魔王がやって来たので

もち雪

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女王のおさめる国にて

僕の賭け

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 僕ら城から出ると「こっちだ」と言う御者に呼び止められ、メイドの彼女に言われるがままその幌馬車ほろばしゃに乗った。

 しかし彼女は馬車には乗らなかった。

「ルイス、なぜ彼女は乗ってないの?!」

 全てが、半信半疑の今の状態で、彼女の不在はとても僕を不安にさせた。

「大丈夫です。ハヤト、ミィニャとの約束はここまでだったのです。彼女を疑うのはわかりますが、彼女は僕らに切り札はちゃんと置いて行ってくれました。これで最悪な状況は免れますが……」

 そこまで言ってルイスは、王子とその騎士をみた。そして彼と僕の知っている事を持ち寄って、不確かながら真実を探りだそうと、僕らを乗せるこの馬車が目的地に着くまで話しあった。

          ⭐︎
 
 そして馬車は目的地へ着いた。

 そしてウッリマリアは言った。
「何故?! 馬車が我々、騎士団の夏季練習場に?!」

 ここは、君の知っている領域なんだから、なんでも僕らに聞くのは辞めてよ。って、思ったが、王子も居るし……。
 
「それは後で話します」って、その場を納めた。
 
 ルイスは王子に寄り添い、王子の身支度を整えにいった。ここでは多分、彼ほど心の疲れた王子を癒やせる適役は居ないだろう。
 
 そして僕は、話し声のする部屋へと入った。
 
 僕が入るとスフィンクスとウンディーネが、とんできて「なんで主様いなかったのー!?」と、言って泣いているウンディーネの頭を撫でて「ほら、スフィンクスが、お腹を撫でて欲しいって、一緒に撫でようか」と言ったら。ウンディーネも撫でいた。
 
 そしてそんな僕らの横にフィーナが来た。
「お疲れ様でした」って、彼女もスフィンクスを撫で撫でする。
 
「ありがとう。フィーナ、君たちはどうだった? 大丈夫だった? 怪我してない?」

 僕は矢継ぎばやに、聞いてしまう……。

「皆さん、紳士的でしたし大丈夫でしたよ。 暴れるチャンスを逃しちゃいましたー」って少しすまし顔で、彼女は言った。

 ――フィーナの言葉にそんな!? とんでもない!と、言いたい気持ちは、もちろんあった。

 しかし僕の好きになったのは、魔王の部下の女の子なわけで……だから僕に言えるのは……。

「お手柔らかお願い」ぐらいだった。
 
 そんな事やっていると、ウッリマリアが僕の後ろを歩いて行き遠くに座った。彼女は足音だけでわかる。

 だから僕の部屋の前の廊下で、寝泊まりする彼女に、僕はどれだけ神経をすり減らした事か……。
 
「邪魔して悪いが、ハヤトそろそろいろいろ説明してくれないか? 皆の情報が断片的過ぎていまいちわからん」

 そう言うぬいぬいに、僕もルイスもそこまで、わかっているわけではないのですが……と。

 前置きし、上座の椅子の後ろに立った。
 
「今、この国は多くの勢力が入り乱れて居る様です。まず①女王、彼女わかりやすく全ての権利を手にしてました。どれくらいが丸め込まれて居るかは僕にはわかりません。②騎士団、彼らはやはり法律上は、女王にしたがって居ますが、王子を探していたようです。決定的な対立はしませんでしたが、まぁ対立しますよね。王子の行方がわからなければ。③ミィニャと名乗るメイドが、ルイスに頻繁に接触をとり、多分騎士団にも接触して今、僕らは騎士団の夏季練習場にいます。彼女は何処の所属かわかりません。でも、今回彼女の働きが大きい。そんな人材を育成出来る組織で、騎士団にも顔がきく」

「教会か……」

「たぶん。ギルドの線も考えましたが……今いち動機が弱いんですよね……。しかし教会関係は、おかしな事が多かった。いずればれる事でしょうけど、ルナをすぐさま呼び寄せたり、その情報はどこから仕入れたのか? 僕らと一緒にしておけない事情かあって、怪しまれても早く呼び寄せたかったみたいに……」

 僕の話しを聞いてもルナは動揺も、焦りもしない。ただ僕の話しを聞いていた。彼女も聖女という立場で、知る事があるのかまったくの検討外れなのか?

「僕に最初この事件の触りを教えてくれたのは、ウッリマリアの代わりやって来た体の大きな騎士でした」

 その時、ウッリマリアは大きく目を見開いだが、堪えたのだろう……黙っていた。

「女王が僕たちを呼び寄せたのは、2つの理由があのだろう彼らの解釈を教えくれました。①勇者が逃げるだろう事を見越し、僕らと、逃した騎士団をペナルティを与える為の様です。しかし僕らは逃げず、彼女の弱みとなる王子を奪還出来た。②もう1つの理由は、凄く馬鹿げてて無視していいんですが……。僕はどうやら女性陣の皆さんと、重婚してると思われていたので……誘ったら仲間になると思われていたのかもしれません?」

「あれが!?」

 と、思い当たるふしが沢山ありそうな僕の番犬騎士が言った。
 彼女が頑なに離れなかったせいで、僕は面倒な事に巻き込まれなくて済んだようだ。

「そして彼は王子が見つかり次第、ある女性と一緒に王子を救出して欲しい。合図は緑の狼煙と教えてくれました。さすがにクリスマスに事が起きるのは出来すぎ!と、思いましたが」

「では、お前はあの時まで知らなかったのか?」

「うん、僕だけかどうか知らないけど、僕は鉄壁に近い隔離をされてたからね。でも、知らない事がばれると、追いかけくれなさそうだから頑張ったよ。君にはついて来て貰いたかったから」

「呆れた……」そいってウッリマリアは片手で顔を覆い、指の隙間から僕を見た。そして僕はにっこり笑う。少しルイスの気持ちがわかった。

「これから予想される事と言えば、僕たちにかかる逆賊の容疑。他国へ王子を連れて逃げて、王子に証言させても、ムーンドルイでは王子を殺し、偽王子を仕立てたと言われるかもしれない。最悪は、王子を連れて逃げた先の国へ、ムーンドルイ国民が兵士として攻め込む恐れまである。たぶん負ける事はないが、後味が悪いよね。ちなみに負けない理由は、女王に遊牧はまとめられないと思う事。例え女王が王子を名前を出して遊牧民をまとめるならこちらも王子を出せばいい。僕らでなくても、冒険者を使えばいい、だから逃げ延びる事なら容易いと、僕は思う。そして教会もうたぶん助けてくれません。女王煩わしい存在だが、教会自身を危険に晒す必要はない。切り札の王子を上手く使えない、僕とは手を組んでも意味がないよねたぶん。はい、話したよ。王子の騎士、後は、君と王子がどうするだ」

 僕は彼女の顔を見た。かっこつけてみたが、本心では彼女に早まって欲しくなかった。

 でも、結局は彼女たちの国の問題で、魔界に向かう僕らはその手助けはいつまでも出来ない。
 
 僕がいつも何かについて、問われるように彼女もその道を自分で選んだのだから……もうこれから先はしばらく逃げられない。

     つづく 
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