アプリで知り合ったイケおじと××する話

市井安希

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無題

58.独り占め片思い⑥(大スカ)

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※ぼかしてますが食糞っぽいことしてます。閲覧注意です。


 世の中は狭くて、隠し事ってのは通用しないのかもしれない。
 地元じゃ『有名人』だったし、会社で噂が広まっててもおかしくない。そうだ。なにも傷つくようなことじゃない……何度も自分に言い聞かせるけど、モヤモヤが残ったままだ。
 龍崎さんにも「なんかあったか?」って聞かれた。昔の話で落ち込んでるのがバレるのがイヤで、また母親に金の無心をされたことにした。
 嘘じゃない。毎週月曜日と水曜日、ピアノ教室に通うからとレッスン料をせびられていた。
 レッスンのために清掃のバイトも減らした。
 結婚相談所で知り合った男にピアノが趣味だと言ってしまったという。
 ピアノって……金持ちの家の女子が幼稚園とか小学校の時からやるモンだろ。なんでそんな見え透いた嘘を。呆れる反面、こういう女なんだと改めて思い知る。

 辛いことがあると、龍崎さんの調教にありがたみを感じる。
 痛み、快感、恥ずかしさが現実をかき消してくれた。
 正しいやり方を教えてやるって腸内洗浄してる所を見せることになった。
 散々笑われてあと、手足を縛られた状態で汚したんだから片付けろって命令された。
 使えるのは口しかない。
 吐きながら勃起してた。泣きながら喜んでた。
 頭と体と心がめちゃくちゃになって、幸せ~って感じ。クスリやるとこんな気分になるのかな。 
 なんか、もう、全部がこの人に埋め尽くされていく。塗りつぶされていく。
 龍崎さんも「最高傑作が撮れた」「すぐに現像して見せてやるよ」ってけっこーハイテンションだった。
 約束通りたった4日で写真は出来上がった。
 この前公衆便所で撮ったのも一緒だった。
 顔もばっちり写ってるし体に上西秋雄って書いてるから、他人の空似だと言い逃れできない証拠写真だ。

「どうだ?」って言われても頷くことしかできない。
 どう見ても汚らしい俺でしかない。
 構図がいいとか迫力があるとかそれっぽい言葉は思いついたけど、きっと見透かされる。そんで嘘つくなって叱られる。

「……なんか言えよ」
「あ、あの……ええと……」
「はぁ?つまんな」
「すみません……」

 龍崎さんは舌打ちして俺から写真を奪い取り、丁寧にそっとアルバムに貼り付けていく。
 実物の俺より写真に写る俺の方が大事なのかもしれない。

 龍崎さんはパタンとアルバムを閉じ、俺をジロジロと見てつぶやいた。

「ちょっとダイエットすっかぁ。太り過ぎ」
「わかりました」
「1ヶ月ちょいやるからきっちり絞れよ」
「きっちりってどれくらいですか?」
「それはお前の努力次第だろ?飲まず食わずだったら5キロ以上落ちるだろ」
「はい」
「……俺は別にいいんだけどさ」

 前に太れと言われたけど、今度は痩せやきゃいけないのか。

 とりあえずその日から夜飯を軽くすることにした。
 コンビニで無糖のコーヒーとサラダを買う。
 ダイエット中の女って感じのメニューだ。
 最近は、口で『掃除』した感覚が消えなくて食欲がなかったから、すぐに体重が減りそうで焦りはしない。
 でも1つだけ気になることがある。 

「……俺は別にいいんだけどさ」

 最後の言葉が妙にひっかかった。
 龍崎さんがいいならそれでいいのに、なんで?

 モヤモヤしながら缶コーヒーを飲む。
 インスタントコーヒー飲めばいいのに、コンビニでこんなの買うから金がなくなるってちゃんとわかってる。
 でもたった100円節約した所で……って考えが消えない。
 空腹は満たされないけど布団に入る。
 テレビをつけるとグラビアアイドルだがAV女優だかが芸人とギャーギャー騒いでいる。

「この業界の子ってみんなホントに細いからあたしくらいの体型でも超デブに見えるんですよ!
テレビとか写真だと膨張して見えるし。
ファンの方からは実物は細いねって言われるんです!」
「気ィ遣われてんだよ」
「じゃあ何キロなの?」
「内緒です~!」 

 女がブリッコしてスタジオに笑いが響く。
 
 へー……写真だと膨張して見えるのか。
 俺、ヤるにはいいけど『モデル』としてはデブって感じ? 
 自分でモデルとか言っちゃうのだいぶ恥ずかしいけど……。

 大事そうにアルバムに写真を貼る姿を思い出す。
 龍崎さんは性欲より自分の世界とか芸術を大事にする人なんだ。趣味とか打ち込めるものとかないから尊敬する。
 俺も……頑張らないとな。
 じっとしてられなくて起き上がる。
 スニーカーの紐をきつく結んでランニングに出かけた。 
 ランニングと言っても寮の周りを2~3周するくらいのつもりだったのに、気がつけば結構走ってた。
 体育の授業は死ぬほど苦痛だったのに、体を動かすのが楽しいと感じた。
 汗ばんでまたシャワーを浴びるはめになったし、ふくらはぎはパンパンだけど心はスカッとした。これが達成感ってやつか……。
 その晩は久しぶりに熟睡できた。
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