アプリで知り合ったイケおじと××する話

市井安希

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無題

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 しばらくそんな心配をしていたけど、男は突然いなくなった。  
 理由は想像つく。なにか事件を起こして、別の町に逃げたんだろう……驚きはなかった。  

 母さんは相当ショックだったのか、しばらくの間抜け殻状態だった。いつかこうなるのは目に見えていたし、むしろ長続きした方だと思う。  

 周囲に八つ当たりする元気もない母さんと一緒にいるのは気が滅入る。気分転換にゲーセンに行くことにした。 
  
 夜でも人がいて、騒がしくて眩しくて……逆に落ち着く。
 適当に麻雀のゲーム台に座った。漫画で読んだことあるだけで、実際にやったことないしルールもよくわからない。だって4人じゃなきゃできないじゃん。
 友達がいない俺には縁のない遊びだった。
 100円で時間が潰せそうという理由で選んだ。

 勘で牌を捨てると、後ろから声をかけられた。  

「あっ、それダメだよ」  

 振り向くと、高校の制服を着たカップルが立っていた。  

 男は意味ありげに笑ってて、女のほうが飽きたように髪をいじっている。   

 無視して麻雀を続けようとしたけど、画面にロンの文字が表示されている。これで終局だ。     

「それ振り込みってやつ」

 男が画面を指さして言う。 
 なんかめんどうなことになる予感がして、うんざりする。  

「ねぇ、ヤクザの息子ってマジ?」   
「…………」

 ほら、もう。絶句した。  
 こんなところまで噂が広まってるらしい。  
 何も答えずにいると、男は勝手にペラペラ話し続けた。  

「任侠映画とか好きなんだよね」  
「極道の世界ってさ、結局、義理と人情なんだよな」  
「俺、ああいうの憧れるんだよね」  
「やっぱ家にドスとかあるの?」  

 本気なのか、からかってるのか微妙な質問だった。無視しても続くのがわかっているから、はっきり答える。  

「その噂、ウソだから。母親の彼氏がガラ悪いってだけで……そいつがヤクザかどうかは知らない。
ただのチンピラじゃない?面白いことなんてねぇよ。」  
「え、そうなんだ。なーんだ、ガッカリ」  

 男は落胆して、女に「ほら、言ったじゃん」と呆れられた。  

「それはそれとしてさ、今日1人?」  

「……」  

「もっと楽しいことしようよ。俺ん家来ない?」  

 付き合う理由もないけど、断る理由もない。  

 気がついたら、男の家にいた。  

 彼女が他の男とヤッてる姿を見たいけど、知り合いは嫌だから俺が選ばれた。彼女も俺なら平気だという。  

「は?マジでやるの?」  
「うん、いいだろ?」  
「えー……まぁ、この子ならいいけど……。アンタのは友達よりは100倍マシ!」
「そう言うと思ってさぁ」
  
 こんながブツブツ言いながら制服を脱ぐ横で、男は俺に質問をした。  

「ところで君、初めて?」 
「……うん」
「へぇー、意外!遊んでそうなのに。まっ、気楽に行こうよ」 
「……」    

 流れに任せて、言われた通りのことを淡々とこなす。

 カップルはすごく興奮してる様子だったけど、俺は緊張も感動もなくて、こんなもんなんなのか?って驚いた。  

 つけっぱなしのテレビから、昔のアイドルの歌が聞こえてくる。音楽番組が昭和のアイドル特集をやっているらしい。  

 「似たようなことは誰でもしてる」か……。そのフレーズがやけに耳に残った。たぶん、そうなんだろう。 
 じゃあどうしてこんなに悲しいんだろう。

 また、ため息。
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