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第62話
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ツガルがそうはさせないと突撃銃で牽制しようとするが、それより前に追いついたマルメルがビルの上から弾丸をばら撒く。 咄嗟に躱して射線から外れるがフカヤのフォローが封じられ、ツガルは小さく舌打ち。
フカヤはどうにか逃げようとするが既にふわわの間合いなので躱しようがない。
やられると諦めかけた瞬間だった。 ふわわが信じられないほどの素早い動きで振り返ると叩きつけるようにダガーを一閃。 キンと金属音がして彼女の左右に何かが着弾した。
『みーつけた』
ふわわがそう呟くとフカヤを無視して跳躍。 弾丸が飛んできたであろう方向へと消えていった。
たった今、目の前で起こった事に関してフカヤは凄まじい衝撃を受けており、動揺で何もできずにその背を見送る事しかできなかった。 どちらにせよ武器は弾切れだったので追撃は無理だったのだが、そんな事が気にならなくなるほどにそれは衝撃的だったのだ。
あの瞬間、フカヤはやられたと確信していたが、それを救ったのはセンドウの狙撃だった。
そこは理解できる。 問題はその後だ。 ふわわは狙撃によって放たれたライフル弾をダガーで切り払った。 弓矢や榴弾ならできなくはないだろうが、目視が不可能な速度で飛んでくる銃弾を叩き落とす。
文字通りの神業だ。 少なくともフカヤには逆立ちしても不可能だろう。
そもそもライフル弾をダガーで叩き落すなんて発想自体が出てこない。
「フカヤ! 行かせんな! あいつセンドウさんの方へ行く気だぞ!」
ツガルの言葉に正気を取り戻したフカヤは慌てて、マガジンを交換した拳銃を向けようとしたがふわわは既に射程外だった。 フカヤは小さくクソと毒づいた後、迷彩機能を使って彼女の背を追おうとしたが、進路上を薙ぐように銃弾が地面に着弾。
『おっと、悪いが少しの間は俺に付き合って貰うぜ』
マルメルだ。 彼は両手の突撃銃と腰にマウントされた短機関銃の四つの銃口を二人に向ける。
「二対一だぜ。 抑えられると思ってんのか?」
『短時間ならな。 俺がやられてもふわわさんがそっちのスナイパーを仕留めてくれるだろうから、俺と交換って事になりそうだ。 ただ、そっちにとってバックアップが消えるのはきついんじゃないか?」
マルメルのいう通りだった。
センドウが居なくなれば、ヨシナリが自由になるのでツガル達は一方的に攻撃される事となる。
この戦闘においてスナイパーの存在は最も重要といえるだろう。 地下に逃げ込むという手もあるが、この廃都市というステージは厄介なギミックが搭載されている。 廃墟なのであちこち崩れているのは見れば分かるが、地下道ともなるとそれが顕著で道が塞がっている場合があるのだ。
しかも塞がっている場所は完全にランダム。 加えて、容易に崩す事も可能なので、地形をある程度理解していれば地上から建物を破壊して意図的に崩落を起こさせて生き埋めにする事も出来る。
その為、地下は一時的な避難場所としては有用だが、長時間留まる事は推奨されない。
これが誰も積極的に地下を使わない最大の理由だ。
その為、地下へと逃げ込むのは本当に最後の手段となる。
だから、センドウがやられると非常に不味いのだ。
ふわわを追いたいがマルメルが邪魔だった。 マルメルはとにかく弾幕を張るタイプの装備なので足止めをやらせればこのフィールド内で最も優秀といえる。
何しろ当てなくてもいいのだから。 敵の進路上にひたすらに弾をばら撒く。
簡単な仕事だ。 加えて背にくっついているバックパックは腰の短機関銃へ自動で弾を送り込む装置だ。 自動給弾システム。
ブロック式の中身が減ったら空になったブロックを自動でパージして使えば使うほどに機体が軽くなる仕組みだ。 一時、ツガルも使っていたので便利さは良く知っている。
加えてマルメル自身の技量も高い。 いや、この場合は洞察力ともいえる。
彼は常にフカヤが視界に入るような位置に陣取り、彼が迷彩機能を使用しても見失わないようにしているのだ。 迷彩機能は姿は隠すが移動の際に発生する土煙や痕跡は消せないので完全に捕捉された状態だと効果を十全に発揮できない。
暗殺者は姿が見えないからこそ力を最大限に発揮できるのであって、奇襲が通用しない今はほぼ機能していないと言っていいだろう。 つまり、マルメルをどうにかしないとふわわを追う事が出来ないという事だ。
「……ちょっとやべえな」
ツガルはそう呟いた。
追ってこない。 追いついたマルメルが敵の足止めをしてくれているのだろう。
内心で感謝しながらふわわは補足した敵のスナイパーの下へと急ぐ。
距離はあったが、もう逃がさない。 最短のルートを行く為、ビルの屋上から屋上へと飛び移る。
狙われる心配はしていない。 こっちにはヨシナリが居るからだ。
彼もセンドウの居場所に当たりを付けているのか、何度か後方から隠れていると思われる場所に狙撃が飛ぶ。 それによりセンドウはふわわを迂闊に狙えないのだ。
下手に仕掛けるとヨシナリに捕捉される。 かといって放置するとふわわの接近を許す。
完全に詰んでいた。 この時点でセンドウを仕留める事に関しては問題ないと確信しており、後はどれだけ早く処理できるかの違いだ。 可能な限り早く片付けて一人で敵を引き付けているマルメルの援護に戻らなければならない。
「少し急がないとね」
ふわわは小さくそう呟き。 センドウの機体を視界に捉えた。 破壊されたビルの中。
フカヤと同じ灰色なのは周囲のビルと似た色にして発見され辛くする為だろう。
装備は大型の狙撃銃。 左右の腰には拳銃が見えたが、他には見当たらない。
接近された際の備えはしているだろうが、狙撃銃だけでも破壊できれば脅威度はほぼなくなる。 ふわわは冷静に冷徹に脳裏で攻撃を組み立て、スラスターを全開にして加速。
センドウもふわわに気付いたのかすっと狙撃銃を構えて発砲するが、引き金を引くタイミングまで見えるこの距離で当たる訳がない。 最小の動作で回避。
当たらないと判断したセンドウは狙撃銃を投げ捨て腰の二丁拳銃を抜いて連射しつつ隠れていたビルから飛び降りた。 足のスラスターを器用に噴かして後退。
即座にビルの陰に入る。 常に敵の視界から消える立ち回り。
ふわわは素直に逃げるのが上手いと賞賛を送る。
動揺も見えない点からも相手が冷静である事が見て取れた。
フカヤはどうにか逃げようとするが既にふわわの間合いなので躱しようがない。
やられると諦めかけた瞬間だった。 ふわわが信じられないほどの素早い動きで振り返ると叩きつけるようにダガーを一閃。 キンと金属音がして彼女の左右に何かが着弾した。
『みーつけた』
ふわわがそう呟くとフカヤを無視して跳躍。 弾丸が飛んできたであろう方向へと消えていった。
たった今、目の前で起こった事に関してフカヤは凄まじい衝撃を受けており、動揺で何もできずにその背を見送る事しかできなかった。 どちらにせよ武器は弾切れだったので追撃は無理だったのだが、そんな事が気にならなくなるほどにそれは衝撃的だったのだ。
あの瞬間、フカヤはやられたと確信していたが、それを救ったのはセンドウの狙撃だった。
そこは理解できる。 問題はその後だ。 ふわわは狙撃によって放たれたライフル弾をダガーで切り払った。 弓矢や榴弾ならできなくはないだろうが、目視が不可能な速度で飛んでくる銃弾を叩き落とす。
文字通りの神業だ。 少なくともフカヤには逆立ちしても不可能だろう。
そもそもライフル弾をダガーで叩き落すなんて発想自体が出てこない。
「フカヤ! 行かせんな! あいつセンドウさんの方へ行く気だぞ!」
ツガルの言葉に正気を取り戻したフカヤは慌てて、マガジンを交換した拳銃を向けようとしたがふわわは既に射程外だった。 フカヤは小さくクソと毒づいた後、迷彩機能を使って彼女の背を追おうとしたが、進路上を薙ぐように銃弾が地面に着弾。
『おっと、悪いが少しの間は俺に付き合って貰うぜ』
マルメルだ。 彼は両手の突撃銃と腰にマウントされた短機関銃の四つの銃口を二人に向ける。
「二対一だぜ。 抑えられると思ってんのか?」
『短時間ならな。 俺がやられてもふわわさんがそっちのスナイパーを仕留めてくれるだろうから、俺と交換って事になりそうだ。 ただ、そっちにとってバックアップが消えるのはきついんじゃないか?」
マルメルのいう通りだった。
センドウが居なくなれば、ヨシナリが自由になるのでツガル達は一方的に攻撃される事となる。
この戦闘においてスナイパーの存在は最も重要といえるだろう。 地下に逃げ込むという手もあるが、この廃都市というステージは厄介なギミックが搭載されている。 廃墟なのであちこち崩れているのは見れば分かるが、地下道ともなるとそれが顕著で道が塞がっている場合があるのだ。
しかも塞がっている場所は完全にランダム。 加えて、容易に崩す事も可能なので、地形をある程度理解していれば地上から建物を破壊して意図的に崩落を起こさせて生き埋めにする事も出来る。
その為、地下は一時的な避難場所としては有用だが、長時間留まる事は推奨されない。
これが誰も積極的に地下を使わない最大の理由だ。
その為、地下へと逃げ込むのは本当に最後の手段となる。
だから、センドウがやられると非常に不味いのだ。
ふわわを追いたいがマルメルが邪魔だった。 マルメルはとにかく弾幕を張るタイプの装備なので足止めをやらせればこのフィールド内で最も優秀といえる。
何しろ当てなくてもいいのだから。 敵の進路上にひたすらに弾をばら撒く。
簡単な仕事だ。 加えて背にくっついているバックパックは腰の短機関銃へ自動で弾を送り込む装置だ。 自動給弾システム。
ブロック式の中身が減ったら空になったブロックを自動でパージして使えば使うほどに機体が軽くなる仕組みだ。 一時、ツガルも使っていたので便利さは良く知っている。
加えてマルメル自身の技量も高い。 いや、この場合は洞察力ともいえる。
彼は常にフカヤが視界に入るような位置に陣取り、彼が迷彩機能を使用しても見失わないようにしているのだ。 迷彩機能は姿は隠すが移動の際に発生する土煙や痕跡は消せないので完全に捕捉された状態だと効果を十全に発揮できない。
暗殺者は姿が見えないからこそ力を最大限に発揮できるのであって、奇襲が通用しない今はほぼ機能していないと言っていいだろう。 つまり、マルメルをどうにかしないとふわわを追う事が出来ないという事だ。
「……ちょっとやべえな」
ツガルはそう呟いた。
追ってこない。 追いついたマルメルが敵の足止めをしてくれているのだろう。
内心で感謝しながらふわわは補足した敵のスナイパーの下へと急ぐ。
距離はあったが、もう逃がさない。 最短のルートを行く為、ビルの屋上から屋上へと飛び移る。
狙われる心配はしていない。 こっちにはヨシナリが居るからだ。
彼もセンドウの居場所に当たりを付けているのか、何度か後方から隠れていると思われる場所に狙撃が飛ぶ。 それによりセンドウはふわわを迂闊に狙えないのだ。
下手に仕掛けるとヨシナリに捕捉される。 かといって放置するとふわわの接近を許す。
完全に詰んでいた。 この時点でセンドウを仕留める事に関しては問題ないと確信しており、後はどれだけ早く処理できるかの違いだ。 可能な限り早く片付けて一人で敵を引き付けているマルメルの援護に戻らなければならない。
「少し急がないとね」
ふわわは小さくそう呟き。 センドウの機体を視界に捉えた。 破壊されたビルの中。
フカヤと同じ灰色なのは周囲のビルと似た色にして発見され辛くする為だろう。
装備は大型の狙撃銃。 左右の腰には拳銃が見えたが、他には見当たらない。
接近された際の備えはしているだろうが、狙撃銃だけでも破壊できれば脅威度はほぼなくなる。 ふわわは冷静に冷徹に脳裏で攻撃を組み立て、スラスターを全開にして加速。
センドウもふわわに気付いたのかすっと狙撃銃を構えて発砲するが、引き金を引くタイミングまで見えるこの距離で当たる訳がない。 最小の動作で回避。
当たらないと判断したセンドウは狙撃銃を投げ捨て腰の二丁拳銃を抜いて連射しつつ隠れていたビルから飛び降りた。 足のスラスターを器用に噴かして後退。
即座にビルの陰に入る。 常に敵の視界から消える立ち回り。
ふわわは素直に逃げるのが上手いと賞賛を送る。
動揺も見えない点からも相手が冷静である事が見て取れた。
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