5 / 28
5.平和と渾沌を愛する男
しおりを挟む「では、引き続き自己紹介を進めよう」
聖会長の一言で再び自己紹介のタイムが訪れる。
さっきのでつっこむことを諦めてしまったのか、神楽先輩も静かに腕を組んでいる。
まだ続くのか……ってことは次の順番ってもしかして。
「ふむ。いい加減、自己紹介も飽きて来たな」
ストレートすぎるコメントが飛んできた。
「ちょっと、二千翔君っ!」
「会議は一時間までというのが最も効率がいいからな。サクッと行こうか。如月二千翔、二年、平和と混沌を愛してます。はい、次、こまり君」
「は? え? いや何その平和と混沌って。その主張矛盾して……」
「ほらほら、時間、時間」
「ぐうう……誰のせいで、つっこみを入れたくなったと……っ一宮こまり、同じく二年! 入部理由は神楽先輩に同じく! 以上! 次!」
もういい! あとはどうにでもなれ!
私は会話のボールを乱雑に投げた。次の受け手は隣に座る女の子。一瞬びくりと肩を跳ねさせたかと思うと、泣き出しそうな声で自己紹介を始めた。
「いいいいっ一年生です、立秋寺八雲! あのっ、そのっ、お手柔らかにお願いしますううぅ……!」
この世の終わりのような悲鳴が部屋に響いた。
……これまた違った方向で、個性が強い子来たなー。
「あれっ? えっ? まだ自己紹介続いてます? なんで……? これ以上私、喋ることとか無っ……」
「あーいやいや、違うよ? 隣の彼が起きないだけ」
いよいよ涙を零しそうな彼女に、ニコニコしながら二千翔君がフォローを入れる。
隣の彼。
みんなの視線が、机に枕をセットして、勝手に夢の国の住人になっている彼に向かう。
「すぴー」
寝ている。
確かに寝ている。
……え、ここ一応学校だよね?
さすがに会長も、その露骨な光景に少しだけ判断を鈍らせた。
「ふむこれは……」
「困ったね」
四季先輩がそう言った瞬間。
「お任せください、兄様」
きらりと目を光らせたみーくんが、どこから見つけたのか冊子を丸めて立ちあがる。
そして寝ている彼の元へ近づき、まるで某害虫を倒すかのように振り上げ――。
ポスン。
「?」
「っ!?」
一同が息を呑んで見守る中、みーくんの一撃は空振りに終わった。
再び冊子を振り上げようとしたが、びくともしない。
寝ているはずの彼が、その冊子を片手で押さえていたのだ。
「んもー、そんなの人に向けたら危ないでしょ? みーくん」
そう言って、彼はようやく枕から顔を上げた。
「あー……自己紹介だっけ? 九重夜月、一年。ここなら寝ててもいいかなって思って入部しました……夢の中で活動出来るっていいよね……」
そう言い残すと、彼は再び枕に顔をうずめた。
「おい! 勝手に僕を『みーくん』と呼ぶな! おい! 聞け!」
それからは、みーくんが何を言っても反応することはなかった。
でも、この流れで自己紹介したってことは、一応話は聞いていたのかな?
静まり返った空気の中、みーくんは小さく呟いた。
「……兄様、僕、あいつに負けた気がします」
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
出戻り娘と乗っ取り娘
瑞多美音
恋愛
望まれて嫁いだはずが……
「お前は誰だっ!とっとと出て行け!」
追い返され、家にUターンすると見知らぬ娘が自分になっていました。どうやら、魔法か何かを使いわたくしはすべてを乗っ取られたようです。
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる