第25文化部――活動内容、未定。

椿谷あずる

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19.わりと強引な男

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 つい、いつぞやの仕返しのつもりで、唐突に問題を投げてみたわけだけど、この場合それは失敗だったのかもしれない。

「なるほど。僕の出番か」

 そう答えた彼の表情は、明らかに私達の抱えるそれとは別物だった。
 それはまるで水を得た魚のような。

「……二千翔君、まさかとは思うけど、危険なことは考えてないよね?」
「危険? とんでもない。僕はただ問題に対して解法を探す、真っ直ぐな生徒のそれだよ」

 それとは? 分からない。
 でも、笑顔で一番怖いタイプの返答が返ってきた気がする。
 私は七海君と顔を見合わせた。

「一応、聞くね。どうするつもり?」
「簡単な話さ。彼らの弱点を突くだけ」

 弱点。
 その響きがすでにブラック。

「ねぇ、それってつまり――」
「うるさいのを注意してもダメなら、静かにしないと困る理由を作ればいい」

 言ってることは分かるけど、絶対ロクなことじゃない。

===

 数分後。
 私達は図書室の奥から静かに様子を見守っていた。
 お喋りグループは相変わらず盛り上がっている。
 そんな中、二千翔君はスッと立ち上がると、まるで何気ない通りすがりのように近づいていった。

「彼……行ったね」
「な、何する気かな……」

 二千翔君がテーブルの脇を通り過ぎる。そして。
 コトッ。

「あっ、今!」
「何か落としましたね」

 彼はさりげなく、ポケットから何かを落としていた。
 黒いスマホのようなものが、床に置き去りにされる。

「ん? 何これ……ボイスレコーダー?」

 しばらくして、お喋り女子の一人がそれに気付いて拾い上げた。

「えー、なになに?」
「面白そうじゃん。再生してみよーよ」

 そう言って、グループの一人が興味本位でそれを押した。
 ピッ。

『それって校則のどこに書いてあるんですかー?』
『やばー! なにその動画ー面白ー!』

 軽快な電子音が響いたかと、図書室に彼らの声が大音量で流れた。
 ――そう、さっきまでの会話の録音である。

「え、これ、誰が録ってたの!?」
「ちょ、やめろよマジで!?」
「怖っ!」
「盗聴じゃん! 誰だよ」

 瞬く間に慌てふためくお喋り集団。
 焦った彼らは周囲の視線に気づく。
 図書室の生徒たちが、一斉に彼らの様子を見ていた。軽くホラー。
 その状況にさすがに薄気味悪さを感じたのか、彼らは若干青ざめて荷物をまとめ始めた。

「ちょ、帰ろ……やべぇ……」
「そのレコーダー気持ち悪いって! 置いてけ!!」

 彼らがそそくさと図書室を出ていくのを確認してから、二千翔君は落ち着いた動作で、その場に捨て置かれたレコーダーを拾い上げた。
 スイッチを切って、満足げに微笑む。

「ふう。静かになったね」

 怖い笑顔No.1殿堂入り確定。

「な、なんか……えげつない方法ですね」
「いつから録音してたの? それ、セーフなの?」
「セーフだよ。知らない間に勝手にレコーダーの録音ボタンが押されてて、それを偶々この机の下に落としてしまっただけだから」
「偶々で片付けるんだ……」

 七海君が苦笑してる横で、私は小声でため息をついた。
 なんというか……結果的には成功してしまったのが複雑だ。

 会長が微妙な顔で頷く。

「生徒会目安箱・図書室でうるさい生徒がいる問題、ひとまず完了だな」
「完了って言っていいんですかね……?」

 私の疑問をよそに、みーくんのページをめくる音だけが心地よく響いていた。
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