双鬼と福姫

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2.伝承

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この島には、独特の習わしがある。
島を治めるのは、鬼の家の者というそれは…今でも脈々と受け継がれ、守られている事の一つだ。

元来島を荒らし、災いを招く忌避すべき鬼。
その鬼が、この島の領主の娘と結ばれた事で、強大な力を善へと変化させた。

そうして豊かになった島で、鬼と娘の間に双子が産まれる。

当時、獣腹と忌み嫌われる双子であったが、鬼の子という独特の出自と、子ら自身の有能さと相まって、その子らは大層尊ばれた。
上の男子おのこは領主の家を継ぎ、下の女子おなごは福姫の元となる家を立ち上げた。

以降、この島で男女の双子は目出度めでたい…慶事として、迎え入れられる事となる。


それからのち、悲劇は起こる。
領主の家に産まれた双子の男らが、福姫の家の女を巡り、血みどろの惨劇を繰り広げた。

また…数世代後。
今度は領主の家に産まれた双子の女らが、福姫の家の女に狂った。

そうした事が時代を変え…代を越え、何度も起これば、領主の家の同性の双子は忌むべき存在といわれるようになる。


鬼の血を色濃く継いだという上の男子おのこの血が招く業だろうか…と考えた島の民は、この島の鬼神を祭る神社へと相談を持ち掛けた。

霊験あらたかであった当時の神職曰く、領主の家に産まれる同性の双子は、互いに共鳴し鬼の血が強くなっていく…というものであった。
そうして鬼の血が強まれば…娘の血を色濃く継ぐ家の者に、恋い焦がれ狂うのだと。

忌むべき存在となりつつあった同性の双子だが、一方で男女の双子が尊ばれていた過去のお陰か、陰惨な扱いを受ける事はなかった。

しかしこのまま捨て置ける話ではない。では…どうれば…と島の民は頭を悩ませた。
双子を別々に育てればよいのでは…と誰かがいった。

それでも悲劇は起こった。


そうして起こってしまった悲劇を経て、また別の誰かがいった。
結ばれないから、狂うのではないか…と。

過去を紐解いてみれば…確かに、悲劇はいつも、同性の双子と福姫の家の者が結ばれぬ事を、発端としている。

答えを得た島の民は、迷わなかった。
何より、領主の家……鬼はこの島で愛されており、それを損なう事など島の民にはあり得ぬ事だ。


それ以降、同性の双子が領主の家に産まれた際は、必ず福姫の家の者が嫁いだ。
あれ程、悲劇を起こしてきた同性の双子は、嘘のように安定し、偉業を成す者が増えた島は、また豊かになった。
こうして同性の鬼の双子も、この島で尊ばれ、愛されるようになる。

また鬼を鎮め、島に福を与えてくれる家の者は、次第に福姫と呼ばれるようになった。

それから…また時を重ね………現在。


福姫の家の日出ひのでと、鬼の家の者はある儀式を行う為、おせっかいともいえる島の民の世話を受け、この古い家屋に閉じ込められた。
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