が聴きたかったからストレス解消にトワを呼んだのに……。まったく。
邪魔者がいては、それが出来ないじゃないか。
仕方なく、僕は特に必要じゃない仕事を二人に指示した。


「まさか初日から、作業を頼んでくる先生がいるとは思いませんでした」
「シ、シア先輩…」
「なんだ?」
「いえ……。あの…これは私たちの為でもあるので…」
「そうか。確かにそうだな。だがそれでも手伝いが貴様一人だけというのは、非効率だろう」
「いえ、去年もやっていましたし。そもそもたいした作業じゃ…」
「……本当は僕一人で、済ませておくべき事かもしれないけれど…さっきの問題が・・・おきた・・・せいで……時間がなくなってしまって、ね」
「う゛…………」
「セ、セス先生?」

イニアス風紀の監督不行き届きのせいで、仕事が出来なかったと…文句をいってやる。
人の楽しみを邪魔したんだ。これくらいいってもいいだろう。

「なんでしょう?ルトエくん」
「いえ、その…あの………なんでもありません」

今作業しているのは、連休中に何かおきた時の為の緊急用備品の確認。
先程いった通り、特に必要じゃない・・・・・・作業だ。
すでに僕が…確認を終わらせたものを、もう一度やっているにすぎない。
それこそ三人がかりでするような事でもない些事は、あっという間に終わっていく。


「トワ・ルトエ、その箱を寄こせ」
「あ、はい」

そういって、イニアスはトワの手をわざわざ掴んでから、もう片方の手で箱を受け取る。
……過剰接触。
それだけじゃない、作業する距離もかなり近い。
これが何を意味するか……。仮にも養護教諭だ。機微の見極めにはそれなりに自信がある。

「………へぇ…」

トワから、仲良くなったと…聞いていたけれど…。堅物の風紀委員長が、ここまでトワに種族同調・・・・しているとは思っていなかった。

「……ふぅん」

種族同調それは簡単にいってしまえば仲間意識。
僕たちは…自分と同じ種族に好感を抱きやすい。これも簡単にいえば、気の合う相手が多いのが同種族という事。
人魚なら人魚…そして吸血鬼なら吸血鬼…。
人の種族数は多いけれど、恋人…パートナーともなれば、自然と同じ種族でかたまりがちなのは、このせいだ。
もちろん種族それが、全てではなく、異種族同士もマイノリティというほど少数じゃない。

「二人は…」
「はい?」
「随分仲がよくなったんですね」
「そう…見えますか!」
「………………」

僕の言葉に、喜色を浮かべるトワと、渋面を作るイニアス。
なるほど…友情と、無意識な仲間意識といった程度か。

「ええ、そう見えます」
「………先生。終わりました。ではオレたちはこれで。いくぞ…トワ・ルトエ。そろそろ食事の支度にいかなければ」
「え…あ、はい。…では…セス先生。私たちはいったんこれで…。……あ、の?セス先生?」

居心地が悪くなったのか、イニアスが立ち去ろうとする。
……トワの腕を引いて。

それを…僕がとめる。
トワのもう片方の腕を引いて。

「セス先生?」
「まだ何か?」

両側から引っ張られ、おろおろするトワと、引き留める僕にいらいらするイニアス。

「ルトエくんは…まだ、でしょう?」
「?」
「イニアスくん」
「……なんでしょうか?」
「ルトエくんは少しだけ遅れていきます」
「少しならば、ここですませてください」
「ここで?……やぁ…それは生徒のプライバシーを守るのも僕の仕事なので…」
「あ、の???」
「…………………」
「わっ!?」

イニアス邪魔者がトワの腕を放し、不満そうに…でも目上への礼儀は忘れず、おじぎを軽くしてから出ていった。
勢いよく閉まった扉を呆然と見つめながら、トワが口を開く。

「あのセス先生、私は…また何か失礼をしてしまったのでしょうか?」
「いえ」
「じゃあ…あの…何故…二人は不機嫌に…。いえ……そのなんでもありません。…きっと…これも聞くのは…駄目で…。ああ…どうして…こう…いつも…私は……」

もごもごと何かいっているトワから距離を取り…保健室の扉へ向かう。
勢いのせいで完全に閉まっていなかった扉を…しっかりとくっつけてから、備え付けられているスライド式の鍵を閉める。
ガチャリ…と重い音がした。


それからトワの方を向き…声を出す。

従え・・…」
「!」
トワ・・……」
「う…あ…あ………は…い。…ご主人……さ…ま」

邪魔者がいたせいで、一度は諦めた…でも……邪魔者のせいで、我慢出来なくなった。
種族同調?同族だから?……その程度の優位性があるくらいで、僕の楽器にべたべたと…。

トワ・・こい・・……」
「は…ぃ」

ここ最近は誘って・・・いたけれど、今回は…強制・・する。
まぁ……成立し得ないトワにとっては、どちらだろうが命令の効果に変化はない。

トワ・・のれ・・……」
「……はい。ご主人様」

椅子に腰かけた僕の上に、トワが抱き着くように正面からそっと体重をかける。
ふわりと、トワの種族特性誘因フェロモンを微かに感じた。
僕から誘っていないから……トワから出ている。
それを僕は受け取る。そして…。

「誘いを受ける・・・

いつかと同じように、承諾を返す。

「………?」
「……」
「?」
「…は…ぁ」

僕はこんなにもきみに、血を吸って欲しくて…仕方がなくなっているというのに……。

受けろ・・・
「…?………???」
受けろ・・・
「…?………」

こういう時のトワは種族特性を、受け付けない。
これだけは何度重ねても、疲弊しない。
先程の声が残っているから…うつろではあるけれど、それだけだ。

僕がトワのを受け取ると…、成立を進めようとするとうまくいかない。
感知もしない。受け取りもしない。当然返しもしない。

トワ・・
「はい、ご主人様」

この状態でも、成立以外の命令を使えば反応する。
効いてしまう。
本当にきみはわけがわからないな。

成立だけ…まるで誰かにブロックされているようだ。

こちらから成立に…誘えば、きみは…種族特性誘いを受け取ってしまうから…。
ブロックいうには…違うのかもしれ……あぁ…。
いや…その先が、うまくいかない事を思えば、やはりブロック機能といってもいいのかな。

種族特性に鈍い一方で、誘因フェロモンも放てる事や、特殊条件下でのブロック、トワは明らかに種族特性を持たない人間とは違う。
でも…それは…始めから…ない・・人間より、いびつな気がした。


まぁ、僕は医者でも研究者でもないから、楽器トワの謎をどうこうする気はない…。
そう…僕がする事は……。

聴かせろ・・・・トワ」
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

やま、
2022.04.23 やま、

おもしろすぎて最新話まで一気に読んでしまいました!お体の調子を崩されているとのことでしたので、どうかご自愛ください。

解除
Rin
2020.07.04 Rin

語彙力ないので一言だけですが…
好きです!!!!ストーリーも言い回しも!毎日楽しみにしてます(〃艸〃)

2020.07.05 ミミミミミミミ ミ

>Rinさん
ひえーーー!感想ありがとうございます。
好きと言って頂けるなんて、ファーーーーー(昇天)~~0

解除
うずら
2020.07.01 うずら

一気に読みました!
投稿楽しみにしています!!

2020.07.01 ミミミミミミミ ミ

>うずらさん
嬉しいお言葉ありがとうございます。涙出そう…!!
出来るだけ早くお届け出来るよう頑張ります。

解除

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。