魔王がやって来たので

もち雪

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女王のおさめる国にて

クリスマス

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  現役の囚われの身の勇者の僕は、中庭のベンチに座り肩肘だけ背もたれにかけて空を見ていた。
 
 僕の騎士のウッリマリアの髪は燃える様赤く、今日もハンサムだ。

 そして僕の隣りで、僕の行動に眉をひそめているが、何にも出来ないのに何をやればいいのやら?
 
 せめてウッリマリアが、内情に詳しく理性的な人であったなら、僕は探偵並に聞いてまわれのに……。
 僕は思い切って聞いてみる。
 
「僕の騎士のウッリマリアは、僕が逃げたらどうするの?」
 
「逃すわけがない!」
 
「もし、もし逃げたら?」
 
「何処まで追って行く。初めて会った時、そう言わなかったか? そうなら今、言うが女王の言いつけ通り私は魔界への門くぐる事は絶対にさせない。何をおいても」
 
「へー、では一緒に来るのはどう? 手間が省けるよ」
 
「必要とあらば、だかその場合もお前の言葉に耳を貸す事はない」

 ドカァン! ドアカァーン!
 
 その時、時がコマ送りの様になる。何部屋かの壁が、一斉に破壊されたのだ。
 
 木片と窓ガラスのカケラがキラキラと、ふって来る。そして僕は言った。
 
「メリークリスマス! プレゼントを配り行くから、行こう! 勿論、ここの城の王子様のところに!」
 
「王子の居場所を、知っているのか?!」
 
 やっぱり彼女は、僕の首を絞めてくるので、足を掛けて転ばす。

 しかし受けみを、とってすぐさま立ち上がるし、本当に最悪。

 その時、待ちに待った緑の煙が上がった!
 
 僕はそちらへ走る。はたして彼女もついてくるのか? もう、そこら辺は賭けでしかなかった。
 
 向かった先に、ルイスとルイスの手紙を持って来たメイドが居たが、いまではメイドは黒い泥棒の様ないでたちをしている。

 そして2人が指さすのは地下の牢獄の窓、僕はここ壊すのか…… 。どうしよう?……て考えていたらルイスが動き、ウッリマリアとルイスが剣で攻めぎあっている。

 ――これは僕を後ろから切り掛かっての、流れなの? 騎士として大丈夫?
 
 僕は彼女を呼ぶ。
「ウッリマリア! 動く前に思考しろって、僕は言わなかった?」
 
「なんだ偽勇者め!」
 
 酷い言い草だなぁ……。
 
「ウッリマリア、サンタを待つ、子供が居る。君の大切な王子だ!」
 
「言っただろお前は敵! 絶対話しを聞かない!!」
 頑なすぎて、泣いちゃう!?

「ハヤト!? 彼女に何をしたのですか!?」

「ルイス、なんで出鱈目な彼女の言い分を深読みして、僕のきょらかな心を疑うの?!」

「ハヤト、私は貴方を信じていますよ! だから、ポセイドンと貴方が知り合いだと、貴方が言っても私は貴方を信じました!」

「うんうん、ありがとう。でも、それはサキュバスの見せた夢だから! 今、ここにあげていい例えではないから!?」

「偽勇者! ルイス卿までたばかったのか!?」

「どんな文脈を読んだら、そんな意見になるの!? ウッリマリアは、本当にわからずやだ!」
 
 そう言って彼女が動けないのをいい事に、彼女をツタでグルグル巻きにする。

「ちょっとこのわからずやの僕の騎士を見てて! 僕の仕事をこなすかさ!」
 
 そして牢獄の前の土に手を付き、その前に畳、2枚分の土を圧縮していく。
 
「急いで時間かないわ!」

「失礼、ミィニャ今、下手に口を挟むと貴方がたの王子は死にますよ」

 圧縮した土の球体にし、下に適当に落とす。

 後は外壁として組まれ岩が残った。中の少年は驚くほど静かで、悪い想像が頭によぎる。

「そこに居るな離れて、こちらへ来ると下手すると巻き込まれてしまいますよ」

「わかった……」

 声が答えた。彼は生きているのだ。

 岩を魔法で揺らす。けれど岩は扱った事がない。

 だからより慎重に僕は中間の位置から、岩を崩して行く。その間に、牢獄の中が慌ただしくなってきた。

 そしてやっと人が安全に、通れるくらいには穴を開ける事が出来た。
 
 そして少年は、ぼくの前に現れた。

 オリエラより若いくらい、彼は清潔では無いが、不健康ではない。清潔にするのには、容易いがその逆は難しいからね。

「メリークリスマス! 助けに来たよ」

「俺はもう、夢みるような子供ではない……だが、ありがとう礼を言う」

 ずいぶん切られていない長い髪の彼は、疲れきった様にそう言うのだ……。

 ちょっと最悪なクリスマス気分になった……。

 でも、彼はそうでない事を信じたい。
 
 彼を先に穴から出す。
 
 彼は、彼のための騎士ウッリマリアの姿を見るやいなや「すまない彼女を解放してあげてくれないか? 彼女は本当に善良な人だから……」

 彼の顔を見た時から泣いていたウッリマリアが、それを聞いた時には声をあげて泣いた。

「駄目です! 今、この場で感傷に浸り泣いている騎士なら、今の貴方に必要ありません! この場へ、置いていった方が貴方と彼女の為です! このままなら……彼女は逆賊の汚名を受けずに済む。しかし彼女結局は追って来るのなら結果は同じでしょう?」

 若き王子と、彼の騎士は、同じように信じられないものを見たような顔をして僕を見た。

 しかしやはり最初に立ち直ったのは、王子の方だった。深く目をつぶり、「行こう!」僕たちの方を見て言う。
「行きましょう、ハヤト」

 僕らは退場する時は来た。

「だから言ったでしょう? その場限りの感情に流されるなと……」
 
「王子待ってください! 王子!」叫んでいた彼女は、黙り僕を見た、彼女の目は僕に対する殺意に満ちていた。これはダメだな。

 そう思い、僕のきびすを返してルイス達の後を追う。

 その時、恐ろしい音を聞く。ブチッブチッと……。
 振り返ると、せん切れたツタをまとい彼女は立って居た。

「勇者、お前は本当にいけすかない! 人間には感情があるのだ! それを止めろと言うお前など大嫌いだ! だが、だが……、もう、いい! どうせ私はお前たちについて行くのだ! なんの文句もないだろ!!」

 そう、彼女は言うのだ! 可笑しくと、可笑しくてしょうがない! 王子には、望まなくとも彼へのクリスマスプレゼントはみずからついて行く。

 今までで最高のプレゼントを見た! そんな今日にメリークリスマス!
    
         つづく
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