魔王がやって来たので

王の命

彼の部屋で

　畑仕事を、終えいつの間にか眠りについてしまった僕は、夜中に目を覚ます。顔や手や首筋が、熱いし痛いのだ。これは、たぶん日焼けのし過ぎだろうと思う。ルイスの部屋へ助けを求めるか、兵士の練習場へ行って夜勤をする人の中で、回復魔法を使える兵士を探すか、どちらにするか少し考えたのち、寝巻用のジャージでルイスの部屋へ向かう。

　トントン扉をノックするとすぐに、部屋から音がわずかにし、ルイスが出て来る。ルイスは、黒いガウンを、身につけいつもより少し髪が乱れていた。

「どうしましたか？」彼は、扉に体をさし込むようにして僕に応対した。

「夜中にすまないが……、日焼けがひどくって寝られないんだ……」

「あぁ……そうですよね……じゃ部屋へ入ってください。この際、回復魔法も覚えた方がいいでしょう」

　彼は、燭台しょくだいの蝋燭ろうそくに火をつけ、僕をベッドに座らせる。

「まず、ベッドの隣にあるサイドテーブルの上の、皿の中の大豆を1つ、手に取ってください」

（わぁ、凄く準備されている……）

　彼は、僕の手を、握る。

　「待ってください！　魔法を、使う時、補助にもう一人いるのでは？」
　
　彼は、僕の腕を握るため、下を向いている顔の、目だけを、動かし僕を見る。

「貴方は戦場にも、補助の人物を、連れて行く気ですか？　ここに貴方の為に命を張る人物がいるのだから、絶対失敗しない心構えで魔法を使ってください」

　そう言うとルイスは、腕に視線をふたたび戻し集中する。ルイスから流れるのは、むせかえる若草の緑の色、匂い、生きずく水すべてが清浄に流れるイメージ。

　そして少しのフィーナの記憶と思い出。

「治療完了しました。」彼は、静かに手を放す。「では、お願いします」

　ルイスと同じ様に、大豆を通す。だが、うまくいかない。

「うっわぁ……、本当にしょっぱなから何かを、混ぜて来るんですね……ドン引きですよ……」

　（そこまで、言う事だろうか？　もう1回パンチ入れとくべき？）

「ちょっと今のイメージに、ついて教えてください」彼は言った。僕は、イメージした、若草の緑、その匂い、水、そして恋人をイメージしたと伝える。

「木の属性に、普通は生物のイメージは、入りません。人間が魔法で、回復するのは、人間の原初の部分と木の属性が似通っていたり、相反あいはんする働きが相乗作用を起こすためです。しかし貴方恋人の場合は生物なので、木の属性としては、存在が大きすぎます。彼女と感じた、理由は今後考えるべき問題ですが、今ではありませんので、今は忘れてください」

　僕は、大豆を見つめ新に彼女以外のイメージを、すべて合わせて１つのイメージとして構築する。その時、ルイスの声があがった。ふと見ると、大豆の部分から下にさがって根が出ていた。いや、昔の理科の授業の事を思い出すと、大豆が上に伸びたの部分を掴んでいたからそう感じただけかも？　とりあえず僕は成功した明日の為に寝ないと……。

「じゃーこのベットの下に、プランターの沢山入った箱があります。もう豆は私が蒔まきましたので、まずはこの１２個の芽を、発芽させてくださいませんか？　わたくし朝一番に、魔法学校へ行きまして成果を見て貰うつもりです。その間に協力してくださる農家からあの畑分の量、これと同じ物が届きますので、それをこなしていただいた後は……」

　ルイスは、自分のテーブルを探る。何が出て来るのか……不安しかない。

　「こちら今日、私が使用した、日焼け止めと同じものなのですが……良かったら使ってください。それを使って今日の畑作りの続きを、していただければ大丈夫です」

「大丈夫ジャナイデス」僕は、棒読みで言っていた。そしてルイス行為は、すべて大丈夫じゃなかった。成功だけど、やり方が、趣味の全振りされていた。

「ハヤト様……出来る事はしましょう。それで死ぬことはないです。水分、塩分補給は、こまめに。休憩もとって頑張ってください」

「わかりました……頑張ります」ルイスが、言った言葉の前半は、昨日……僕が言った言葉だった。それを言われたたら、もう……何にも言えねぇ――――！


　　　　つづく