星と運命に導かれし者達~ステータスオープン~

kawa.kei

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第26話 形になった違和感

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 何だか村の様子がおかしい。
 違和感自体は感じていたが、疲労の所為で上手く頭が回らなかった朱里はあまり気に留める事が出来なかったのだ。 謎の素振りを始めて一か月が経過した頃には違和感が無視できないレベルに達していた。

 「ね、ねぇミュリエル」
 「はい、何でしょう」 
 「おかしくない?」
 
 ミュリエルは黙ったまま答えない。 朱里達が今いる場所は村の中央に存在する広場だ。
 そこにある建物が建っていた。 魔法で綺麗にカットされた石材をふんだんに使用した建造物は朱里の知識にある『教会』に酷似している。 

 大きな違いは十字架が存在せず開け放たれた扉から見える最奥に存在する像の存在だろう。
 どうやって作ったのか材料は金属であろうそれは美しい女性の姿を象ったものだった。
 中に入って像を近くで眺める。 凄まじく造形の整った顔だった。

 美人というよりは完成された芸術品を思わせる美貌。 恐らくこれが――

 「――女神ズヴィオーズ」
 
 応供の話によれば朱里も一度は会っているはずだが全く思い出せない。
 ミュリエルも気になるのか像をじっと見つめていた。
 
 「それにしてもいつの間にこんな物を……」
 「女神様の教えを広める為に皆で協力して作りました」

 振り返ると応供が多数の村人を引き連れて現れた。 
 彼らはぞろぞろと像の前に並ぶとその場で跪いて祈りを捧げ始める。

 「女神ズヴィオーズ様、あなたのお陰で我々は今日も健やかに過ごせます」
 『今日も健やかに過ごせます!!』

 応供の言葉に追従するように村人達も女神ズヴィオーズに感謝の言葉を捧げる。
 彼等は全員心の底からの祈っており、一部の村人は涙を流してすらいた。
 そして応供も涙を流している。 その姿を見て朱里が思った事は一つ。

 ――こいつ等ヤバすぎる。

 彼等の祈りは社交辞令や周囲に合わせてなどといった生易しいものではなくマジなのだ。 
 目を見れば分かる。 誰も彼も心の底からの祈りを捧げているのだ。
 
 「いや、マジ過ぎるでしょ……」

 思わずそう呟き、ミュリエルに同意を求めようとしたがいつの間にかミュリエルまで村人に混ざって女神像に祈りを捧げていた。 

 「いや、ちょっとミュリエル? 何をやってるの?」 
 「え? 女神様への祈りですが?」
 
 ミュリエルは今の質問が心底から不思議だったのかそう聞き返してきた。
 その反応に朱里は恐怖を感じる。 何で? ミュリエルって別に女神ズヴィオーズに興味なんてなかったのに……。 
 
 少なくとも国を出るまではそうだったはずだ。 
 なら考える要因としては応供から加護を受け取った事。 まさかとは思うが、応供の加護には洗脳高価でもあるのだろうか? 分からなかったが、ミュリエルの様子を見るとそうとしか思えない。
 
 今更ながら、荒癇 応供という人間の危険性を認識したが、離れる事は出来ないので受け入れるしかない。 だから朱里は努めて気にせずに彼等の祈りを少し離れた場所で眺めていた。

 ――ああはなりたくないと思いながら。
 
 
 昼食を済ませ一日の後半戦。 
 雑談を交えながら素振りをするだけの時間のはずだったのだが、今日は変化があった。
 棒を振っていたミュリエルの手が止まる。 

 「どうかした?」
 「……剣術スキル、覚えました」
 
 かなり驚いている様でやや呆然としていた。 
 正直、朱里もこんな棒を振り回しているだけで覚えられるなら苦労はしないと少し思っていたので実際に身に付けたという者が現れれば信じざるを得ない。 朱里も念の為にとステータスを確認したがスキルは特に増えていなかった。

 「ね、ねぇ、剣術スキルってどんな感じなの?」
 「そうですね。 折角ですし試してみましょう」

 ミュリエルは一つ大きく呼吸をすると棒を構える。
 明らかにさっきまでのただ振っているだけとは纏う雰囲気が違った。
 小さく、そして鋭い一呼吸と共にミュリエルが動く。 一息で数歩分の間合いを詰め、射抜くような刺突からの鞭のようにしなる斬撃。 一連の動作が終わるとミュリエルは小さく息を吐いた。

 「ふぅ、どうです?」
 「す、凄い! 凄い! え? 何、今の? あれがスキルの効果なの?」
 「はい、特定のカテゴリーの武器を持った状態で使用すると体が目的に沿った動きをしてくれます」

 ついさっきまで剣の素人だったミュリエルがあんな動きができるようになるのだ。
 スキルの恩恵は凄まじい。 ミュリエルも知ってはいたが、実際に体験するのとでは違うようで驚いている様子が分かる。 

 「さて、次は『短剣術』ですね……」

 そう呟いて遠い目をした。 そうだ、応供の用意した課題は『剣術』と『短剣術』の習得だ。
 一つとっても折り返し地点なのだ。 剣術だけで一か月、短剣術の習得を考えるともう一か月か。
 
 「……長い目で見た方が良いのかもね……」
 「そうでもありませんよ。 本来、スキルの習得はそう簡単にできるものではありません。 大抵の人は一生の内に三つ手に入ればいい所です。 四つや五つ以上ともなると内容にもよりますが大抵の場所では優遇されますよ」

 スキルが多い事は文字通りのステータスなのだ。
 加護という前提条件こそあるがそれだけスキルが与える恩恵は大きい。
 朱里は自分の手の平を見る。 徐々にだが硬くなり始めた手はこれまでの努力の現れだが、スキルという分かり易い形で結果が出るのは確かに原動力にはなるのだろう。

 ただ、現代日本の常識で育った朱里にはこの世界の在り方はどこか歪に見えてしまった。


 「――剣術スキルを取得したのですね。 おめでとうございます。 ではそのまま引き続き、短剣術スキルの取得に励んでください」

 その晩、応供にスキル習得の報告を行ったのだが、このようにあっさりとしたものだった。
 
 「あのー、私はいつになったら剣術スキルが手に入るのかな?」
 「前にも言いましたが、朱里さんはまだ無理ですよ。 条件はもう少しで満たせますが、レベルとステータスが足りません。 ですので、条件を満たした後、短剣術の訓練に切り替えてください」
 「どれぐらいかかりそうかな?」
 「その辺は何とも。 見た所、レベル自体は上がっているようなので時間をかければ取得は可能です。 もう少し頑張りましょう」

 応供の言う通りでワイバーンの肉を毎日食べる事で朱里のレベル自体は上がっていた。
 死骸経由の摂取なので経験値効率は最低だが、ワイバーンは元々高レベルの魔獣なので経験値量自体は非常に多い。 その為、効率の悪い食事でも朱里のレベルを上げる程度の役には立った。
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