魔王がやって来たので

さよなら海の見える街

新しい武器

　旅立ちの用意を揃える。そのために、海からの冷たい潮風吹き抜ける、ソイルドソレルの街をルイスと並び歩いていた。ミッシェルはその後ろを歩く。

　魔法道具屋へ入ったら半日は出てこない、ぬいぬいまだ魔法道具屋にいるのだろう。「この前一緒に飯食ってきた」って言ってたけれど、どうしてそうなった？

　「ハヤト、今後しばらく大きな武器屋は無いようですが、どうしますか?」

　僕らは武器屋の入る前に、僕らは立ち止まる。異世界の武器屋はどちらかというと、バーゲンセールに似ている。その国の流通事情により、思ってもみない武器が、時に売り出されている。形見の品や借金のかたに売られたり、お得なものが店先に、もしくは知り合いに見つからないように僕を待っている。

　しかしやはり店先から眺めるだけでは、やはり秘蔵の槍は見る事は出来なかった。でも、店の奥では今日は売っているのかも?

「ハヤト、こちらの槍です。でも、さっきの槍も充分良いものですよ」そうルイスは言う。

　武器屋の親父に当たり外れはあったが、ルイスの知識は嘘をつかない。そう考えるとルイスの言われるがまま買いたくなるが、慎重に武器について考える必要がある。

「それはわかっているけど、今、使っている槍は、穂先十字なっていて、剣など奪い取る時には、有効なんだ。しかーし魔物は剣に限らず、得物えものを持っている事が稀で、そこを活かしてきれない。なら、切り付けられるように穂先のみした方が今後の戦いに活かせるとも思えて決められないんだよねー」

「しかし魔界に入れば、その限りではないかもしれません。魔族は人間とほぼ変わらず貴族の様な暮らしをしていると聞きます。なら、武器を使う筈です。彼らは配下の成果で身をかためる。それは無駄であるほど良い。なら、見栄えの良い中途半端な武器をぶんどって、原始的な自前の爪や牙の武器を原始的だと嘲笑い相手を怒らせ隙を突くべきです」

　ーールイス、どうした？　以前、魔族ともめちゃった？
　
「まぁ、勇者さんの言う事もわかります。しかしそもそも槍が使われる場面は、馬に乗った状態での一騎打ちがメインでした。でも今は冒険者が迷宮でたたかっている。戦い方が変われば好まれる物変わるものです。ならどうするか、今回は槍ではなく、サブ剣を持ちますでしょう？　ならそれをいいものにしてみては？」

　――いきなり僕らの会話にわって入った人物。最初、誰？　と思ったが、普通に武器の定員だったようだ。

　やはり彼らはカウンターから出て、気軽にお客に話しかけるのだ。僕は映画の方が正解かぁ……。と、勝手に武器屋の自分の認識を書き換えた。

「で、ここでご相談なのですが、勇者様と同じ日出る国の老人が、彼の刀の後継者を探しているのですよ。同じ国のご出身なら、きっと譲ってくださると思いますよ」

　しかし残念な事に、僕に武者の心は無かった。

「すいま「お幾らですか？　購入を考えたいと思っています」

　――は？　一瞬、丁寧なウンディーネかと思った……。後、先考えず、良いものに飛びつくところは、案外、ルイスは似ているのかもしれない。
　
「ルイス…刀は、本当使い方難しいだって！　よく知らないけど、たぶんそうだよ」

「うちでは情報料だけ貰う事にしていますが、それは爺様から一括で貰って居るから無料だよ。はい、これ住所ね」

「さぁ行きましょうか？　ハヤト！　ミッシェル！」

「僕は行きませんよ……。そう言うのは山奥や人里離れた村でしょうから……。二人のことはぬいぬいさんやフィーナさんたちに伝えますから任せてください！」

　――ミッシェルは、確実に成長していた……。嫌な事は嫌と言いつつ、自分の仕事をさりげなく伝えて、最後に清潔感を出す。ルイスの指導の成果であった……。

　そんなわけで、僕とルイスは街外れの家の前に来た。
　老人になって、街の外暮らしはやはり現実的でないのだ。

　家は、こだわりの日本家屋にほんかおくでは、なく一般的な作りの家で、僕は木のドアを2回のノックすると確かに、日本人の老人が出て来た。たぶん。

　しかし服装は一般的なこの国の服装だ。

「こんにちは、草薙と申しますが、武器屋で刀の話しを聞いてこちらに伺って参ったのですが……」

　お爺さんは、僕とルイスを見比べて探る様にみている
　
「俺は弥一と言うが、どっちが刀の希望者だ」

「二人ともです。私たち旅をしていますので、時間もわずかしかとれませんので、才能ある方が譲り受けられたら……、そう思っております」

「ハヤト、家に帰ったら少しお話をしませんか？」

　――やばい！？　ばれた！！　弥一老人は、日本人である僕の顔を見て、日本語で話しだした。

　……なので後で言い繕えばいいやと思い、ルイスも修業者に引き入れようと画策したら、普通にルイスも日本語で話し始めた。

　新たなピンチを迎えた中、僕らの剣術訓練はその日の内に幕を開けた。

　僕はもともと槍をやっていて、得物を扱うという事には経験があった。剣道も久方ぶりではあるが心得えはあったが、ルイスはすべてにそつがない。

　弥一さんが、ルイスを見て赤べこみたいになっている。そう思ったのは通って5日目だった。

　ちなみ槍の練習も帰ってやるので、この5日間はちょっと記憶に残ってない。
　
　そしてルイスも執事業や事務やっているので、どっこいどっこいの忙しさだった。しかし回復職が大勢いるから、こなせたのだろう……。

　そして6日目、弥一さんは言った。「二人ともまだまだ鍛錬が必要であるが、若い頃の私をゆうに超えている。しかし刀は１つここは2人で、刀を賭けての一度きりの勝負をし、その勝敗にて所有者を決めるがいい」

「わかりました」ルイスは静かに言った。あれは絶対にわざと負ける心構えができている……。

「いえ……失礼ながら、我々はパーティーです。我々には我々の戦略があります。そのためこの刀の行方を我らがパーティー内で、決めて問題有りませんか？」

「そうだな……それもいいだろう。どっちが勝ったとて、二人ともこれからも修行に励むようにな……」
　
「「ありがとうございます！」」

　そうして我々は刀を得た。

「凄い、前、後衛になれる人が増えて、戦略の幅が広がるね。師匠！」

「そうだな、頑張れよ。ルイス！」

　さすがに大人として、オリエラの前では失態は出せないらしく。ルイスは大人しく引き下がった。

　それからはルイスも、僕らの前衛稽古に顔を出すので、やはり彼は根は真面目だ。

　　　　　続く