不滅の国 トワ

もち雪

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誕生をへて

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 不滅のトワ、彼の愛した令嬢と彼女が作り出してしまった死者の国。

 しかし彼、ステリア王子はふたたび目覚め、不滅のトワから愛する令嬢を解き放った。そう考えると浪漫チックかもしれないが、私は私の知っているトワについて話した。

 その方が彼女がらどれくらい王子についてわかる様な気がしたから。それを最後まで黙って聞いていた王子は立ち上がり、私もそれに続こうとする立ち上がれず倒れこんでしまう。

 そこでクゥ~っとお腹の音が鳴り、彼は私を城にある温室へ連れて行く。

 教会の礼拝堂ほどの温室では、彼女が王子のために残しただろう、多くの果実がなっていた。王子はその中で、ふさに多くついているバナナをもぎり半分皮の付いている状態で、私に手渡す。

「よく噛んで食べろ、不老不死でも体の拒否反応は起きないとも限らない」

 お日様あたり、温度調整されていたバナナ甘くて美味しかった。それも長い間1人で生きた彼女の研究の成果なのかもしれない。
 
 けれどそんな彼女の残した研究成果や材料をすべて持ち出して、王子は教会の裏庭で燃やし空へ帰した。

 チリチリ燃える炎、その中から飛び出した灰が風に煽られて空高く舞い上がる。そして私たちの視界の中から消えて空へと飛んだのか、それともザラザとした地上の砂に埋もれたのかはわからない。

 王子は、彼女の研究成果だったものの前でまた動かなくなってしまった。

「王子……。ううん、今はただのステリアか……」

「なんだ……?」

「こんなものいくら燃やしても無駄ですよ。貴方がいるもの、私がいるもの不老不死の秘密はここから解き明かされます」

 私は王子と自分を交互に指差す。

「お前は生きたいのか? 奴隷に落ちた身であるのに」

「どうですかね? 王子は痛くしないなら、この場で消える事…………、王子、否定しました? 私の一生を惨めな私の一生を。これでも一生懸命に生きたのに!」

「だが、奴隷だぞ?」

「私は一度、あなたの恋人に殺されてるのに、あなたの恋人の薬のせいで逆戻りなんですよ…………そもそも死ぬのですか? 私達?」

「シルフィルは死んだ……」
「彼女の不老不死の薬には金が足りなかったんですよ」

「あ……。遠征の際頼まれてはいたが、死んだな俺が」

「なら、本当に死なない可能があるじゃないですか……、王子! 私があなたを守ります! たから私を守ってください!」

「何故、俺が?」
「あなたの恋人に作られた、私の仲間はあなたしか居ないからです」

「……、わかった。お前が歪な生を望んだ時はトワの最後の生き残りとして私がお前も砂にかえしてやろう」

「なら、貴方がそうなってしまったら私が止めますなんとして、それまでよろしくお願いします」 

「あぁ、そうだな。その時は頼む」

 私は何とか、王子の説得に成功したようだ……。

 そして私たちは王子改めて、ステリアの部屋で彼の死んでしまった恋人の用意した服を着る。

「ステリア、背中を見て貰えませんか?」

「なんだ? お前には恥じらいというものはないのか?」
 
「ありません」

 私は服を腕まで落とし、ステリアに背中を向ける。

「しろ、いな」

「他には無いですか? 魔方陣にような刺青とか?」

「無い、お前は一度胸に風穴が空いたので、傷として再生したのだろう」

「そうですか……ありがとうございます」

 これでたぶん私は自由の身のはず、もしかして一度死んだので私の奴隷の印は消えたのかもしれない。

 着替えた私たちは、彼女の用意した荷物をもって城から出る。

 大通りには昨日より少し砂が積もったような気がする。

 この世界を守る彼女は消えてしまったから……。教会の横を通った時、ふとステリアを見た。

 
 彼はまっぐに街の外を、見ている。

 そして街を出た時、「ラシク?!」生きていたのか? 博士は私たちの前に居て笑っている。彼には私は不老不死の為の大事な手がかりだ。

「よく生きていたね。私は信じていたよ」

 博士は、私の人権などを尊重しない、横を見るとステリアは剣を今にも抜刀しそうな状態だ。

「博士、私の血を買いませんか? 1ヶ月に100mlそれで不老不死の謎に近づけるかもしれません。その代わり私たちを普通の人間として扱ってください」

「「何を言っているのだ」」

 驚いた事に博士とステリアの二人は同じ事を言った。

「ステリア、今は昔より庶民の管理が厳しくなっているの。身元が怪しい私たちはすぐに、困難な目にあってしまうわ。それに……博士と取引出来ないようなら、どこへ行っても騙され捕まるのが落ちよ」

「ラシクどうしたんだ? 聞き分けの良いお前らしくない」

「博士すみません。奴隷の私は背中の刺青と一緒に死んでしまったので少し子どもらしくなっただけです」

「わかった。君の案を承諾しよう。もう僕らと言う存在が生きている以上彼女成果は消えないしね。そしてたぶん不老不死はそんなにいいものではない。そんなにすぐ普及することや私達が本当に成功例かも疑問だしね。私は君が消えれば居なくなる存在だ。未来の責任まで持ちたくない」

「博士は、目の前で話す私達を、目を見開いて見つめていた」

 そして博士は計算を完成させたのだろう。

「ラシク、お前の案は飲もう、お前がそこまで無策ではないと思うからだ、しかしお前その剣は私の国には持ち込めない。お前のような子どもと違いその剣は国宝級だ。私の出す賄賂よりそちらを取り上げた方が何千倍も潤うからな」

「えっ? 剣とは何の事だ?」
 ステリアは剣を触ったと思ったら、何もなかった様に消えてしまう。

「お前はかわいくない子どもだ」

「どうも」

 ステリアの手続きの為私達は長い間、この砂漠の風景を見ることになる。しかしその手続きが終わると、博士は本当に普通の同居になってしまった。

 切り替えが早くなければ、科学に追いつけない為かはわからないが、私達の誕生の物語はこれでひとまず一息つけたことなったのである。
  
    終わり








 




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