魔王がやって来たので

もち雪

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女王のおさめる国にて

王子のための作戦会議

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  僕が机の前に座り待つ、ルイスの気持ちの話もあったけれど、まず足元から固めないと、ってわけでぬいぬいの前に集められた一同が揃った。

 いや、それ以上に揃った。

 彼の前には多くの地図が糸によって縫い合わされている、地図帳が置かれている。そしてここ騎士夏季練習所の名称が地図に書かれている。

 集まった者たちはほぼ、ぬいぬいの作戦が広範囲の及ぶ作戦と理解し、「スフィンクスは見えなーい」と言って飛びあがりそれを見た。そして「あんまりおもしろくなかったねー」と、言って寝ちゃった。
 
「ウッリマリアこの地形だけど……、この小さな湖には、この大きな川から新しい人工の用水路で水を流していて、それはこっちの大きな湖がそれ以前にある年の干ばつでもうなくしまったからではなかった?」

「はい、その通りです、王子。後、この辺りにイカれた魔法使いの残りした、魔法の跡が小さな湖になっています」

 そんなだいそれた事をしそうな魔法使いを、僕は1人知っていた。ここにいる多くの人々が、同じ考えに辿りついたらしく、皆、ぬいぬいを見ていた。

「何故? 皆、俺を見る? それをやったのは俺じゃ無い。ここの近くにシンドラルの迷宮はないだろう?」

「そんな名前の迷宮は無いが、迷宮はある事はあるぞ。ここだ」

 ウッリマリアが、その迷宮を指差した事で、ぬいぬいの容疑が深まった。

 しかしルイスが「シンドラルの迷宮はホイルトツェリオにありますし、別の魔法使いでしょう」と、言って疑いは少し晴れた。

「迷宮は時として、魔物の罠が仕掛けられているが、生き埋めになるわけにもいかないので、外で倒したのだろう。よくある事だ」

 そう話をありふれた事の様にまとめるが、そんな事よくあっては困る。

「これでだいたいの地図は補完出来たな」そう言ったぬいぬいは、地図上に浪漫のある感じの文字で説明と湖などの絵を描いていった。

「なんか本格的な地図作家みたいですね。ぬいぬいは」

「古代魔法学をやるとこんな感じのものいくらでも写本させられるから、上手くなりたいならお前もやればいい。お勧めはしないが……で、今回の俺の考えた作戦は……ウィッシュ王子、お前の祖父の対抗馬をこの舞台の上に立たせたい」

「それは祖父を裏切れって事ですか?」王子の目が鋭く、ぬいぬいを睨みつける。今まで、彼の希望は祖父のみだったからだ。当然の事だろう。

「それはお前の祖父次第だろうな。だが、自分の利のみ追い求める祖父ならば、いずれお前はその祖父に足元をすくわれるぞ」

 王子はうつむき、手に力を込め考えたのち、ぬいぬいを見て「それはどういう作戦なのでしょうか?」と、聞いた。

「事は簡単だ。祖父の対抗馬にお前自らの出むき、助けて欲しいと言えばいいその利益は、お前の祖父と同等で、そうすればお前の祖父も天秤に乗るかもしれない。その際向こうから結婚や許嫁の話をされても絶対断れよ。そのカードは1回しか使えない――。たぶん今回の事で遊牧民の力の均衡は崩れるはずだ。お前はその中で城下町内でも、遊牧民でもオリエラでもいい、最良の相手を選べ。決して自分を殺すな」
 
「でも、あの祖父が許すでしょうか?」

「じゃ、その祖父に王様になって貰い、お前は操り人形として生きるんだな。それなら簡単で、悩まなくてすむ」
 
「では、せめて祖父には、俺、自ら伝えに行きます。女王の兵士が、見張って居る事もわかりますが、祖父は俺の無事を知れば自ら表舞台に上がってくれるかもしれません」

「それはあまりお勧めしない。だが、行きたければいけばいい。同行者はいい機会だ、お前たちで行け。その前にお勧めしない理由としては、お前の祖父を天秤に乗せる際のカードとして対抗馬が弱くなる。お前が次期王として、祖父と対抗馬を競い合い合わせる事で場に立たせるのと、祖父に許しをこい、承諾を貰うという事はお前は祖父より立場が下であると対抗馬にも宣言しているようなものだ。どこから行くかで、相手の印象が違うだろ? 祖父優先した結果反対されればそこで遺恨をだけを残し、下手をすると裏切られる恐れがある。王なれば起こりうる問題だろ、今起こると致命症になりうる。それでも行くなら止めはしない。しかし祖父の陣営に入るのはお前だけだ。お前が出てくるか、捕まるかするまでうちのパーティーは出て行かない。十分注意しろ。飲むな、食べるな、頭上にも注意しろいいな」

「わかりました」

「ここまで言っといてなんだか、お前の祖父と対抗馬が女王につく可能性はおおいにある。一族をひきいるのだから当然と言えば当然だ。その場合オリエラを担ぎだしてもダメだろう。で、一応、対抗馬だけ聞いておくがどこの一族だ?」

「サラマナの一族がいいでしょう。用水路を作ったのは彼らであり、今では遊牧民とは言えないほどになりました。それだけの備蓄を蓄える事が出来、多くの子供が育っている。そして祖父との関係もそう悪くない、彼ら僕の神輿を担ぐ事になれば、祖父もでてこざるおえない。対抗馬でないが、効果はそう変わらないでしょう」

「わかった。じゃ……明日は早く出発する事になる。皆、寝ておけ」
 
 そこで僕ら解散し、無理やり眠りについた。

 朝、幌馬車の用意をすると、一同の前に……。
 
「おはようー」と、伸びをする、旅立ちの準備をしたオリエラが現れた。
 
 ルイスはいつもと変わらず、少し慌てるウィッシュの姿を見る事になった。そして当然の様に荷馬車に乗り込む。
 
「やはり聞いてらしたんですか?」
 
「ルイスにも、バレてたのか……ぬいぬいにもバレてたみたいで『絶対、無理はするなよ』ってキッチンで声をかけられちゃった! そう言うわけだからよろしくウィッシュ。私は絶対に、足手まといにはならないから、安心していいよ」
 
 オリエラは、その緑の瞳をきらめかせウィッシュの顔、間近で挑戦的に行った。

 ウィッシュは、少し動揺したようだが、彼はふたたび目に力を宿す。

 そして本日御者をつとめるルイスに向かい言った。

「すみません、目的地を変更しサラマナの一族の里へ向かってください」っと。
  
     続く
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