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7巻
7-3
しおりを挟む(リリアナ、かくれんぼしてるの?)
(……ある意味、そうなのかもね。私は、あの人達に絶対見つかっちゃいけないもの。ルーチェも協力してね)
(わぁーい! ルーチェもかくれんぼの仲間だね! もちろんリリアナが見つからないようにお手伝いするよ!!)
ルーチェは満面の笑みを浮かべて喜ぶ。
ありがとう、ルーチェ。この事態をまったく理解していないんだろうけど、少し気が楽になったよ。
うぅ……それにしても、一体、私が何をしたっていうんですか!?
フィオス国王陛下を歓迎する宴が開かれた……あの悪夢の日。
私は衝撃的な展開についていくことができず、意識を失ってしまいました。
そして、王都にあるオリヴィリア邸の自室で目を覚ましたんです。
お父様とお母様曰く、王太子様やレオニダス陛下は気絶した私をとても心配していたみたい。お二人とも王城で休むようすすめてくださったようだけど、お父様とお母様はそれを辞退して、オリヴィリア邸に帰ってきたんだとか。
お父様、お母様、グッジョブです!
ただ、あの宴以降、たくさんの人達がオリヴィリア邸を訪ねてくるようになりました。
レオニダス陛下に花嫁扱いされたことはもちろん、私が青薔薇の乙女だと判明したことも大きいようです。
あのとき、王太子様はこうおっしゃいました。
『リリアナ嬢は青薔薇の乙女――つまりは、私の婚約者』
正確には婚約者候補なのに、婚約者と言い切った王太子様。
そのせいで、一人の伯爵令嬢を巡って二国の王族が争っている!? と世間で騒がれているみたい。
国民の皆さんも面白おかしく噂話を楽しんでいるようで、近々、この話を題材にした劇まではじまるそうです。
きっと私も、傍観する立場だったら一緒になってキャッキャと楽しんでいたことでしょう。
でも、当事者だからこそ言いたいことがあります。
お願いですからやめてください……
うぅ、胃のあたりがキリキリ痛むよ。
せめて家ではゆっくり過ごして現実を忘れたいのに、入れ代わり立ち代わり人がやってきて、気が休まらないし……
我が家を訪れる方々は、オリヴィリア家と繋がりを持とうとしているみたい。さらには私を通じて王太子様やレオニダス陛下とも交流を持ちたいようなんだけど――
困るよ、そんなこと求められても。
お父様とお母様は、訪れた方々からの申し入れをすべてお断りしてくれています。
けれど、諦めきれない方々がオリヴィリア邸を毎日包囲しているんです。悪いことをしたわけでもないのに、こんなにコソコソ隠れていなくちゃいけないなんて……
かくなる上は、出家するしかないのでしょうか!?
だって、王族からの求婚(?)を断ることなんてできないよ。
――この世界に仏教はないから、正確にはセイルレーン教会の扉を叩くことになるよね。う~ん、それはそれで厄介なことになりそう。
何せ我が家は、分家筋とはいえ神様の血を引いています。
遠い昔、美と愛と豊穣の女神様は、ある青年に加護を授けました。そして彼との間に、双子の男女をもうけます。一人は、この国の始祖となるシェルフィールド様。もう一人は、この国で大公爵家を興したアルディーナ姫。
私のお父様は、実はアルディーナ大公爵家の出身なんです!
銀髪と紫水晶色の瞳は、セイルレーン最高神様とアルディーナ様だけが持っていた特別な色。けれど、どういうわけか神様と同じ色を持って生まれてきてしまった私……正直なところ、すごく荷が重いよ。
教会は、最高神様と同じ紫水晶色の瞳を持つアルディーナ家の方々をまつりあげていると聞きます。これで髪の色まで同じ人がいたら、きっとすごく面倒なことになるんじゃないかな。それもあって、私は普段、幻影の仮面で本来の色を隠しているんだよね。
そう考えると、私に残された道は……他にあるんでしょうか?
うぅ、確かに、初花の儀のあとは婚約者を探さなくちゃいけないと思っていましたよ。こちらの世界の女性の結婚適齢期は、十六歳から二十歳ですし……
だけど、国王様や王太子様が婚約者になるなんて困ります!
どうすればいいかわからず、もやもや悩んでいると、ルーチェが私の頭を抱え込むように抱きついてきた。
ルーチェは精霊なので、重さは感じられません。だから別にいいんだけど――
(ルーチェ、何してるの?)
(リリアナがかくれんぼしてるって言うから、隠してあげてるんだよ。感謝してよね!)
いやいや、ルーチェの姿は他の人に視えないでしょ。仮に視えていたとしても、隠れているのは私の頭だけ。
これって、まさに頭隠して尻隠さずだよ……
(うん、気持ちだけありがたくもらっておくから、私のことは隠さなくていいよ、ルーチェ)
(えー、楽しかったのに。……でも、リリアナがそこまで言うんだったら仕方ないなぁ)
ルーチェは可愛らしく頬を膨らませつつ、私の頭から手を離して肩に腰かけた。
その体勢もどうかと思うけど……ご機嫌なルーチェは可愛いから、まぁいいか。頭にしがみつかれるより、ましだしね。
とそのとき、自室の扉がトントンと叩かれました。
「リリアナお嬢様、お客様がいらっしゃいました」
この声は、侍女のエレンですね。
基本的に、私へのお客様はお父様とお母様がお断りしているはず。私が王都で仲良くしている人は限られているし、この騒ぎでお会いする約束もできていません。
一体、誰が来たんだろう?
「エレン、お客様とはどなたですか?」
扉の向こうのエレンに尋ねると、すぐに答えが返ってきた。
「ご友人のヴィオレッタ・リーシェリ嬢です」
「ヴィオが来てくれたんですか!? 今すぐ会いたいです!!」
勢いよくそう言った私に、エレンはクスクスと笑いながら言葉を続ける。
「そうおっしゃると思って、応接間ではなくこちらにご案内いたしました」
そして開かれた扉の先には、エレンとヴィオの姿があった。
「ヴィオ! お久しぶりです!!」
実際には宴から三日しか経っていないけど、一歩も外に出られないと、一日がすごく長く感じられるんだよね。なんだか、ずっと会っていなかったみたい。
私は嬉しさのあまり、ヴィオに駆け寄って抱きついた。
するとエレンがコホンと小さく咳払いする。
「あ、ごめんなさい、ヴィオ。嬉しくってつい……」
この頃、エレンは私の行動に目を光らせているんだよね。確かに、もう立派な成人女性なんだから、少しは落ち着いた行動を取らなくちゃ。
私は身体を離し、ヴィオの顔を覗き込む。
ヴィオは珍しく、複雑そうな、浮かない表情をしていた。
「ヴィオ? どうかしたんですか?」
もしかして、私の子供っぽい行動に呆れちゃったとか!?
内心どうしようかと慌てていると、ヴィオはすぐに、にっこりと笑った。
「いえ、なんでもありません。お気になさらず……」
いつもと同じ笑顔にホッとしたものの、やっぱり、さっきの表情も気になる……。ただ、ヴィオがなんでもないと言っている以上、追及しないほうがいいよね。
うん、深く考えるのはやめよう。
ヴィオに向かって笑みを浮かべた私に、エレンがゆっくり頭を下げる。
「それでは、ごゆっくりご歓談ください。私はお菓子の準備をしてまいります」
(わぁーい! お菓子だって!! ルーチェも食べる!!)
(いやいや、ルーチェは食べられないでしょ)
精霊は食事を必要としないからね。けれどルーチェは私のつっこみを無視して、エレンと一緒に部屋を出ていった。
もう、相変わらず自由ですね、ルーチェは。
呆れてため息をついたところで、目の前にヴィオがいることを思い出す。
私はヴィオを急かすように、手を取って部屋の中に招き入れた。
「ヴィオが来てくれて本当に嬉しいです。お話ししたいことが山ほどあるんですよ! さぁ、どうぞ椅子に座ってください!!」
私はヴィオの向かいの席に腰を下ろし、さっそく話をはじめようとする。まずはこの間の宴が大変だったことから話すつもりだったんだけど、ふと考え直す。
……ヴィオは先日、商人としてレオニダス陛下に憧れていると言っていました。そんなヴィオに、陛下から求婚(?)された話をしてしまって大丈夫かな……?
それとも、こんなことを考えているのは逆に失礼?
少し言葉につまった私でしたが、ひとまず違う話題からはじめることにしました。
「先日の宴でも、ヴィオのドレスが好評でしたよ! イクシオン公爵家のフィオレンティーナ様もヴィオのドレスを気に入っていらっしゃいましたし!!」
すると、ヴィオはどこか悲しそうに笑った。さっきも浮かない表情をしていたし、やはり何かあったんでしょうか。
「ヴィオ……。一体どうしたんですか?」
「ドレスのことを褒めてくれてありがとう。だけど、リリアナが本当に言いたいのは、それじゃないよな。リリアナ……求婚されたんだろ?」
この部屋には今、私達しかいません。ヴィオはいつものかしこまった口調じゃなく、本来のくだけた口調で言いました。
……ヴィオの元気がなかったのは、それが原因だったんですね。変に話を隠せば、ヴィオを傷つけてしまうかもしれません。
ここは隠しごとをせず、すべて話したほうが良さそうです。私は腹を括って口を開いた。
「実は……そうなんです。情報通のヴィオならば、すでに話を聞いているかもしれませんが……先日の宴の最中、レオニダス陛下は私を迎えに来たとおっしゃったんです。ただ、初対面なのになぜそのようなことをおっしゃるのか、私にはわからなくて……」
困り果てながらそう答えると、ヴィオの顔からすっと表情が消えた。そして、再び悲しそうに眉を寄せる。
「ヴィオ……?」
「リリアナ、陛下とは本当に初対面だったのか? 心当たりは?」
「えっ……心当たり、ですか?」
そういえば、レオニダス陛下は私のことを「お嬢ちゃん」と呼んでいました。もしかして、私が気づいていないだけで、どこかでお会いしたことがあったとか?
……でも、隣国の国王様とお会いする機会なんて、そうそうないよね。あったとしたら絶対に忘れないと思うんだけど。
私が考え込んでいると、ヴィオは椅子から身を乗り出して尋ねてくる。
「シェルフィールド王国ではあまり見ない、あの顔立ち。人懐っこくて陽気な雰囲気。本当に覚えはないか?」
「えっと……そういえば、確かにどこかで見たことがあるような気はしたんですが」
「本当か!? どこで会ったのかも、覚えているか!?」
「いえ、そこまでは……」
私が答えると、ヴィオは少しがっかりした様子で肩を落とした。
えっと……ヴィオは一体どうしたんでしょう?
それに、どうもレオニダス陛下の容姿を知っているみたいです。どうして知っているんだろう。
フィオス商業王国に行ったときに、姿絵を見たことがあるとか?
王族の姿絵は、お土産として人気がありますしね。
もっとも、シェルフィールド王国では王族の姿絵が売られていません。シェルフィールドの王族は、美と愛と豊穣の女神様の加護を特に強く受けています。その美麗な容姿を絵にしようとしても、正確に描くことができないと挫折する絵描きが多いのだとか。
う~ん。もしかして私も、フィオス王国の王族が描かれた姿絵を見たことがあるのでしょうか。だからレオニダス陛下の顔立ちにも、見覚えがあったのかも。
うんうん悩みながら考え込んでいると、ヴィオが深いため息をついた。
「……まぁ、リリアナとレオ――いや、レオニダス陛下が会ったのは、もう七年も前のことらしいからな。ほんのわずかな時間だったみたいだし、リリアナが覚えていなくても仕方ないよな……」
「えっ!? どういうことですか? もしかしてヴィオ……レオニダス陛下とお知り合いなんですか?」
私はヴィオの話についていけず、目をぱちくりさせる。一方のヴィオは、そんな私に複雑な表情を向けながら話を続けた。
「リリアナ、大祖父様とはじめて出会ったときのことを覚えているか?」
「ええ、もちろんです! 忘れるはずがありません!!」
あれは七年前、護衛のアレスさんと一緒に隊商の露店を見に行ったときのこと。
アレスさんとはぐれて困り果てていた私に、ヴィオの大祖父様――ジルさんが優しく声をかけてくださったんです。そして、一緒にアレスさんを探しながら露店めぐりをしたんだよね。服を売っているお姉さんのお店でドレスの図案を描いたり、陽気なお兄さんのお店で木製のお人形をもらったり――
以来、私は親愛の情を込めてジルさんのことをジル曾お祖父様と呼んでいます。
あ、そういえば、木製のお人形をくれたお兄さんは、他国のご出身でした。シェルフィールド王国ではあまり見ない顔立ちだったことを……覚えて……
ああっ!
「ま、まさか、あのときの商人のお兄さんがレオニダス陛下ーーーーーー!?」
思わず絶叫してしまう私。
とはいえ随分昔のことだし、お兄さんの顔はおぼろげにしか覚えていない。レオニダス陛下の瞳の色はすごく珍しいのに、まったく印象に残っていないなんて……
動揺する私に、ヴィオは深く頷きながら答える。
「そのまさかだよ」
「嘘っ!?」
「いや、嘘じゃない。あのとき、陛下はまだ王位を継いでおらず、王子の立場だったんだ。宴の前に、フィオス商業王国の王位継承について話しただろう。覚えてるか?」
確かに、先日そんな話をしましたね。
フィオス商業王国では、国王の子供全員に王位を継ぐ権利が等しく与えられます。そして子供達が成長すると三年間の国王選定期間が設けられ、王子や王女達は市井に身を置いて商いをするそうです。その期間中、もっとも利益を上げた者が王位を継承することになります。
「あ、もしかして私が出会ったあのとき、選定期間の真っ最中だったんでしょうか!?」
「正解。選定の間は、フィオスの王国内で利益を上げなければならないわけじゃないからな。レオニダス陛下は身分を隠し、シェルフィールド王国のリーシェリ商会傘下で商人レオとして働いていたんだ。大祖父様だけは本当の身分を知っていたようだけど、周りは知らなかった。レオは気さくな性格で、皆と楽しそうに商いをしていたよ。まだ小さかった私のことも、随分と可愛がってくれた」
ヴィオは昔を懐かしむように、黒曜石色の目を細める。
「そうだったんですか。レオニダス陛下が正体を隠してシェルフィールド王国に滞在しているという噂がありましたが、あれは本当だったんですね」
「あぁ。リリアナは、レオにスゴロクやトランプといった遊び道具を教えたんだろう? その後、リーシェリ商会ではそれらの玩具やコーヒーが飛ぶように売れたからな。そのおかげでレオが国王になれたといっても、過言じゃないと思う」
「いやいや、それはさすがに言いすぎですよ……」
当時の私は、後先も考えずに、思いついたことをすぐ口にしていました。
ジル曾お祖父様と一緒に隊商の露店を回っているときにも、お手玉をすすめてくれたお兄さん――もといレオニダス陛下に、普段はスゴロクやトランプで遊んでいるから必要ないと断ったんですよね。さらには、それがどんな遊び道具なのか詳しく説明までしちゃいましたもん……
うぅ、なんだか偉そうな子供だよね。恥ずかしいです。
熱くなった頬に手をあてていると、ヴィオが言葉を続けた。
「そのとき、リリアナはレオに求婚されたんじゃないのか?」
「えっ!?」
そうでしたっけ?
私は慌てて記憶を辿る。あのときレオニダス陛下は、遊び道具を教えてくれたお礼だと言って木製の人形をくれました。けれど私は、無償で人形をいただくのは申し訳ないからと辞退しようとして……
『そんなに申し訳ないと思うんならさ、あと数年したら俺の嫁においでよ』
……! 思い出しました!!
確かに嫁においでと言われましたが、口調はものすごく冗談っぽかったですよ?
あのあと、レオニダス陛下の言葉を聞いたジル曾お祖父様が烈火の如く怒って、うやむやのまま別れたんだよね。
……まさか、あの言葉が本当だったなんて。
私の様子を見ていたヴィオは、納得したような表情を浮かべた。
「やっぱり、思い当たることがあるんだな」
「あの、ヴィオは全部知っていたんですか!?」
「いや、知ってたわけじゃないよ。ただ、レオは将来性がありそうな少女によく求婚していたんだ。冗談交じりにな。宴での出来事を聞いて、もしかしたらリリアナにも求婚してたんじゃないかと思ってさ……」
ヴィオはそこで言葉を切り、悲しげに笑った。
「ヴィオ……?」
その表情があまりにも辛そうで、私はヴィオの顔を覗き込む。
するとヴィオはパッと表情を明るくして答えた。
「ごめん、なんでもない。それでさ、本題なんだけど、宴のあとに懐かしい人物がやってきてこの手紙を置いていったんだ。リリアナに渡してくれって」
ヴィオはそう言って鞄からシンプルな白い封筒を取り出し、私に差し出した。
私は恐るおそるそれを受け取り、封を開ける。
中に入っていた便箋には、力強い文字が並んでいた。
リリアナ嬢、久しぶりの再会だったな。
出会った頃のお嬢ちゃんも美しく賢かったが、大人になったリリアナ嬢は予想をはるかに超えて美しくなっていたので驚いた。
嬉しい誤算だったよ。
だからこそクラウディウス王太子も、私とリリアナ嬢の邪魔をしたのだろう。
まさか、リリアナ嬢が青薔薇の乙女――王太子の花嫁候補だとは思わなかった。それを知った今、リリアナ嬢ほど王太子の花嫁候補にふさわしい女性はいないと感じているが……
だからといって、私もリリアナ嬢を諦めるつもりはない。
リリアナ嬢は誰に対しても驕ることなく、人の上に立ち、導いていけるだけの器がある。
一緒にフィオス商業王国を治めてほしいと、心から思う。
ただ、このままではリリアナ嬢も困ってしまうだろう。そこで、私が帰国する前に王太子の花嫁を決める宴が催されることになった。
その際、私の花嫁になるか、王太子の花嫁になるかを決めてほしい。
リリアナ嬢からの色よい返事を楽しみに待っている。
レオニダス・ル・フィオス
手紙を読み終えたところで、便箋の文字はすぅっと消えていき白紙になった。
「文字が消えました……」
「レオの魔法だろう。ああ見えて、れっきとした王族。魔力は強いんだ。リーシェリ商会傘下にいたときも、魔法で瞳の色をずっと変えていたくらいだしな」
「っ!」
なるほど、だからあの珍しい瞳の色に覚えがなかったんですね。納得です。
長時間、瞳の色を変えていられるなんてすごいよ。
私がうんうん頷いていると、ヴィオはぐっと身を乗り出した。
「で、どうなんだ? 心は決まった? クラウディウス王太子殿下の花嫁になるの? それとも、レオ……いや、レオニダス国王陛下の花嫁になるの?」
「そんな……決められません。それに、私が王妃様になるのなんて無理ですよ! もっとふさわしいご令嬢がいるはず……私は、ただ平凡に生きていきたいんです。もし私に未来が選べるのでしたら、どちらからのお話もお断りして……自由な未来を選択したいです!」
とはいえ、それができないからこんな状況に陥っているんだけどね。
私が肩を落としていると、ヴィオがぽつりとつぶやいた。
「……リリアナは、ずるいんだな」
その言葉に、私は目を見開く。ずるいというのは、どういうことでしょうか?
戸惑う私に、ヴィオは鋭い目を向けた。
「リリアナは、レオに選ばれた意味をわかってないんだ。フィオス商業王国では、王妃にも国王同様の才覚が求められる。かわりに、身分は問われない。だから歴代の王妃の中には商家や平民出身の方だっている」
私は、思わず目を丸くした。
シリウス先生の授業でフィオス商業王国について教わりましたが、王妃様がどう選ばれるのかは知りませんでした。普通、王族に嫁ぐことができるのは貴族のご令嬢だけ。これは暗黙のルールです。
「リリアナは妙に謙虚だから、自分が人の上に立つべきじゃないと思っているんだろう? だけど、私はそう思わない。リリアナは、むしろ人を導くために生まれてきたんじゃないかな。だからこそ、特別な色をまとっているように思えるんだ。リリアナは、それをひどく気にしているようだけど……」
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