Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第562話

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 グロウモスは全肯定を求めている訳ではなかった。
 ただ、少しでも自分の判断を支持してくれる人が居ればいい。 
 そんな事を考えていた。 何故ならそれだけで引き金を引く指が軽くなるからだ。

 発射。 腐食弾は剥き出しになった反応炉に突き刺さる。
 即座に排莢して次弾を装填して撃つ、撃つ、撃つ。 
 持って来た腐食弾を全て叩きこんだ事で反応炉の表面がゆっくりと溶けだした。
 
 破壊されるまで少し時間があるので逃げたい奴はその間に逃げればいい。
 グロウモスはやり切ったなと内心で呟いて弾切れになった拳銃を捨てる。
 やり切った事で少し満足してしまったのだ。 ヨシナリもいないしもういいかな?

 そんな事を考えていたら背後に気配。 敵機かと思ったが影のような機体はベリアルだ。

 「憧憬の獣よ。 貴様は務めを果たしたのだな」
 「ま、まぁ、なんとか、ね。 腐食液がアレを溶かすまで少し時間があるから、に、逃げるならい、今の内」
 
 ベリアルは表面がどろどろに溶け始めた反応炉を一瞥。
 
 「なるほど。 貴様は残るのか?」
 「つ、疲れちゃったしこ、今回はもういいかなって思ってる」

 グロウモスの言葉にベリアルは僅かな沈黙。

 「我が戦友、魔弾の射手はこんな時、どんな事を考えると思う?」

 ややあってそんな事を言い出した。 
 質問にグロウモスはヨシナリの事を考える。 こんな時、彼ならどうするだろうか?
 考えるまでもなかった。 逃げる。 

 何故なら『星座盤』のリーダーはどんな時でも最後の最後まで諦めない男だからだ。

 「その判断は尊重されるべきだが、貴様を送り出した我が戦友の意志は汲むべきではないか?」
 「……分かった。 間に合うかは分からないけど行こう」

 

 モニターの向こうでベリアルとグロウモスが後退を開始する。
 ヨシナリは映像をフォーカス。 反応炉へと。
 表面の浸食が済み、内部へと腐食液が浸潤している事が見て取れる。

 それに合わせて腐食部分から光が明滅。 この様子だと爆発まではそうかからない。
 
 「これで要塞は処理できると思うけど……」
 
 時間を見るとそろそろ十時間が経過しようとしていた。 
 もうそろそろ終わりが見えている。 このペースだと今回は初見で勝てるかもしれない。
 どう思うとマルメルに尋ねようとしたが、その姿はなかった。

 そういえばさっき疲れたから仮眠を取ると言ってログアウトしていたのだった。
 正直、ヨシナリもかなり疲れていたが、決着を見逃すのは嫌だったので居残っていたのだ。
 戦場の映像を何度も切り替え、最後は全体を俯瞰。 

 ――明らかにおかしい。

 これまでのイベント戦に比べると難易度――というよりはバランスがおかしかった。
 第一次防衛戦、侵攻戦と経験した身としてはそう感じざるを得なかったのだ。
 あの二つのイベントはクソのような難易度ではあったが、最初からそう設定されていた。

 プレイヤーのギリギリを試すような設計、難易度は明らかに計算されていたと感じる。
 だが、今回に関しては敵の構成の大半が有人機。 
 つまり、PvEではなくPvP――要はプレイヤー間の戦闘に近い形式になっている。

 加えて、エネミーと有人機が一切連動していない点も気になった。
 敵性トルーパーはエネミーに一切構わずに攻撃し、エネミーも敵性トルーパーを完全に無視した動き。
 お陰で戦艦の奪取や、要塞への侵入が容易に成った。 

 もう少し連携がしっかりしていたのならこうも簡単にいかなかっただろう。
 それ以前に基地の陥落すら見えていたはずだ。 
 だが、現実はどうだ? 現在、基地の主戦場は三層から四層辺りだった。

 イソギンチャクを繰り出した事で地上から一層までの制圧は容易ではあっただろうが、結果論ではあるかもしれないが敵側は与えられた強い手札を闇雲に切っているようにしか見えないのだ。
 もっと効果的に使えるタイミングはいくらでもあったように思う。 
 
 ――運営の方針が変わった?

 それとも管理している人間が変わったのか? 
 不明な点こそ多いが、総合的な難易度はこれまでで最低と言っていい。
 
 「……さっぱり分からん」

 そう呟き椅子に座って映像を切り替えるとちょうど反応炉が限界を迎えて爆発を起こしている所だった。 
 流石に逃げたメンバーは間に合わず、一人残らず蒸発。 当然ながらグロウモスとベリアルは間に合わなかった。 これで『星座盤』のメンバーは全滅だ。 

 爆発の火力はこうして俯瞰で見ると凄まじく、地上のエネミーもついでに焼き払った。
 結果的に防衛の助けにはなれたので悪い結果ではないと思いたい。
 次に考えるのは例の特殊機体だ。 間違いなく、第一次防衛戦でラーガストと戦った奴の同類だろう。

 凄まじい強さだった。 
 明らかにこちらを舐めた挙動、装備だったが、それを差し引いても仕留められたのは運も味方したからだ。 
 ふわわ並みの反応速度、Sランクの扱うジェネシスフレームと同水準のマシンスペック。
 
 空間転移に強力な武装。 どれを取ってもこれまで戦った相手の中でも最上級だ。
 ベリアルとの切り札である、合体を使ってもどうにか拮抗までしか持っていけなかった敵。
 可能であれば徹底的に叩き潰して勝鬨を上げたかったが、ベリアルがやってくれたのだ。

 ――今はこれで良しとしよう。

 だが、将来的には一対一で叩き潰してやる。 
 ヨシナリは脳裏で作成した「絶対に潰すリスト」にガリガリと書き込んで次に会う時を楽しみにしているからなと戦意を漲らせた。 

 最後に考えるのは反省点だ。 自分に何が足りなかったのか?
 端的にいうと全てだ。 プレイヤースキルもそうだが、今後もパンドラを扱っていくのならいい加減にジェネシスフレームが必要だった。

 戦い方自体は確立できているのだ。 だが、機体がそれに追いつかない。
 折角、仲間達が譲ってくれた強力な武装もそれを扱う為の下地がなければ宝の持ち腐れだ。
 特に合体時にはホロスコープの脆弱さが足を引っ張る形となっていたので、勝負を急ぐ結果となった。

 あれさえなければもっと敵の観察が進み、もう少し解像度を上げる事が出来たかもしれない。
 勝負にたらればは余り褒められた考えではないが、露骨に改善するべき問題があるとどうしてもそんな事を考えてしまうのだ。

 ヨシナリの現在のランクはC。 
 Pが手に入るランクには到達したが、まだまだ稼がなければならない。
 
 ――どちらにせよ今はキマイラ+でだましだましやっていくしかないか。

 小さく溜息を吐くとちょうど脱落した二人が戻って来た。
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