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2-2 契約内容
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▽▽▽
夕食の用意が出来たとメイドに呼ばれて晩餐の席へ向かう。
「貴方を愛さない」という取り決めなので、嫌がらせの為にわざと十分ほど遅れて行ってみたが、ペイトンは文句をつけなかった。
ペイトンの方はこちらを愛して大切にする設定なので、ちゃんと演じる気があるのね、とアデレードは少し感心した。
なので席に着くと早々に、
「これ、書面に起こしました」
と契約書を差し出した。
十人は座れるテーブルの端と端に向かい合い座っているため、控えていたジェームスがアデレードから契約書を受け取りペイトンに渡した。
「本当に書面にしたのか……」
「はい、口約束は信用ならないので」
とさらりとアデレードが答えると、
「なんだ。僕が信用に値しない人間だということか」
ペイトンが急に突っかかってくる。
「え、いえ、貴方のことは信用に値するかどうかさえ、そもそも知りません。口約束をして嫌な目に遭ったことがあるので、自分の経験から学んだ結論ですよ」
アデレードが平然と答えると、ペイトンはぐぬぬっと言葉に詰まった。
ペイトンは五つも歳下の娘にいちいち目くじらをたてている自分に恥じいる気持ちが急速に芽生えた。
ジェームスが言う通り、もう結婚しているのだし確かに往生際が悪すぎる。
ペイトンは大人しく契約書に目を通した。
形式に則った書式。それらしい法律用語で認められている。かなり達筆な文字だ。
「違約条項が空白になっているが?」
「はい、契約違反をした場合の罰則についてはまだ話し合っていませんでしたので、私が勝手に決めるわけにはいかないでしょう? どうします?」
「……罰則なんて必要だろうか」
「必要です」
アデレードが躊躇いなく言うのでペイトンは閉口した。
これまでペイトンに関わってくる女性は、仕事関係か、恋情で近寄ってくる相手だった。
いずれもペイトンが強い立場だったから、面と向かって反対意見を言われたことなどない。
振った後逆上してくる令嬢はいたが、こうも冷静に反発されると面食らってしまう。
「契約って通常違約条項を折り込むものではないですか? でないと好き放題違反できてしまいますし」
「わかった。だが、この契約に関して何がどう違反か決定するのは難しいのではないか。あ、愛するとかそんなこと明確な答えがあるわけではないからな」
ペイトンが若干頬を紅潮させて告げる。
今の会話にそんな要素があったか謎だがアデレードは構わず続けた。
「そうですね。では第三者に今の態度は契約違反に該当するか判定してもらいましょう。違反する都度ポイントが加算されていく方式で、一年後ポイントの少ない方が勝ちです。罰則はどうします? 違約金というのも、パッしませんよね。もっと絶対に違反したくない、と思える罰則でないと。負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くとかはよくある話ですけど、流石にざっくりしすぎて怖すぎですし……負けた方が勝った方の喜ぶことを一つ考えてしてあげるのはどうですか? 負けた方が提案するので酷いことにはならないでしょうし、もちろん勝った方が喜ばなければやり直しで。そのやり直しもあまり続くようなら第三者に判断を仰ぎ、現実的な落とし所を見つける」
アデレードは、思いつくままにペラペラ喋ってみたものの、言い終えた後で、契約とはもっとシビアなものではないか、と思った。
違反した方が悪いのだから、勝った方の言うことなんでも聞け! で良かった気がしてきた。
何故こんなまどろっこしいことを提案してしまったかというと、罰則を受けるのは十中八九ペイトンなのであまり無茶をいうのも可哀想か、と変な同情心が湧いたのだ。
「……わかった。だが、その第三者というのは?」
ペイトンが口を開く。
「ジェームスさんで宜しいのではないですか? 無駄なお仕事が増えて申し訳ないですが」
「ジェームスは僕の執事だぞ」
「えぇ、でも先程も公平に判断して頂けましたし。明らかな不正を感じましたら、変更を希望致します」
「……わかった」
この人殆ど「わかった」しか言っていないけどいいのかしら? とアデレードは思ったが、面倒くさいので敢えて口にはしなかった。
「では、違約条項を書き加えて契約書を完成させます。ジェームスさんも宜しくお願いしますね」
「畏まりました」
ジェームスが一礼する。
同時に、頃合いを見計らっていたメイド達が食事を運びはじめた。
アミューズからカフェ・ブティフールまで、アデレードの好みのものばかりだった。
いくら愛され妻契約したとはいえ、事前に調べていなければ用意できるわけはない。
つまりこれは契約以前から手配されていた。
恐らくジェームスの計らいなのだろう。主人が歓迎しない花嫁でも礼儀を尽くしてもてなす。
公平な第三者として彼を抜擢したのは間違いじゃなかったな、とアデレードは思った。
だが、その判断は良い意味で外れた。
「旦那様、罰則のポイント一点ということで宜しいですね」
ジェームスが静かに口を開く。
「え」
「え」
アデレードとペイトンの言葉が重なった。
「会話のリードもなく、終始無言で食事を終えてしまうとは、どう考えても契約違反でしょう」
ジェームスが嗜めるように言う。
特にこちらが不快感を露わにしたわけでもないし、食事中に会話がないことくらいで違反点を加算するのは厳しすぎないか、とアデレードは思った。
何故なら、レイモンドはいつもそんな風だったから。
「まだ契約書にサインしていないだろ」
「契約云々以前に人としてどうかと思いますよ。こういう場で会話をリードするのは男性のマナーですから」
ジェームスがため息交じりに言う。
確かに食事中に全くの無言でいることは不作法かもしれない。
アデレードは、ペイトンとジェームスのやりとりをぼんやりした気持ちで見つめた。
レイモンドは人前ではにこやかで話題豊富に会話を進めるが、本当はそれほど話好きじゃなく、だから二人の時は沈黙であることが多かった。
それを私にだけ気を許した本音の姿を見せてくれている、と嬉しく感じていた。
思い返せば滑稽すぎて笑ってしまう。
「急に会話と言われても、僕は彼女と会ったばかりなんだ」
「仕事では初対面の女性でも普通に話しているでしょうに」
「彼女は仕事相手じゃないだろう! 僕の、つ、妻なんだぞ!」
「いや、だったらむしろもっと積極的に話し掛けてくださいよ」
「大丈夫です。旦那様が仰る通りまだ契約書に署名していないですから」
アデレードはペイトンを庇う気は毛頭なく、二人の会話を聞いていると過去の自分に対していたたまれない気持ちになるので止めた。
だが、
「奥様はお優しいですね」
ジェームスは感心して、ペイトンはあんぐり口を開いたまま黙った。
ジェームスはいいとして、ペイトンの反応の意味が全く分からない。
噂を聞く限りでは上から目線で不遜な態度を取るタイプだと想像していたが、そんな風でもない。
反応が独特すぎてこれはこれで厄介だが。
「いえ、ではわたしは部屋で契約書を完成させます。後ほど侍女に届けさせますので署名お願いします」
アデレードはチラッとペイトンを見て立ち上がるが返事が返らず固まったままだ。
取り敢えず、ジェームスはこちらの味方らしいので、放っておいても契約書を渡せば無理やりサインを書かせてくれるだろう、とアデレードはそのまま食堂を後にした。
夕食の用意が出来たとメイドに呼ばれて晩餐の席へ向かう。
「貴方を愛さない」という取り決めなので、嫌がらせの為にわざと十分ほど遅れて行ってみたが、ペイトンは文句をつけなかった。
ペイトンの方はこちらを愛して大切にする設定なので、ちゃんと演じる気があるのね、とアデレードは少し感心した。
なので席に着くと早々に、
「これ、書面に起こしました」
と契約書を差し出した。
十人は座れるテーブルの端と端に向かい合い座っているため、控えていたジェームスがアデレードから契約書を受け取りペイトンに渡した。
「本当に書面にしたのか……」
「はい、口約束は信用ならないので」
とさらりとアデレードが答えると、
「なんだ。僕が信用に値しない人間だということか」
ペイトンが急に突っかかってくる。
「え、いえ、貴方のことは信用に値するかどうかさえ、そもそも知りません。口約束をして嫌な目に遭ったことがあるので、自分の経験から学んだ結論ですよ」
アデレードが平然と答えると、ペイトンはぐぬぬっと言葉に詰まった。
ペイトンは五つも歳下の娘にいちいち目くじらをたてている自分に恥じいる気持ちが急速に芽生えた。
ジェームスが言う通り、もう結婚しているのだし確かに往生際が悪すぎる。
ペイトンは大人しく契約書に目を通した。
形式に則った書式。それらしい法律用語で認められている。かなり達筆な文字だ。
「違約条項が空白になっているが?」
「はい、契約違反をした場合の罰則についてはまだ話し合っていませんでしたので、私が勝手に決めるわけにはいかないでしょう? どうします?」
「……罰則なんて必要だろうか」
「必要です」
アデレードが躊躇いなく言うのでペイトンは閉口した。
これまでペイトンに関わってくる女性は、仕事関係か、恋情で近寄ってくる相手だった。
いずれもペイトンが強い立場だったから、面と向かって反対意見を言われたことなどない。
振った後逆上してくる令嬢はいたが、こうも冷静に反発されると面食らってしまう。
「契約って通常違約条項を折り込むものではないですか? でないと好き放題違反できてしまいますし」
「わかった。だが、この契約に関して何がどう違反か決定するのは難しいのではないか。あ、愛するとかそんなこと明確な答えがあるわけではないからな」
ペイトンが若干頬を紅潮させて告げる。
今の会話にそんな要素があったか謎だがアデレードは構わず続けた。
「そうですね。では第三者に今の態度は契約違反に該当するか判定してもらいましょう。違反する都度ポイントが加算されていく方式で、一年後ポイントの少ない方が勝ちです。罰則はどうします? 違約金というのも、パッしませんよね。もっと絶対に違反したくない、と思える罰則でないと。負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くとかはよくある話ですけど、流石にざっくりしすぎて怖すぎですし……負けた方が勝った方の喜ぶことを一つ考えてしてあげるのはどうですか? 負けた方が提案するので酷いことにはならないでしょうし、もちろん勝った方が喜ばなければやり直しで。そのやり直しもあまり続くようなら第三者に判断を仰ぎ、現実的な落とし所を見つける」
アデレードは、思いつくままにペラペラ喋ってみたものの、言い終えた後で、契約とはもっとシビアなものではないか、と思った。
違反した方が悪いのだから、勝った方の言うことなんでも聞け! で良かった気がしてきた。
何故こんなまどろっこしいことを提案してしまったかというと、罰則を受けるのは十中八九ペイトンなのであまり無茶をいうのも可哀想か、と変な同情心が湧いたのだ。
「……わかった。だが、その第三者というのは?」
ペイトンが口を開く。
「ジェームスさんで宜しいのではないですか? 無駄なお仕事が増えて申し訳ないですが」
「ジェームスは僕の執事だぞ」
「えぇ、でも先程も公平に判断して頂けましたし。明らかな不正を感じましたら、変更を希望致します」
「……わかった」
この人殆ど「わかった」しか言っていないけどいいのかしら? とアデレードは思ったが、面倒くさいので敢えて口にはしなかった。
「では、違約条項を書き加えて契約書を完成させます。ジェームスさんも宜しくお願いしますね」
「畏まりました」
ジェームスが一礼する。
同時に、頃合いを見計らっていたメイド達が食事を運びはじめた。
アミューズからカフェ・ブティフールまで、アデレードの好みのものばかりだった。
いくら愛され妻契約したとはいえ、事前に調べていなければ用意できるわけはない。
つまりこれは契約以前から手配されていた。
恐らくジェームスの計らいなのだろう。主人が歓迎しない花嫁でも礼儀を尽くしてもてなす。
公平な第三者として彼を抜擢したのは間違いじゃなかったな、とアデレードは思った。
だが、その判断は良い意味で外れた。
「旦那様、罰則のポイント一点ということで宜しいですね」
ジェームスが静かに口を開く。
「え」
「え」
アデレードとペイトンの言葉が重なった。
「会話のリードもなく、終始無言で食事を終えてしまうとは、どう考えても契約違反でしょう」
ジェームスが嗜めるように言う。
特にこちらが不快感を露わにしたわけでもないし、食事中に会話がないことくらいで違反点を加算するのは厳しすぎないか、とアデレードは思った。
何故なら、レイモンドはいつもそんな風だったから。
「まだ契約書にサインしていないだろ」
「契約云々以前に人としてどうかと思いますよ。こういう場で会話をリードするのは男性のマナーですから」
ジェームスがため息交じりに言う。
確かに食事中に全くの無言でいることは不作法かもしれない。
アデレードは、ペイトンとジェームスのやりとりをぼんやりした気持ちで見つめた。
レイモンドは人前ではにこやかで話題豊富に会話を進めるが、本当はそれほど話好きじゃなく、だから二人の時は沈黙であることが多かった。
それを私にだけ気を許した本音の姿を見せてくれている、と嬉しく感じていた。
思い返せば滑稽すぎて笑ってしまう。
「急に会話と言われても、僕は彼女と会ったばかりなんだ」
「仕事では初対面の女性でも普通に話しているでしょうに」
「彼女は仕事相手じゃないだろう! 僕の、つ、妻なんだぞ!」
「いや、だったらむしろもっと積極的に話し掛けてくださいよ」
「大丈夫です。旦那様が仰る通りまだ契約書に署名していないですから」
アデレードはペイトンを庇う気は毛頭なく、二人の会話を聞いていると過去の自分に対していたたまれない気持ちになるので止めた。
だが、
「奥様はお優しいですね」
ジェームスは感心して、ペイトンはあんぐり口を開いたまま黙った。
ジェームスはいいとして、ペイトンの反応の意味が全く分からない。
噂を聞く限りでは上から目線で不遜な態度を取るタイプだと想像していたが、そんな風でもない。
反応が独特すぎてこれはこれで厄介だが。
「いえ、ではわたしは部屋で契約書を完成させます。後ほど侍女に届けさせますので署名お願いします」
アデレードはチラッとペイトンを見て立ち上がるが返事が返らず固まったままだ。
取り敢えず、ジェームスはこちらの味方らしいので、放っておいても契約書を渡せば無理やりサインを書かせてくれるだろう、とアデレードはそのまま食堂を後にした。
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