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しおりを挟む思い立ったら即実行。私達はその日のうちにバロワー家に潜入を決行した。だってさっきの商人が目覚めて喚き立てたら色々面倒なことになるもんね。
「どうぞ、こちらです」
「ありがとう。へえ、ここが抜け道になってるんだ」
クレハちゃんは道中、バロワー家の隠し通路を教えてくれた。彼女に案内されながら屋敷に続く地下通路を慎重に進んでいく。最後尾には未だ浮かない顔をしているルカちゃんが続いていた。
「……失礼ですけど、ノノアさん」
「ん、何?」
「本っっ当にご自身で邪龍ノヴァを倒す気ですか?」
ルカちゃんが恐る恐る私に尋ねる。そんな彼に私はあっさりと答えた。
「そうだよ」
「そうだよって……相手はその辺のごろつきとは違うんですよ? それこそこの世界を破滅に導く恐ろしい存在で……」
「大丈夫だよ。その証拠にほら、これからこの街の魔物も倒しに行くんだし」
「それも無理だと思うんです。相手はアルスさん達勇者の目もかいくぐって、こうして今も悪事を働く狡猾な魔物なんですよ?」
「うーん、でもさ」
私は足を止めた。そしてルカちゃんに振り返る。
「このまま彼らを見逃して自分達だけ逃げ出しちゃったら、私はこの先もう誰も助けられなくなると思う」
「……」
「それに」
私は両手でルカちゃんの手を包み込むように握った。彼の藍色の瞳をじっと見つめる。
「えっ、あのちょっと……ノノアさん」
「今の私には、ルカちゃんがいる。そうでしょ?」
「そ、それはまあ、そうなんですけど」
ルカちゃんの声が小さくなっていく。私はそんな彼を見つめにっこりと微笑んだ。
「だから邪龍討伐、頑張ろう?」
「はい…………え?」
「ん? どうしたの?」
ルカちゃんの顔色がみるみる青ざめていく。おかしいな。アルスが仲間を勧誘するときは、それで相手が顔を赤らめてあっさり成功していたと思うんだけど。確か彼の技の一つで『チョロイ』とか言ってたかな。
「……ちょっと待って下さい、ノノアさん。もしかして、その邪龍討伐、僕もメンバーの一人にカウントされてます?」
「そのつもりだけど?」
何かおかしなことを言っただろうか。ルカちゃんのことだから、きっと一緒に旅してくれると思ったんだけど。
「あ! もしかしてルカちゃん、私達と同行するのが嫌だった?」
「ーーっそうじゃなくて」
「?」
「ああもうっ、そうじゃないんですけどもういいです!」
彼は俯いて私の手を振りほどく。そして、
「分かりました! 分かりましたよ! 僕も一緒に行きます! お供します!」
心なしか投げやり気味にそう答えた。
「それとノノアさん」
「何?」
「誰の真似をしたかは大体想像できますけど、それ他の人にはあまりやらない方がいいですよ……」
「え、どうして?」
「どうしてもです」
「……?」
そんなこんなで私達はようやく目的地へと辿り着いたのだった。
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