魔王がやって来たので

ホイルトツェリオ魔法学校

真のラスボスかもしれない執事

　ホイルトツエリオ城下街の最後の買い物は、カレンダー。カレンダーと言えば書店だと思うが、異世界でも書店なのか……それとも専用のカレンダー店へ買いに行くのだろう。そう思いつつ歩いてると、ぬいぬいが、「ここだ」と言って止まった。いろいろな柄のカレンダーがあり、店先はうるさい。

　……うるさい？

　目の前のカレンダーの商品名は、『ミスターマダムの占いカレンダー』だ。

「そこの変な星の元に生まれた青年よ、来なさい」
　
　カレンダーの中の紳士が、僕を呼んでいる。シルクハットに蝶ネクタイ、お洒落なジャケット来ている。彼は、不意にシルクハットをとり、カレンダーの中からシッルクハットを僕に差し出す。

「さぁーこの中に、手を突っ込んで」
　僕は、中に手を入れると、何かに舐められ！

「わぁっ」
　慌てて手をだすと、紳士が大笑いをしだす。

　ほぉひほぉほぉ……今日の貴殿の運勢は、中吉。貴方は素敵な買い物が出来るでしょう」
　
　そう言うとシルクハットに、入ってしまい煙の様に消えた。

「ルイスさん、これは当たってますね……。占い方は、アレですが……」

「こちらは、一部で人気の品カレンダーでございます」

「中の人物も日によって、社交界の貴族をモチーフに方ばかりがですし」

「ただ……」
　彼は、口もとに手を置き話のためを作っている。

「ただ？」

「カレンダーの日付は、中の人物のどこかに書かれているか、わからない部分に表示されていて……わかりにくいのが、難点ですね」
　
　ルイスは、残念そうに、首を振りながら言った。周りから彼を見ると重大な出来事が、彼に起こったように思うだろう……。
　
（しかし今まで彼を観察した結果……こう言った方が、おもしろいんじゃないかな？って理由でそう表現しているだけな気もする……）

　僕のいぶかしんでいる視線に気づいたのか、ルイスはにこっと笑う。

「毎日、舐められるの辛いので、違うのにします」

「まぁそれは、もっとものご意見ですね。では、あちらに社交界で……」話は、言い終わる前に……。

「一般市民が買ってるものは、ありませんか？」と言うと、ルイスは「そうですか？貴族の皆さんがご購入する物は、みな面白い物ばかりですよ」
　
　ルイスはそう残念そうに言った。

「では、こちらの品などどうでしょう？　月と日付だけのカレンダーなのですが」

「いいですね、こういうのメモを書けるスペースもあって」

「はい、私も毎年これを買っております」
　
「ルイスさん……こういう時って……お前も買ってるのかよ――！　って言うべきですか？」

「それとも……せめて、社交界で、流行りのカレンダーであってくれ――！　も追加して言った方がいいですか？」

　僕は、冷静沈着に聞く。それに対しルイスも、紳士的に笑顔を絶やさず。

「どちらでも、その度胸がおありなら」

（うん？　この話の真のラスボス登場（発覚）のシーンて今？　）

「ルイスさん、面白がってますよね」　

「はい」ニコッ

　キャーーッ

　何故か知らない間に、人（女性）の人だかりが出来ている。そして、みんなルイスを見てる。ルイスが、笑顔を振りまく。ナンダコレ。

　「あ……ナンカアッチニ、ミタイカレンダーアルナー行こう！」
　
　僕は、ルイスから距離をとるべく、店内に逃げた！だが、にげられない！

　とりあえず、ルイスと一緒にぬいぬい達の所へ行く。彼は、奥で巻物を、物色していた。その体制のまま僕に話を聞く。

「どうだった、外は？　」

「大変でした、なんか女性が……」
　僕は、大変さを伝えようとするが、ルイスは、涼しい顔である。

「ルイスか……有名な家系だし、人当たりがいいし有名税だろう、俺も噂は聞いたが、悪い噂じゃないから大丈夫だろう。ルイス、これを買うからよろしく補助用魔法のヒエログリフだ。ハヤトに覚えさせる」
　
　ぬいぬいは、集めた何本かの巻物をルイスに見せる。ルイスは、それを受けとると素早く品物と値段を確認した。

「ヒエログリフってあの？　」

「そうだ誰かが、こちらへ持ち込んだらしい。最近ヒエログリフに、こちらの魔法が載りやすって事を発見した奴がいる。だから補助魔法を、呪文の詠唱えいしょうとこの絵文字の相乗効果で、一瞬にして覚える事が出来るようになった。まぁ精霊の要素が強い攻撃魔法には、まだまだ使えないが、その内解明されるだろう」

「で、カレンダーは、決まったか？」

「文字だけで、メモが出来るものがいいと思っています」

「あぁ、あれかうちも使ってる。最近どこでも見るなぁ」
　
　僕は、驚いてルイスをみた。ルイスは、凄い勢いで横を向いた。きっとそっちの方が面白いと思ってやってるのだろう。
　
（同じオチは、あまり続くとだれるからな……）

　　　つづく