王子様を放送します

竹 美津

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本編

工事現場にて、赤ちゃん

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「うわー、あきち、ひろいね!」
「王宮側の林を少しだけ、切り開いたんだって。」
「今度から、ここ、散歩道もできるって聞いた!」

3王子がわきゃきゃとお話。
アルディ王子は、やってきたワイルドウルフの国の建築技術者達と話をしている。あちらの国では、パシフィストの国に比べて魔法使いが少ないので、人海戦術でプールを掘るそうだ。

そう、今日は、プールと体育館の工事が開始されるのだ。
王子達、アルディ王子、エフォールに新聞販売今日担当以外のジェム達も連れて、工事現場にやってきた。

「みんなよく知ってるねー。工事の様子、テレビにも映るよ。スーリールが、ほら、あそこでインタビューしてる。見物客、沢山いるねえ。」

何しろ久々の大きな工事、魔法も使うとの事で、物見高い見物客が、わらわらと押しかけている。危ないので、部外者は、張り巡らされたロープの外だ。
プールは、大きさが測られて、その少し外側から目印の杭が刺さる。
プールは掘って、綺麗なブルーのタイルが敷き詰められる予定。

「あ、竜樹様、王子様方!ジェム君達も!工事にいらしてたんですね!少しインタビューさせてください~!」
「はいはい、スーリール、プリュネル、クーリール、撮影ご苦労様。何でも聞いてください。」

安全ヘルメット(竜樹が安全のために普及した)をしたニュース隊が、竜樹の元に走り寄ってくる。

「これは今日のニュースに乗るの?」
「はい!この午前中に撮って、午後イチと夕方のニュースになります。あちらに新聞の記者さんもいますよ!」

スーリールが指し示す方向、工事の監督らしき貫禄たっぷりの白髪おじさんに、メモを取りながら何かを聞いている記者がいる。ジェムが、目をキラキラさせて、何聞いてるんだろ?とささやいた。

「竜樹様、プールが出来たら、プールではどんな遊びを?」
「俺がプールに行くのは、子供達と一緒だから、まず最初は、水に慣れる事から始めるよ。準備体操は充分やってからね。お水に顔をつけてみよう、水の中を歩いてみよう、それが出来たら、石を底に落として、拾えるかな?とかね。ビート板ていう、浮く板を持ってバタ足したり。少し泳げるようになるには、一夏かかるかなぁ。ちいちゃい子もいるし、ゆっくりやるよ。」
「なるほどなるほど。王都には川がありますけど、泳ぐほど深くはないから、王都生まれ王都育ちの者は、ほぼ泳げないんですよね。」
「泳ぐとすごく運動できるけど、歩くだけでも、足腰に負荷かけずに運動できるから、沢山の人に利用してほしいね。水泳カードとか作ろうかなぁ。できたところまでハンコが貰えるやつ。」
「それは頑張れそうですね!」
「とにかく、事故なく、楽しく運動できればね。」
「楽しみですね!私も試しに行こうと思ってます!」
「いいね!プール開きしたら、ニュースでも泳げるんじゃない?デザイナーのフィルさんに、水着の発注をしなきゃね。男性用はハーフパンツ形でいいと思うけど、女性の水着は、どんなのが良いかね。女性は、足とか出したら破廉恥なの?これ、聞いて失礼じゃない?」
「し、失礼じゃないですが、ちょっと恥ずかしいカナ?足は、水遊びだと平民は膝くらいまで隠れていれば。上は、半袖ですかねぇ。貴族のご婦人は、多分足首まで隠したいと思いますよ。」
「なるほど~。ちなみに俺の国の女性の水着はこんなのです。長いのも、あるけど。」
スマホで女性の水着写真をスーリールに見せる。
「ひえっ!は、破廉恥!」
カカッと顔を赤くして、スーリールがスマホを覗き込む。カメラのプリュネルが、レンズを近づけて、ビキニタイプで腰スカートのある水着を撮影する。

「長いよ!プリュネル!」
プリュネルがジーッと撮っていると、スーリールがパチン!と背中を叩いた。いてて。
王子達やジェム達、エフォールもスマホを覗き込んで、口々に、きゃきゃっと言って手で目を隠した。

余談だが、この水着画像は、編集のメルラが、「は、はずかし!」と言ってカットした。放送していたら、男性諸氏が大いに喜んだであろう。

「やっぱりか。スポーツ用のはこんな感じで袖があって半パンのもあるよ。」
「あ、これなら大丈夫ですかね。」
「まぁ、女性の方達は、水の中で邪魔じゃないけど、それぞれ好みの水着を用意するといいよね。というか、買わないとプール入れないんじゃ困る人もいるかな。」
「うーん、あんまり人気になりすぎても困るから、水着買うくらい遊びたい人に限っても良いかも?リハビリの人もいるんですものね。」
「そうか。そうだね。体育館は、動きやすい格好なら大丈夫だから。それで勘弁してもらうか。」
うんうん。
リハビリといえば。
スーリールが、竜樹の側でちょこっと顔を赤くしていたエフォールに目をやった。ご挨拶しても?と竜樹に聞いて。エフォールに、スーリールを紹介してもいい?と尋ねてからの挨拶を。

「初めまして、エフォール様。ニュース隊のスーリールと申します。サンテ!みんなの健康、を観ましたよ!リハビリ、頑張ってらっしゃるとか?」
「はい、初めまして、スーリールさん。エフォールです。リハビリ頑張っています。今は、膝下が、やっと柔らかく動くようになりました!」
「おお!良かったですね!プールに体育館、楽しみですね!」
「はい!プールなら、まだ筋肉の足りない私の足でも、立って歩けるかなぁって、思います!」
「応援していますよ!」

ニコニコとしたやり取りの後、プオーと太い音がして、工事が始まる合図となった。
アルディ王子が、わたわたと戻ってきて。
「始まります!プリュネル、撮影、頼んだわよ!」
「おうよ!」

ローブを着た、犬耳魔法使いシャルムが、プールの出来る場所の真ん中に立った。チリ魔法院長が、腕を組んで見守る。

「いきます!」

プール、できろ!

ギュギュ、ギュギュギュイ!!!

四角く、シャルムごと地面が、圧迫されてズズズと沈んでいく。
深さを測りながら、現場の監督が、ストップストーップ!と叫んで止まった。

「す、すごい、まほう!」
ニリヤが、張ってあるロープに手をかけて、身を乗り出して。

「ちょっと大きさ小さかったな。」
チリが、シャルムに、目印の杭を見て言う。ズズズズー、とチリが大きさを修正して、大人プールの地盤は出来上がった。
それから、子供プール、赤ちゃんプールと作って、魔法の工事は一旦終了した。
作業員達が、地盤の硬さを調べて、上に建物を作っていく準備をし始める。

すごかったねー!
と言い合う子供達。うんうんと、竜樹も頷いて。見物客も、すごかったな~と口々に言い合って帰り始める。

ガチャ!と音がして、竜樹の前に剣を取ったマルサが立った。
「何か用か?」

木の皮で編んだ、大きな籠をぶら下げた、顔色の悪い平民の娘。それから、目つきの悪い、若い男。

「ギフトの御方様は、そちらの方で?」
若い男が口を開く。
「だったら何だ?」

「子供が余ってるんでね。新聞を売ったりさせるのに、御方様は子供を集めてるんだろ。だったら、貰ってくれねえかと思って。」

「これ•••。」
娘が、ぶら下げていた籠を差し出して。
んん?と竜樹が覗き込むと、小さな、小さな、生まれたてくらいの赤ん坊が、籠の中で眠っていた。薄い茶の、細い柔らかい髪が、少し揺れて、ふぇ、と起きかけになり、ふぇ、ふぇぇん!と泣いた。

「あらららら起きちゃった。そちらの娘さんはお母さんなの?おしめかな?お乳かな?」
竜樹がマルサの後ろから、つい口を出すと。
「私、お母さんじゃ、ない。産みたく、なかった。まだ、結婚する予定も、ないのに。」
「頼みますよ。俺は父親なんか嫌だぜ。ガキの世話なんか、やってられっか!女なら花街にでも売れたのによ、男じゃ何の役にもたたねぇよ。」

「あぁー。お前ら、帰れよ。何で竜樹が、お前らの婚前交渉の後始末をしなきゃなんだよ!楽しんだんだから、腹括って結婚でもして、子供の世話しろよ!」
マルサが呆れた声で、追い払おうとするも。
「嫌よ!私、もっと良い人と結婚したい!この子がいなければ、まだ何とかなるもの!」
ぐいぐいと籠を突き付けてくる、貧血らしき娘に、男も。
「俺だってお前みてぇなわがままな女、願い下げだぜ!とにかくこいつがいなきゃ、何とかなるんだから、頼むよギフトの御方様!」

3王子やアルディ王子、エフォールにジェム達が、それぞれ、むむぅと娘と男を睨みつける。

「あぁ~俺、すっごくこの赤ちゃん欲しいな~。よしよし、竜樹が抱っこしてあげよ、泣くんじゃないよ~。」
んん!?
マルサがギョッとした顔で振り返って竜樹を見ると、竜樹はマルサの後ろから身を乗り出し手を差し出して、籠の中に入れ、まだ首の座ってない赤ちゃんを、慎重に抱っこした。
腕に頭を乗せて、よいよい、ポンポン、と背中を叩く。
あぅあぅ、と涙をこぼす赤ちゃんの頬を拭ってやって。

「何だよ。早く受け取れよな!じゃあもう用はないだろ、俺は帰るぜ。」
「まぁ待った、2人とも。俺がこの子を育てるんでいいけど、君たちには魔法誓約書を書いてもらいます。」

は!?

目を見開いた男女に、竜樹は。

「この子は、育っていくうちに、計算や読み書きも覚えて、新聞も売って、頼り甲斐のある1人の大人になるだろうと、思うんだ。読み書きできるって、今は結構重宝されると思うから、稼ぎもそれなりに貰える職場に就けるんじゃないかな。もし、そうなっても、君たち。」
この子に、面倒を見てもらわない、お金を貰わない、厄介かけない、関わらないと魔法誓約書、書いてよ。

「育てる面倒はみないのに、大人になってから面倒みてもらおうなんて、当然思わないよね。」

一気に口籠る娘と男である。

「あかちゃん、そだてないのに!」
「魔法誓約書には、破ったら命に関わるものもあるからね。赤ちゃんいらないんだから、別に誓約したっていいよね!」
「竜樹が育てるから、いいんだもんね!」
ねー!と子供達が顔を見合わせる。

「まぁそういうことなら、俺も分かったよ。お前ら、ちょっと待ってろ。チリー!」
マルサが納得して、チリを呼ぶ。この場で誓約してもらう為だ。娘と男は、竜樹と王子の護衛に取り囲まれて、オドオドし始めた。
「ま、待ってくれよ、何も、そんなにきっちりしなくてもいいだろ?」
「子供が、私に会いたがるかもだし•••。」

「いーや。きっちりやらせてもらう。君達みたいのが、ようやく育った子供に、本当のお父さんだよ、お母さんだよ、なんて言って良いようにするのは、俺は嫌なんだよね。出来て困るならそもそも避妊しろとも言いたい。あ、その事も誓約に盛り込もう。うんうん。」
「そりゃいいな。」

ニハハ、とマルサが笑った。
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