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第7話 船頭多くして船山に登る
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媚びを売っているのではないかと言わんばかりの態度がとにかくあざとい。
継征が画面に映っているヒロインに対する印象だった。
逸子も引っかかっているいるのか気に入らなかったのか、もしくは両方なのか目から光が消えていた。 継征はその反応に途中であぁとぼんやりと察し始める。
恐らく逸子はキャラクター性が気に入らないというよりは共通ルートと個別ルートでの反応の差異が気になるのだ。 確かに共通ルートで関係性を積んではいるが、この反応は過剰といえる。
――ってか、反応としては明らかに恋愛関係には厳しいタイプなのに個別に入った瞬間、生徒を食おうとするとはとんでもねー教師だな。
そこまで考えているのは不明だが、逸子も違和感を感じておりそれが不快感といった形で表れているのだろう。
「ねぇ、この先生ってこんなんだったっけ? わたしどこか見逃した?」
「いや、ちゃんと見てたと思うぞ。 俺にも別人に見える」
「うーん。 その所為かな? なーんか見ててイラっとするなぁ」
「マジでキャラクターが違いすぎるからな。 共通と個別で別人にしか見えねぇ」
話が進めば進むほどに声と顔が一緒なだけの別人に見える。
それは他のヒロインにも言える事で特にメインヒロインに関しては既に共通ルートの終盤辺りからキャラクター性が崩壊し始めていた。 逸子が舌打ちした所が特に顕著でそれまでは一定の距離感が一瞬で縮まっている。 そこから先は地獄だった。
個別ルートに入る事で次々と崩壊するキャラクター。
一緒にジュースを飲んだだけで惚れるヒロイン、落とし物を拾っただけで惚れるヒロイン。
ライターの意図としては日常の積み重ねからの飛躍を狙っていたのだろうが、前後の反応が極端すぎて違和感が凄まじい。 それに加えて最も酷いのが主人公の性格だ。
主張や行動がコロコロと変わり、個別のルートで見比べると完全に別人にしか見えない。
こうなると序盤に主張していた人間関係に対しての臆病さは消え失せ、ヒロインの悩みを解決する為に奔走する姿には共感を一切覚えず、違和感しか感じられなかった。
この手のゲームに造詣が深い訳ではない継征ですらぼんやりと察し始める。
ほぼ、テキストを消化している作業を行っている逸子の姿を尻目にスマートフォンを操作。
開くのはレビューサイトだ。 評価は想像通りかなり低い。
五段評価で2.1は厳しいと言わざるを得ないだろう。 理由としては登場人物の性格の変遷が大きく挙げられており、その理由に関しても綴られていた。
商品についての詳細をよく見れば分かる話でこの作品、シナリオライターが何と七人もいる。
共通部分、ヒロイン六人に対して各一人の合計七人。
「……嘘だろ」
思わず継征は呟く。 この内容でこれだけの人数を費やすのか?
だが、それとは別で納得もした。 擦り合わせをまともにしていないのなら、キャラクター性がぶれるのは当たり前だ。 一応、体裁としてはメインヒロインを担当したライターがメインという事になっているが七人で作業を適当に割って担当したようにしか見えない。
それからは本当に酷い時間だった。 真につまらないゲームというのは怒りではなく、虚無感を齎す。
逸子は最初は登場人物の奇妙な行動に文句や突っ込みを入れていたが、徐々にそれも減っていく。
そして最後には死んだ魚のような目でカチャカチャとボタンを押すだけの存在に成り果てていた。
どんなものにも始まりがあれば終わりもある。
進んでいけば何らかの形でゴールへと到達するのだ。 最後に回していたメインヒロインのエンディングが流れる。 何度も見たのでボタンを連打してスキップを試みていたが、このゲームは意地でもエンディングに流れるスタッフロールをプレイヤーに見せつけたいのかスキップ不可だった。
それでも逸子は無言でカチカチとボタンを連打する。
継征はその様子に若干の恐怖を覚えていたが、とにかく終わったものは終わったのだ。
その証拠にトロフィーの達成率は百パーセント。 コンプリートした際に得られるトロフィーの名前が『真の愛を知るもの』は何かの冗談なのだろうか? 継征からすればこのゲームを見ていて一番面白かった部分だった。
逸子はギギギと軋むような動きで振り返る。 その表情に継征は若干の恐怖を覚えたが、直ぐにいつもの妹に戻って内心でほっと胸を撫で下ろした。
「次、何やろっか?」
「……口直しをしたい気持ちは分からんでもないが外を見ろ。 もう朝だ」
帰宅してからずっとやっていたのですっかり日が昇っていた。
「取り合えず、シャワー浴びて寝る。 回復したら続きだ」
「……分かった。 わたしが先に入っていい?」
「どうぞどうぞ」
逸子が部屋から去っていった後、軽く片付けて継征はそのままベッドに横になった。
頭の中ではピュア@ラバーズの内容を反芻している。 取り合えず、酷いとしか言いようがなかった。 似たジャンルでやったゲームがそう多くないので比較対象が風雅のみだが、完成度の違いは明らかだ。 後で逸子に感想を求められるのが目に見えているので今の内に頭の中で――
思考は形にならず継征の意識はそのまま途切れた。
起きたら昼を過ぎて夕方になりかかっており、逸子は起こしに来なかったのかと部屋を見に行くと爆睡していた。 母は仕事に行くと置き手紙を残していなくなっており、冷蔵庫には食事の用意。
継征は頂きますとありがたく食べた後、少し悩んだが逸子を起こす事にした。
本音を言うならそのまま二度寝したいところではあるが、後で不機嫌になりそうだったので起こしておいた方がいいと判断したからだ。 室内に入りカピパラを模した抱き枕に抱き着いて寝ている逸子を軽く揺する。
「おーい、続きどうする? このまま寝ておくか?」
そう声をかけると逸子の目がカッと勢いよく開かれ眼球が継征の方へと向く。
あまりにも急な覚醒に継征は思わず仰け反る。
「やる!」
「お、おう、取り合えず次は俺の番だったからやるゲームの準備はしておいたぞ」
「うん! 着替えたらすぐ行くね――ってかお兄ちゃんもシャワー浴びなよ。 ちょっと臭う」
「げ、マジか。 オッケー、汗流したら行くから俺の部屋で待ってろ」
諸々の準備を終え、次のゲームへと挑む。
継征が選択したのは『ワールドドライブ:チャンピオンズリーグ』。
実在する車を使って様々なコースでレースをするゲームだ。
継征が画面に映っているヒロインに対する印象だった。
逸子も引っかかっているいるのか気に入らなかったのか、もしくは両方なのか目から光が消えていた。 継征はその反応に途中であぁとぼんやりと察し始める。
恐らく逸子はキャラクター性が気に入らないというよりは共通ルートと個別ルートでの反応の差異が気になるのだ。 確かに共通ルートで関係性を積んではいるが、この反応は過剰といえる。
――ってか、反応としては明らかに恋愛関係には厳しいタイプなのに個別に入った瞬間、生徒を食おうとするとはとんでもねー教師だな。
そこまで考えているのは不明だが、逸子も違和感を感じておりそれが不快感といった形で表れているのだろう。
「ねぇ、この先生ってこんなんだったっけ? わたしどこか見逃した?」
「いや、ちゃんと見てたと思うぞ。 俺にも別人に見える」
「うーん。 その所為かな? なーんか見ててイラっとするなぁ」
「マジでキャラクターが違いすぎるからな。 共通と個別で別人にしか見えねぇ」
話が進めば進むほどに声と顔が一緒なだけの別人に見える。
それは他のヒロインにも言える事で特にメインヒロインに関しては既に共通ルートの終盤辺りからキャラクター性が崩壊し始めていた。 逸子が舌打ちした所が特に顕著でそれまでは一定の距離感が一瞬で縮まっている。 そこから先は地獄だった。
個別ルートに入る事で次々と崩壊するキャラクター。
一緒にジュースを飲んだだけで惚れるヒロイン、落とし物を拾っただけで惚れるヒロイン。
ライターの意図としては日常の積み重ねからの飛躍を狙っていたのだろうが、前後の反応が極端すぎて違和感が凄まじい。 それに加えて最も酷いのが主人公の性格だ。
主張や行動がコロコロと変わり、個別のルートで見比べると完全に別人にしか見えない。
こうなると序盤に主張していた人間関係に対しての臆病さは消え失せ、ヒロインの悩みを解決する為に奔走する姿には共感を一切覚えず、違和感しか感じられなかった。
この手のゲームに造詣が深い訳ではない継征ですらぼんやりと察し始める。
ほぼ、テキストを消化している作業を行っている逸子の姿を尻目にスマートフォンを操作。
開くのはレビューサイトだ。 評価は想像通りかなり低い。
五段評価で2.1は厳しいと言わざるを得ないだろう。 理由としては登場人物の性格の変遷が大きく挙げられており、その理由に関しても綴られていた。
商品についての詳細をよく見れば分かる話でこの作品、シナリオライターが何と七人もいる。
共通部分、ヒロイン六人に対して各一人の合計七人。
「……嘘だろ」
思わず継征は呟く。 この内容でこれだけの人数を費やすのか?
だが、それとは別で納得もした。 擦り合わせをまともにしていないのなら、キャラクター性がぶれるのは当たり前だ。 一応、体裁としてはメインヒロインを担当したライターがメインという事になっているが七人で作業を適当に割って担当したようにしか見えない。
それからは本当に酷い時間だった。 真につまらないゲームというのは怒りではなく、虚無感を齎す。
逸子は最初は登場人物の奇妙な行動に文句や突っ込みを入れていたが、徐々にそれも減っていく。
そして最後には死んだ魚のような目でカチャカチャとボタンを押すだけの存在に成り果てていた。
どんなものにも始まりがあれば終わりもある。
進んでいけば何らかの形でゴールへと到達するのだ。 最後に回していたメインヒロインのエンディングが流れる。 何度も見たのでボタンを連打してスキップを試みていたが、このゲームは意地でもエンディングに流れるスタッフロールをプレイヤーに見せつけたいのかスキップ不可だった。
それでも逸子は無言でカチカチとボタンを連打する。
継征はその様子に若干の恐怖を覚えていたが、とにかく終わったものは終わったのだ。
その証拠にトロフィーの達成率は百パーセント。 コンプリートした際に得られるトロフィーの名前が『真の愛を知るもの』は何かの冗談なのだろうか? 継征からすればこのゲームを見ていて一番面白かった部分だった。
逸子はギギギと軋むような動きで振り返る。 その表情に継征は若干の恐怖を覚えたが、直ぐにいつもの妹に戻って内心でほっと胸を撫で下ろした。
「次、何やろっか?」
「……口直しをしたい気持ちは分からんでもないが外を見ろ。 もう朝だ」
帰宅してからずっとやっていたのですっかり日が昇っていた。
「取り合えず、シャワー浴びて寝る。 回復したら続きだ」
「……分かった。 わたしが先に入っていい?」
「どうぞどうぞ」
逸子が部屋から去っていった後、軽く片付けて継征はそのままベッドに横になった。
頭の中ではピュア@ラバーズの内容を反芻している。 取り合えず、酷いとしか言いようがなかった。 似たジャンルでやったゲームがそう多くないので比較対象が風雅のみだが、完成度の違いは明らかだ。 後で逸子に感想を求められるのが目に見えているので今の内に頭の中で――
思考は形にならず継征の意識はそのまま途切れた。
起きたら昼を過ぎて夕方になりかかっており、逸子は起こしに来なかったのかと部屋を見に行くと爆睡していた。 母は仕事に行くと置き手紙を残していなくなっており、冷蔵庫には食事の用意。
継征は頂きますとありがたく食べた後、少し悩んだが逸子を起こす事にした。
本音を言うならそのまま二度寝したいところではあるが、後で不機嫌になりそうだったので起こしておいた方がいいと判断したからだ。 室内に入りカピパラを模した抱き枕に抱き着いて寝ている逸子を軽く揺する。
「おーい、続きどうする? このまま寝ておくか?」
そう声をかけると逸子の目がカッと勢いよく開かれ眼球が継征の方へと向く。
あまりにも急な覚醒に継征は思わず仰け反る。
「やる!」
「お、おう、取り合えず次は俺の番だったからやるゲームの準備はしておいたぞ」
「うん! 着替えたらすぐ行くね――ってかお兄ちゃんもシャワー浴びなよ。 ちょっと臭う」
「げ、マジか。 オッケー、汗流したら行くから俺の部屋で待ってろ」
諸々の準備を終え、次のゲームへと挑む。
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実在する車を使って様々なコースでレースをするゲームだ。
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