魔王がやって来たので

もち雪

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女王のおさめる国にて

俺たちの作戦!

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 早朝、薄暗い中、一部のパーティーメンバーを乗せて出発した幌馬車は、人通りと見回っているだろう兵士を避けるため、普段は人が通らぬ道を一日中、走り夜を迎えいた。

 なんか今年は、とんだクリスマスだった。

 去年の受験と、どっちが大変だっただろうか? 疲れる気持ちの種類が、それぞれ違うので一概には比べられない。
 
「来年は、素敵なクリスマスイブを過ごしたい……」

 ふと、僕は呟く。視線はもちろんフィーナを捉えながら……。彼女は眠そうに、馬車の帆に顔をつけてもたれ掛かり座っている。
 
「さすがハヤト、呑気過ぎて心が癒されます」と、ルイスが言う。さりげなく落ち着いた感じで、こちらに飲み物を差し出しながらそんな貴族ジョークを言われると、実際ちょっと癒されているの? と、思いさえする。

「あっすみせん僕は女王がやって来てから、しばらくは祖父のもとに預けられていたので、違うこよみをつかっていたため詳しくないのです」と王子からすまさそうに謝られた。
 
「いやいや、君はこれからが大変だから気にしないで」
 と、言ったところで……。

 僕の声で起きらしいスフィンクスが、僕におぶさる勢いで、「何?何?クリスマスって何?、凄く美味しいの」と聞いてきた。
 
 その後、僕は一時間位クリスマスをスフィンクスに教えるため、荷馬車の端っこでひっそり語って聞かせてあげていたが、ルナとフィーナに「もう寝なさい」と言われて眠りにつく事になった。
 もう少しで赤い洋服の由来まで言って、終われたのに……。しかしスフィンクス保護者と僕の恋人に言われたなら仕方がない。

 その為か僕は到着の少し前の昼過ぎに、ルイスによって叩き起こされた。

 ルイスにお礼を言い、慌てて保存食にかぶりついていると、ルイスがある提案をする。
 
 「我々の向かう先は王子の祖父居るキャラバンとは違い。ある程度作戦の成功を裏付けるために、脅威である、信頼にたりる人物であると、見せつけなければなりません。なので、私の提案を聞き、したがってくれませんか?」
 
 そしてルイスプロデュースの、少し怖い勇者パーティーが作られる。
 
 1番苦労させられたのは、スフィンクスだ。

「いいですか、スフィンクス。貴方は最強の獅子なので、お腹を見せてはダメです。いやーんと言うのも駄目……寄って来たら、ベロベロ舐めるぞ! って顔して……子供には優しいお兄さんな感じていきましょう!」と、訓練までされていた。ポイントは顔を動かさず、眼球だけで相手を見据える事らしく。不意に顔を近づけるのもいいでしょう。

「わかった、そこでペロペロ舐めるゾ! 怖いかー! だね」

「凄く、上手ですよ」「もう完全に神獣ですね!」と、まぁ……凄い、指導力だった。

 そして恐ろしい事に、ルイスと、ルナの最強魔物使いペアーは、短時間で無口で、強そうなスフィンクスを作り出す。その後、計算通りとばかりに、目的地に着いた。
 
 俺へのルイスプロデュースは、一人称は俺で、恋敵の両親へ会いに行く感じの気持ちで、という指示が来た。

 それはほぼ君……いや、お前の境遇だよねぇ? ってちょっと思ったが、振り切れた有能執事はもう心の弱さなど、微塵もださない。
 
 俺は演技プランを頭にしっかりと入れて、演じ切るだけなのだ。
 どうせ、白銀の里ではやる事だ。ここでも俺は演じ切る。
 
 目的地は、丸太を等間隔に打ち付け、そして木をわたした柵がまわりを囲んでいる。その出入口のすぐ横に一端、馬車を置くとすぐ柵へ、子どもたちがすぐに鈴なりにがぶら下がり若干、気持ち的に僕は引いてしまう。目の前の子供たちが俺たちに気付きまわりを囲むが、スフィンクスが出てくると、彼らは母親たちのもとに戻って行く。

 そして最初の大人が出てくると、その大人に警戒しつつルナのまわりをのっそり、のっそりとスフィンクスは歩く。相手が、近寄ろうものなら、ルナを隠すように見知らぬ大人の前に立ちはだかる。

 そしてルナが「大丈夫ですよ」と、言うと、彼はルナの横に座る。

 近寄ったらベロベロしてやるぞ! と、決して、ある一定の距離の大人から目を離さない、あの演技プラン通りの演技をするスフィンクス。

 その隣には、教会で行う劇では、何度か主役を務めました。って貫禄のルナ。

 スフィンクスと村人の大人の様子見て、それを鼻で笑う感じに、演技しろって言われている俺。
 
 そして俺たちに続き王子が、オリエラの手を引いて登場したのだった。

     続く
 
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