Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第103話

 ログイン。 
 これからイベントだ。 臨時メンバー二人による大規模ユニオン戦。
 不安しかないが、助っ人が充分に強いので運が良ければ優勝も狙える。
 
 勝算があるというのは良い。 少なくともモチベーションを高く保つには有用だ。
 既に入場が始まっているのでイベント用のフィールドへ移動。
 入ると強制的に機体に搭乗する事になるのでヨシナリはホロスコープに乗った状態で戦場に降り立つ。

 星座盤に割り当てられた場所は標高の高い山の頂上だ。 
 周囲をぐるりと見回すが他の機体の姿は見えない。 
 持ってきた狙撃銃を構えてスコープシステムを起動。 

 ――あまりいい位置じゃないな。

 山の頂上なので上からは丸見え。 下は一面に広がった森。
 所謂、岩山に近く木々も生えていないので、上手に隠れるなら少し降りるべきか。
 そんな事を考えながらヨシナリはウインドウを開いてルールの確認。
 
 このイベントは参加チーム二千五百。 
 全てのチームが枠を一杯に使っていないので約二万五千機の機体がこの広いフィールドで潰し合う事になる。 ちなみにこれはあくまで予戦。

 ここと似たような戦場が他にも無数にあるようだ。 
 その為、予戦でカナタの『栄光』と当たる可能性はそこまで高くない。
 で、その後の潰し合いは残り五チームになるまで続く。 勝利条件は残りが五チーム――要は二千四百九十五チームが全滅するまでに生き残っていればいい。

 一人でも生き残っていれば全滅扱いにはならないのでどんな状態でも大破していなければ予戦突破できる。 仮に撃墜されてもチームが無事ならそのまま本戦に進める訳だ。 
 三人だが、一番あっさりと脱落しそうなのが自分なのでヨシナリは気を引き締めないとなと考えているとユウヤがログイン。

 「ど、どうも。 今日はよろしくお願いします」
 「あぁ」

 ユウヤはあまり人と話すのが得意ではないのか態度は素っ気ない。
 挨拶を済ませた後、特に会話もなく互いに沈黙。 その間、ヨシナリはユウヤの機体を眺める。
 Aランクの特注品だけあって従来のトルーパーとはデザインのコンセプトが明らかに違う。

 機体名は「プルガトリオ」。
 黒よりの赤い機体は全身鎧のような印象受け、背中には本当に斬れるのかと疑いたくなるほどの肉厚な大剣。 
 変わった形状で刃の半ばに持ち手のような物が付いている。 見た感じ携行武装はそれだけのようだが、腕や足には何か仕込みがありそうな感じがしたので見た目通りではないのだろう。
 
 それともう一つ気になる存在が居る。 ユウヤの機体の脇に巨大な犬のような機体だ。 
 カテゴリーはエネミーになるのだが識別は友軍。 つまり味方だ。
 聞けばAI搭載の支援機らしい。 それなりに調べてきたヨシナリもこれは知らなかった。
 
 「それはユウヤさんの装備の一部なんですか?」
 「……俺の親友だ。 名前はアルフレッド」
 
 尋ねるとユウヤはざっくりとだが教えてくれた。 
 どうもAランクの特典で製作される機体オプションの一つとして提案された装備らしい。
 つまり市販品ではないかなりレアな武装となるが、運用するに当たってのハードルは非常に高い。

 まず手に入るのはAIのコアユニットと呼ばれる頭脳だけで他のパーツは自前で用意しなければならないのだ。 トルーパーと同じでフレーム、外装、武装等々、要するに二機分のパーツ負担がかかる。
 次にAIの学習機能だ。 学習型AIは最初は単純な攻撃等しかできないが戦闘を繰り返す事によって成長していく。 その為、まともに連携を取れるようになるまで根気よく育てなければならない。

 だが、そのハードルを克服した場合、凄まじい恩恵を与える。
 一機扱いで二機分の戦力運用ができるのだ。 ランク戦では実質二対一。
 
 ――ぶっ壊れ性能だろ。

 素直にヨシナリはそう思ったがそう美味しいばかりの話ではなくデメリットも同時に存在する。
 このアルフレッドという機体。 識別はエネミー・・・・である以上、撃破された場合そのまま消滅する。 AIのコアユニットだけは手元に残るが、破壊されればパーツはフレームも含めてすべてロストするのだ。 武器や装甲程度ならそこまで惜しいとは思えないが、フレームが消えると考えると軽々に投入する事は躊躇われる。 

 確かに素晴らしい性能ではあるが、気軽に使えるのかと聞かれるとヨシナリは躊躇してしまう。
 少なくともこんな撃破されるリスクが高いイベント戦には連れて来れない。
 その辺りのリスクを許容できるのはランカーの財力故か。 

 このアルフレッドというAIがどの程度強いのかは不明だが、わざわざ連れて来た所を見るとこのイベント戦を戦える程度には仕上がっているはずだ。 仮にそうでなかったとしても居るだけで戦略の幅が大きく広がる。 ユウヤはアルフレッドの背中を撫でており、アルフレッドは甘えるように頬をこすりつけていた。

 所詮、AIと思わなくもないがヨシナリから見た限り、ユウヤとアルフレッドの間には強固な信頼関係がある事を感じられ、そこには友情に似た大きな感情がある事が窺える。
 感情はさておき、ヨシナリからすれば嬉しい誤算だ。 味方は多い方が良いに決まっているのでどんな形でも頭数が増えるのはありがたい。

 そうこうしている内にラーガストもログイン。 
 以前のイベントで見た機体――エイコサテトラが現れた。
 薄緑の機体はデザイン的にも洗練されており、背中にある筒状のエネルギーウイング発生装置が六基に両腕のシールドとそれに格納されたブレードとエネルギーガン。 非常にシンプルだが、それ故に強い。

 この二人に任せておけばそうそう負ける事はないだろう。
 頼もしすぎて勝ってもあまり嬉しい戦力ではないが、ハイランカーの動きを間近で見る機会は滅多にない。 このチャンスを逃さずに動きを見て技術を盗んでやる。 ヨシナリは二人のハイランカーの背を見ながら強くそう思った。 
 
 不意にウインドウが表示される。 そろそろ時間だ。
 ユウヤの機体が立ち上がり、アルフレッドは威嚇するように小さく唸る。
 ラーガストの機体はウイングを展開してふわりと宙に浮かぶ。 同時にマップの表示に自機のセンサーに依存した索敵範囲が表示されそれに引っかかった敵機の反応が出現。

 多い上に近い。 
 ヨシナリは咄嗟に最大望遠にして敵機のいるであろう位置を見ると空間から滲み出るように複数のトルーパーが現れた。 恐らく最初からいたのだろうが、始まる直前までは認識できないようにされていたのだろう。 カウントダウンが始まる。 残り三十秒。

 「取り合えず俺は飛び回って敵を減らしながらターゲットが居るか調べる。 お前らはそれまで適当にやってろ」
 「俺は俺で周囲の掃除をしながら地上を探す。 ヨシナリだったな。 お前は隠れて見てるだけでいいぞ」
 「いやいや、勘弁してください。 俺も楽しませてもらいますよ」

 この会話だけでハイランカーは制御できない事を悟ったヨシナリは脳裏で生き残る戦い方を模索。
 連携は意識しない方がいい。 とにかく今は自分にやれる事をやる。
 残り二十秒。

 「付き合わせて悪いな」
 「あぁ、気にするな。 これは貸しだ」

 ――俺、完全に蚊帳の外だな……。

 二人の様子を見てヨシナリ内心で溜息を吐く。
 残り十秒。

 五、四、三、二、一――

 「行くぞ。 簡単にやられるなよ」

 ――ゼロ。

 イベント開始。
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