Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第604話

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 振り返って迎撃される所までは読んでいたが、ふわわの行動はヨシナリの思考の上を行っていた。
 驚くべき事に肘から先が分裂したのだ。 

 ――いや、違う。 強化装甲を部分的に外したのだ。

 分かり難かったか本来の手首は強化装甲内に収まっていたようだ。
 それにより小太刀を握った状態で肘から先だけ分裂するという凄まじい状態になっていた。
 可動域も広く、小太刀を逆手に持ったまま肘が真後ろに折りたたまれる。

 背後に跳ね上がって来た小太刀は蹴りを放ったヨシナリの膝を正確に串刺しにした。
 
 「嘘だろ!?」

 動揺はしたがこのまま押し切れる。 
 足のクレイモアを起爆――する前にふわわの強化装甲の肘部分が小さく爆発。
 分かれた肘が吹き飛ぶ。 ヨシナリの足を串刺しにしたまま。

 結果、吹き飛んだ腕に引っ張られて足の角度が強引に変えられ、ベアリング弾はあらぬ方向へと飛んでいき、変に力がかかった所為か膝から下が千切れ飛んだ。

 『ヨシナリ君って対応力も反応も良いけど、自分が攻撃される際はそっちに集中してまうからこうされると割と当たってくれるね?』

 ――クソが!

 そんな余裕すら見せてふわわが振り向きながらの抜刀からの斬撃。
 袈裟に両断する動きだ。 
 ヨシナリは舐めるなと内心で吼えながら推進装置を限界まで稼働させて姿勢を強引に修正。

 こっちだってふわわの太刀筋は何度も見て来たのだ。 
 袈裟の一撃に関しては高頻度で使っている事もあって対策は練り易い。
 ビビらずに対処できればどうにでもなる。 

 ――タイミングを見極めろ。 

 「ここぉ!」

 膝から下がなくなった足は使い物にならなくなったので残りを自切して軽量化。
 残った足の推力を全開にして跳ね上げる。 同時に肘を振り下ろし、ふわわの斬撃を挟んだ。
 膝と肘での白刃取り。 半分以上は運だったが、何とか成功した。

 流石にこれにはふわわも驚いて「嘘ぉ!?」と声を漏らす。
 賭けに勝った以上、次はヨシナリのターンだ。 胸部の装甲を展開。
 給排気口にエーテルを収束させる。

 「沈め! 光なき世界へ!!」

 発射。 収束したエーテル砲が至近距離でふわわに襲い掛かる。
 ふわわは咄嗟に太刀を手放して回避運動。 それでもこの距離では間に合わない。
 行けると手応えを感じたが、ふわわはエネルギーフィールドを展開。

 収束したエーテルの奔流を展開された防御力場が防ぐ。

 ――防御機構!?

 基本的にふわわの機体は機動性に振っているだけあって防御に関しては最低限だ。
 そもそも当たったら負けぐらいの気持ちでいるので、被弾はあまり想定していない。
 だからこそエーテルの砲を防げるほどの防御性能を見せたのは驚きだった。 

 至近距離ならマルメルの防御すら貫通する攻撃をどうやって防いでいるんだと展開されたフィールドにフォーカスすると謎が解けた。
 フィールドを局所展開する事で密度を極限まで高めているようだ。
 加えてヨシナリが胸部から放つ事を読んで防ぎに来た。 

 だが――

 「それがどうしたぁ!」

 フィールド展開には驚きはしたがそれだけだ。 
 半端な防御などこの闇の奔流で押し流してしまえばいい。 
 このまま消し飛ばしてやると出力を上げが、ふわわの強化装甲のエネルギー流動に変化。

 嫌な予感がしたので照射を中断して急上昇。 
 一瞬遅れてふわわの強化装甲が弾け飛び、ヨシナリの居た場所を次々と通り過ぎる。
 危ねぇと思いながらもステータスチェック。 

 現在、パンドラが稼働中なので時間経過で状態が悪くなっている。
 無茶な挙動をした所為かフレームのダメージが思った以上に酷い。
 両腕、右足喪失はエーテルで補填しているので今のところは問題はない。

 武装はアトルムは喪失、イラは地面に突き立てたまま。
 アシンメトリー、クルックスは健在。 
 ただ、フレームへのダメージによってレーザー誘導によるリロードは不可能。 
 
 クレイモアは片足残っている。 手札を確認した後はふわわの様子だ。
 強化装甲をパージした事で見慣れた状態になっているが、一部は装着したままだ。
 恐らくは外付けのジェネレーターを残したのだろう。

 機体に関してはエーテル砲によって装甲表面にダメージが目立つ。 
 エネルギー流動があちこちで滞っている所を見ると完全に防ぐ事は出来なかったようだ。

 一瞬でそれだけの思考を巡らせた後、クルックスでバースト射撃。
 ふわわは当然のように小太刀で受けるが本命は別だ。 
 
 ――唐突だが殺気というものは何だろうか? 

 そう尋ねられればヨシナリとしては漫画とかに出て来る気配の類としか答えられないが、ふわわを仕留めるに当たって無視できないファクターだ。
 何故なら比喩ではなく本当に感知して攻防に利用しているのだから、いい加減に彼女に備わっている謎のセンサーを攻略しておかないと今回だけでなく今後の勝敗に響く。

 時間はあった。 そして相談できる相手もいた。
 訓練中の話だ。 ヨシナリはモタシラにどうすれば殺気を消せるのかと尋ねた。
 それに対するアンサーはなるほどと思える内容だった。 

 モタシラのくれた答えは「意識の焦点をふわわに合わせない」だ。
 彼女はどうやってかは不明だが、自分に向けられる意識や視線を感覚的に感知する。
 シニフィエの話とも矛盾しないのでこれが正解なのだろう。

 ならばその感知を掻い潜るにはどうすればいいのか?
 その問いに対するヨシナリの解は単純で彼女に意識を向けない事。
 事実としてモタシラはそれをやってふわわの超人的な反応を無効化した。

 視線の焦点を別にして視界の端に捉えた的を狙う。 
 なんてことはない。 見ないで当てればいいのだ。
 だが、それでもまだ足りない。 

 その異能とも言える能力を封じたとしても元々備わっている超人的な反応が残っている。
 素直に狙っても簡単には当たってくれない。 なら、何をすれば素直に当たってくれるのか?
 簡単だ。 彼女以外を狙えばいい。 

 これまでの反復練習で染みついた動きをトレースしてクルックスを連射。
 無数の銃弾がふわわに襲い掛かるが、やはり反応が僅かに鈍い。
 それでも銃弾を切り払うのは流石だ。 

 ――だが、本命には気づいていなかった。

 ガチリと弾が切れる。 同時にふわわの機体から異音。
 これには防いだと思っていたふわわも違和感の正体を確かめるべく自機に意識を向ける。

 「やるやないの。 殺気がせぇへんかったから不思議やと思ったけど、そもそもウチを狙ってなかったんかぁ」

 残った野太刀の鞘が半ばで砕け、ナインヘッド・ドラゴン柄が折れる。
 そうヨシナリの本当の狙いは彼女自身ではなく厄介な武器の排除だったのだ。
 特に野太刀とナインヘッド・ドラゴンは最後まで残っている状態だと一瞬で引っ繰り返されるので非常に目障りだった。

 太刀はさっきのエーテル砲で巻き込む形で焼いたので形は残っているが熔解しており、拾っても使い物にならない。
 残りは小太刀のみ。 これで明確な勝機が見えて来た。
 
 ――このまま押し切ってやる!

 ヨシナリは絶対に仕留めてやると戦意を漲らせながら手動でクルックスをリロード。
 銃口をふわわへと向けた。
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