アプリで知り合ったイケおじと××する話

市井安希

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無題

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 亮佑とつるむようになってから、自然と佃、力也、聖樹とも仲良くなった。  
 人生で初めてできた、正真正銘の友達だった。  

 今まで友梨ちゃんたちには助けてもらいっぱなしだったけど、亮佑たちとは対等な気がした。   

 佃は家が廃材をリサイクルする会社をやってて、意外にも社長令嬢ってヤツだった。バカすぎてここしか受からなかったという。
 聖樹の家も複雑で親と仲が悪い。
 力也は家族仲がよく、毎日みんなで晩酌してるって……まぁいいんじゃない? 
 俺が噂みたいな不良じゃないことも広まったが、亮佑たちといるおかげで絡まれることもなくなった。  
 同級生とも無難にやれてると思う。たぶん。
 亮佑はクラスの中心人物で誰とでも仲が良いのに、秘密を知ってるのが俺を含めた3人しかいないのが不思議だ。
 この明るさも実は演技なんじゃないかと思う時がある。  

「髪染めようぜ?明るい方が似合ってるって」  
「ピアス開けてやるよ。安全ピンで一発だから」     
「服買いに行こうぜ!知り合いが古着屋やっててさ」

 流されるままに見た目も変わった。  
 聖樹に誘われてバイトも始めた。  

「何時間も工場で弁当にゴマ振ったりしてんの」  
「えっ、よくできるなそんなこと。絶対単純作業向いてないからパス」
「楽しくはねぇけど、金になるぜ。時給ここらへんじゃいい方だから」
「へー……」  

 単純作業は苦痛だったけど、自由に使える金が手に入るのは嬉しい。   
 高校生になって、人生が変わった。  
 変わったのは、俺だけじゃない。

***

 玄関を開けた途端、母さんがすがりついてきた。  

「秋雄!どこ行ってたの……心配したじゃない!」  
「今日バイトあるって言ったじゃん。心配するようなことしてないから」  

 ヒートアップさせないように事実だけ言う。母さんは「そうだったっけ?」と曖昧に笑った。

 あの男が消えてから、母さんは夜の仕事を減らし、清掃のパートに行くようになった。  
 どうせすぐやめるだろうと思ってたのに、想像以上に長続きしてる。  
 若くないことを自覚してるのかもしれない。   
 稼げなくなった今、バイトしてる俺を当てにしてるのだろう。

「お腹すいてるでしょ? 何か作るわ!」  
「あー、いや、いいよ。廃棄貰って食ってきたから」  

「そっか……」とやけに寂しそうに呟きながら、母さんは冷蔵庫を開けて、意味もなく中身を確認している。    

「疲れたでしょう。お風呂沸かしてるから入りなさい」 
「……うん」
「母さんも秋雄のために頑張って働くからね。あんな宗教を信じてたのは元は秋雄のためなの。
いつかちゃんと秋雄に返ってくると思って……」
「風呂入ってくる」

 タオルを持って逃げる。
 それは嘘だろ。
 言い訳なのか、本気で思い込んでるのか定かではない。 
 でも昔は俺のことなんか見てなかったくせに、いきなり過剰に構われるのは正直、キツい。  
 だけど、俺という存在が嫌いなんじゃなくて子供が嫌いだったと判明して安心してる自分がいた。 

「極端だよな……ホント……」

 独り言が風呂場に響いた。
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