魔王がやって来たので

もち雪

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ふたたび動き出す世界

道すがら(コーヒーも )

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 窓の外で少し、人の話声がする。その声は僕の窓の外を右から左へと移動して行った。その声が聞こえなくなるかならないかの時の、魔王の湯飲みを優しく置く音が静かに響く。魔王はふたたびひじをつき、左にある窓の外の空を見上げながら話をつづり始めた。
 
白銀狐しろがねぎつねは、温厚な種族でな、まぁ……見かけ上はな。」
 
「だから我がふたたび、自らあの物達の里まで赴いたおもむいのは、もっともっと後だ。それに至るまでは、フィーナの様な部下から次々と報告だけを受けとっていた」

「その中のひとつに結婚の報告があった」
 
「フィーナさんのご両親のですか」
 
 そう聞く僕に、魔王を右手を後ろに払うように言う。
「いや、違う」

「最初の結婚の報告は、フィーナの叔父の樹月きづきとあの男の娘、白雪の結婚の報告だった。身体の弱い樹月を思って、早く、少人数だけで祝言しゅうげん白銀しろがねの本家で冬の日に挙げたと聞いておる。娘の結婚式は、あの男にとって自分の力を知らしめる、大切な儀式だっただろうに……」
 
「すべて娘の白雪が跳ね除けて、自分の伴侶の事を思いやってあの男を計画の蚊帳の外に置いたかと思うと、少し胸のすく思いと深く関心もしたものだった」
 
 魔王は、少し笑うがいつもの笑いではなく、そう……不意に思いがけずに道できれいな花をみつけたような笑いに、僕には見えた。

「その次の年のフィーナの両親の結婚式には、我も呼ばれたのだが……。まず、待ち合わせの場所で待っていると、引き車を持った男が迎えに来ていてな」
 
 魔王はこちらを見て、目を輝かすように語りだしたのだが……、戦いでも起こったのだろうか……。

「『我も歩くので大丈夫だ』と言っても車引きの男が、『こういう伝統ですから』と言って聞かないのでしぶしぶ乗ったのが……。花嫁の家に行って迎える間も一番後ろで、眠気とそれはもう格闘しておった」

「しかし花嫁が、白銀狐の当主と並び歩き出すと晴れているのに、小雨が降りだしてな」

「こちらの方でもよく聞くのですが本当にあるのですね、狐の嫁入りで天気雨が降る事……」
 僕は、昔話で聞くことが真実であって少し関心した。

「ある」
 魔王は顔を近づけばかりにしてうなづくが、恥ずかしくなったのだろうお茶を飲んだ。

「あの少しお茶を足しますね」
 僕が言うと、魔王は少し思い出した様に――。

「すまんが、あのコーヒーというものにしてくれないか?」と、少し気恥ずかしそうに言う。

「はい、あの牛乳入れますか?」

「うーん、任せる」
 
 新しくコーヒーカップを用意し、そこにインスタントのコーヒーを一杯いれ、お湯を注ぐ。
 
「どうぞ、まず飲んで苦い美味しくないとかあれば、凄く自分に合う飲み物ではないと僕は思うので……。牛乳や砂糖を試してください」
 
「そんなものなのか?」と魔王が、問うのでーー。

「知りません?僕はコーヒーを飲むって事について習ってませんし。そういえば、うちには砂糖の初めから入っている、甘いコーヒーあるのでそちらにしますか?」

「甘い飲み物か……」魔王が、不満を呟く。

「今、僕はだいたい味に区切りをつけたくてコーヒーを飲むので……苦くなければ……いいかな?っとこのコーヒーに、牛乳を入れて飲みますが」
 
「まぁー任せる」

「では、どうぞ一口」魔王に僕が笑顔で言うと、魔王は一口飲んだ。

「わからん」

「そうですよね……なんかわからないけど、僕は一日に2杯は、コーヒーを飲んでしまうんです……」

「そいうものか?」

「さぁ?」

 つづく
 

(題名は:道すがら→ 道の途中→ 話の途中のコーヒーにつながってます、すんごい無理やり)
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