魔王がやって来たので

もち雪

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さよなら海の見える街

海底遺跡の報酬

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 海底遺跡から臨時の帰還をし、死者は蘇り、人々は彼らに群がる。

 そしてルナに蘇生を受けた人間は語る。
 
「なんか、花畑があったっす!」「川を見た気がする……」

 それを聞いてサルメスの仲間は、言う。

「「それじゃ、酒は飲めねぇ! もっと面白い話持って来い!」」

 元死人に、ムチ打つ行為である。しかし最後の死者が起き上がった時、彼は語った。

「サルメスは、どこだ? アイツ油紙に包んであった爆弾全部吹っ飛ばしやがったか? それとも俺が空中で見ていたアレは、俺の夢か?!」

「おぉーーーー!! さすが副長だ! すげぇーーネタ持って帰って来たぜぇ!!!!」と、酒瓶を片手に走り出した男を追って、副長は行ってしまった。

 ーーおちおち、死んでられない……。

 サルメスが、救護用のテントから出て来た時、ほぼみんな酔っぱらいだった。なんと副長も静かに手酌で酒を呑んでいた。

「これはまずったなぁ……、これでは明日まで酒がもたん。ハヤト、まだいけるか?」

「こっちは全然戦ってませんからね。いけます」

「あの先は神殿だ。戦いはもう無いだろ」

 僕のパーティーに、サルメスは入りふたたび海底遺跡にダイブする。
 
 今度はルナも一緒だ。気を抜いたわけではないが、結局のとこ、いつもの形が僕らのベストな姿なのだ。
 
 魚のエリアに微生物くんを放ってから、次のエリアに入った。

 魔石は無いだろが、神殿前を汚したままにするのは気が引けた。

 中に入ると、外の黒一色とは真逆に、大きく太い柱の白亜の神殿がそこにあった、そこに1人で我々を出迎えるギリシャ神話系の巫女が居た。

「神殿前に災いの魚が、棲みつき困っていました。御礼に貴方が、望むものを差し上げましょう」

 僕らは顔を見合わせる。欲しい願いの幅が、多すぎるのだ。

「言葉は、不要です」

 彼女は僕の心臓あたりを、指先さす。

「『ちからを』そう言えば力得る事も、与える事も出来る力を授けます。効果は2時間、重ねがけは無効です。使い方を全て把握するまで、1日1回としてください」

 そう彼女は言った。薬の処方のようだ。

 しかしサスメスを前にすると、勝手が変わる様で……だいぶ厳しい顔をする。
「お酒についてはあまりよくわかりませんが……、呑み過ぎです。休肝日を作って!」

「なんで、俺の時はそんな医者みたいな事を言う? お前は、俺の女房か? それとも俺の女房の親戚かなんかなのか?」

「一般常識でしょう? では、あなた達にはこれです。あなたの一生分、無くならない酒瓶です。飲み薬が出る日は、そのままそれを飲み寝てください。そして良い事を1つお教えしましょう。あちらの勇者のお友達のおかげで革新的にお酒の質が変わります。それを呑まずして貴方は死ねます? ふふふ」

「ははは、俺の事をよくわかってるじゃねぇか? さては、俺に惚れたな?」

 そうサルメスが言った時、彼女は霧のよう消えた。サルメスは首の後ろの少し上を掻き「あの女、俺がカッコ悪いみたいになったじゃねぇか……」と、つぶやいた。
 
 こうして僕らの海底遺跡の探索は終わった。

 ――後、魔王は、酒にも手を出す気なのか? もしくは違う友達??

 帰ったら、もう夜になっていて、サルメスの酒瓶は次々と飲み薬を精製していったが、次の日の二日酔いの野郎どもが、結構いて帰るに苦労した。

 どうも飲み薬は内臓にだけ、その効果を発揮する様でサルメスは愚痴ってたが、「サルメスさん達にそんな薬を渡したら、身体を壊すだけだからじゃないですか?」

「お前は今まで、見た中で1番の極悪人だ」って言われてしまった。

 サルメスは、一生、僕の事を忘れる気はないらしい。

 後、『ちからを』得て、帰りのジャングルで楽しげに、ナタをふるっていたぬいぬいは、その次の日と言うか、街への帰り道に腕に激痛が走って苦しむ。

 ルナに見て貰ったところ、筋肉痛らしく「回復させると、ほんの少しですが身につくべき筋肉量が減りますよ?」と、言わてぬいぬいは、ルナの魔法を頑なに拒否し続けた。

 心配していたオリエラに「可愛さが半減するから、回復を受けて」と懇願されて、そこで「可愛さのためではないからな?」と、言ってやっとルナの魔法をうけたのだった。

    続く
 
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