不滅の国 トワ

もち雪

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苛立ち

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 不滅の国トワの秘密が眠ると言われる教会。

 その地下にの最後の部屋、神秘が眠るかもしれない部屋は何者かに荒らされていた。中央のベッドに寝かされた白い骸骨とその上の鞘にルビーが中央に装飾され彫刻が施された宝剣も例外で無く。右や左へと向いている。

 しかし骨や関節は崩れる事はなくつながれている。何か仕掛けあるのだろうか?

 この白い骸骨が、王子ならこの部屋から出て行ったのは令嬢なのだろう。もし彼が目をさませば、この不滅の苦しみから皆が救われるかも知れない。

 そう思いながら、骸骨の頬にそっと触れる。冷たい……。
 その骨が引っ掛かりが無くすべすべしているが、心が空っぽになる冷たさをしている。

 彼の心は、もうここには無いのだ。そしてここが王子の墓地であり、令嬢の行き着いた場所。

 ―― ザクッ ――
「えっ!?」
 突然、背中から胸にかけて痺れに似た、冷たさを感じた時、胸元を見ると何かが刺さっている。口からは温かい何かがこぼれでる。

 さっきから息をしようとして、ハァハァと荒い息をするが陸へ打ち上げられた魚の様にただ吸おうとして別の何かが入ってくるようだ。

 温かい血によって手が赤く染まりやっと痺れが痛みだったとわかった。切り離された痛みの意識は、未だつながっていないようだ。

 私は王子の眠るベッドに倒れ込み、足の力がなくなっ事でそれよりずり落ちて行かないように、倒れ落ちないようにと必死でベッドのシーツを掴む。しかしベッドのシーツはどんどん私の血によって赤く染まる。

 チカチカと視界の中の画像定まらず、眠気に近い感覚で目がどうしても開けてられない。

 その時、体が跳ね上がる様な痛みを感じだ。
 どうやら胸に刺さっていた何かは、引き抜かれたようだ。
 ゔぅーゔー言っている声、はぁはぁと荒い息、それでも痛さは感じない、2人しか居ないので、どうやら声と息の乱れは私たちのようだと感じだけ。残り少ない気力で振り返ると、令嬢が立っていた。

 ――逃げなきゃ……、もう、死ぬ命だか、3回目の誕生が不死で骸骨なんてとんでもない。

 私は王子のベッドに足をかけて、骸骨のもとへと這い上がる。ベッドが赤く染まるが、白かった骸骨にも多くの血がつき染まって行く。赤い色へとそれを見ながら、暗闇へと、落ちて行く。

           ⭐︎

 ふたたび目を覚ますと、私は一糸纏わない誰かに抱き抱えられているようだ。胸の傷が凄く痛いが、息は先ほどよりは楽に出来るよになってきている。

「ステリア王子……会いたかった! 誰よりも……」

「シルフィル? その血と、この子、君がやったのか?」

「違うの、違うの……」
「違わないでしょう! それで、私を刺した! なんで!?、なんで!?」
 
 気がつくと、そう叫んでいた。我慢していても、痛い目しかあわないし色々限界だった。

 私はシルフィルと呼ばれた令嬢とは反対側を向き、誰かにかばわれている状態だったからかもしれない。

「おまぁぇ……生きていたのか!?」

 ―― カキィーン ――
 王子が動いたすぐ後、飛んで来た燭台がザックっとベッドに刺さる。どうやら、令嬢がまたもや私を刺そうとしたようだ。

「もう、やだぁ……、あいつを倒して……、私を助けて」
 私は駄々っ子の様に、王子の首筋にすがって泣いていると、襟首を引かれて引っ張られる。

 その時、ベッド刺さる燭台が目に入る。金色だっただろう燭台が、今やもう私の血を浴びて真っ赤になっている。

 それを引き抜き、私の襟首を掴んでいる手に打ちつけた。
 
「離して、もうしいたげられるのは沢山、まずはあなたを殺し不滅のトワなんで悲しい国を終わらせる、我慢してもいい事なんてなかったし、もういい」

 私は2回目生まれなおしてから、初めて言いたい事を言った。
 
「来い、何やってる」
 
 シーツを体に巻きつけただけの王子が手をひっぱり、私は無理矢彼の後ろに隠された。

「うるさい! 離せ! 私の味方でもない癖に!」
 彼の行動に怒りが湧き、怒鳴り付けていた。

 そして彼の背に庇われながら、ベソベソ泣きながら彼の後ろから彼女を睨みつける。

 シルフィルと言う名の令嬢も、ゾッとする様な目で私を睨みつけている。

「シルフィル……禁呪を使ったのか?」

「仕方がなかったの!……仕方がなかったのよ……貴方が死に戦況はひっ迫していった……貴方を生き返らせなければ……この国は蹂躙されステリア、貴方の愛したこの国は亡くなっていたわ」

「それでは……トワはもう……」

「トワはあるわ。私が生きている限り永遠に……」
 目の前の王子は、頭を押さえこみ首を振る。

「わかった……。終わりにしよう。おやすみシルフィル」

 王子が彼女の体をその剣で、つらぬくと彼女は力なく倒れ込み、王子は令嬢の体を抱きとめようとするのだから、彼女の体はサラサラと落ちる砂の粒となって彼の腕を通り抜けてしまう。
 そうして王子は座りこみ、彼女だったものを見つめている。
          ⭐︎

「王子……」
 彼女の前にいつまでも……、石像になってしまうのではないかと王子に思わず私は話しかけた。

「なんだ、お前まだそこにいたのか……」
「王子、私は生きたい。そのために貴方の力が借りたいのです」

「私は……私、今やどうでもいい、もちろんお前の事も……守るべき国も無く、愛する人もこの手で手にかけてしまった」

 彼にとっては私は、雑草ほどの興味もないのだ。

「私なんか覚えている最初の朝は、奴隷商人の檻のなからですよ。そして彼女は普通の人の5倍は生きています」 
 
 私は彼の横に、座り込みそんな話しをした。

「俺は死ぬ時、生きいと強く思った。生きてこの国でシルフィルと生きて行きたいと思った。彼女がどうかではなく、俺に彼女が必要なのだ」

 そこまで言われたら、仕方ないのかもしれない。私は彼とってただの雑草なのだし……。
 
「わかりました。王子、命を助けてくれてありがとうございました」

 彼はに頭をさげ歩きだそうとしたが、ドアに進み出ようとしたところで王子に、腕を引っ張られ止められた。

 つづく

 
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