魔王がやって来たので

もち雪

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女王のおさめる国にて

腹の探り合い

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 女王が治める城から、唯一の王位継承者のウィッシュを助け出した俺たちは、彼の祖父と友好関係にある集落を尋ねた。

 そして幌馬車からから降りたウィッシュに子供もが駆け寄る。

 その少年の前に槍を斜めに持ち立ち塞がり俺、まわりの視線が痛い。

「ウィッシュ知り合いか?」
 後ろを振り向かず、適当に後ろを斜め上の空くらいを見る。たぶん、だいたいの強いキャラはこんな感じ。

「はい、大丈夫です。こちらの村長のゾルトさんの息子さんです」

「なら、行ってよし!」

 その少年は、不安げに僕を見つめた。

「サフルおいで」

 と、言ったウィッシュの元へ、俺を避けるようにして走って行き彼の後ろに隠れた。そして俺は2人を見て半笑い。

「ウィッシュにい、あの人誰?」

「彼は勇者のハヤト様だよ。俺を助けてくれたんだ」

「えっ、うそぉ……」

「ウィッシュの守るためだ。すまんな坊主」

 本当、すまんな。だが、嘘ってなんだ?

 そして王子の次に、ウッリマリアとルイスとフィーナが幌馬車から出て来た。
 
「ルイスとフィーナは、ここで待っていてくれ。では、案内してくれ」
 
「では。着いて来い」
 立派な剣を携えた、いかつい男が俺に向かってそう言った。

 俺とルナが並び、次にスフィンクス、次の次はオリエラとウィッシュで、ウッリマリアの順番で並ぶ。

 毒を飲み、大立ち回りをする覚悟で来たので、順番は大切だった。そして最悪は、残った知将の2人がなんとかしてくれるだろう。

 そして武器を取り上げられないまま、俺たち大きなテントに通された。

 テントで一人、座る男、歳は30より上くらいか、彼も他の人々同様に室内でも帽子を被っている。

「久しぶりだなウィッシュ、嫁を娶ったんで見せに来たのか?」

「ゾルトさん、お久しぶりです。そうで、あって欲しかったのですがまだ、良い返事は聞けていません。今回俺が来たのは女王から、俺の国を奪い返すためご協力を求めにきました。」
 
 ゾルトは、ゆっくりお茶を飲む。ここで、俺たちの器を測っているようだ。
 
「で、俺のみかえりは?、そしてお前の祖父はなんと言っている?」
 
「祖父にはまだ伝えずに、こちらへ来ました。まずこちらに来ました。見返りはそれで充分かと、それより必要なら王に着いたのちに考えます。証人として勇者一行を連れてきました」
 
「勇者? あぁ……魔王に挑もうとする、死にぞこないの連中か?」

「あぁ、そうかもしれが、ここに居る間はまだ生きているがな。そして王子が王座に帰り付くまで、離れないつもりだ。良かったな? 心配事が1つ無くなったぞ?」

 俺はこの人こんなに煽って大丈夫なのか? ルイスもこんなもんだし大丈夫か!
 
「うん……こいつは本当にあの勇者なのか? 聞いていた話しとずいぶん違うな……」  

「噂ってのは、そんなもんだろう? お喋りが大好きなら付き合うが、俺を侮辱すると、手加減は出来ないかもな?」

 だから俺の醜態を、ここで話そうとするなよ!

「待ってください。ハヤト、ここには、言い争いをしに来たのではありません」

 ルナが、俺たちの話しに割って入った。俺は有名じゃないかも知れないが、ルナなら知ってだろう。そして俺の醜態は、記憶から消せ!

「そうだな。聖女ルナお前いつも正しい。後はお前に任した」

 そう言って俺はスフィンクスの横に座った。

 スフィンクスの目が語る。ぱぱ、もういい? 終わった? ごろんしてもいい

 俺は慌てて、少し険しい顔つきで首を2回横に振る。

 そうするとスフィンクス、わかった! とばかり険しい顔で前を向いた。

「今度は聖女様のお出ましか、なら俺の腹の傷を治してくれ、この季節はこれのせいか腰が痛くてかなわんからな……」


 彼は腹の傷を見せた横に真っ二つ、相当やばい状態だったのだろうよく生きてたなあ……この人。

「お腹をしまってください」

 そう言うとルナは、座っている彼の背中から回復呪文をかけていく。

 彼は額に脂汗を浮かべが、声を上げる事はない。

「おい、聖女様かなり痛いんだが?」

「そういう人も居るみたいですね」

 ルナは集中しているのか、今回、凄く塩対応である。

「はい、終わりました。寄付などのご予定があるのなら、教会までお願いします」

 淡々としているルナに対し、彼は最後に止めてた息をいきなりはいたように、ブファアと息をはき、いきなり服をたくし上げると、あった傷が影も形もない。

「これは?! いいだろ勇者一行が味方になれば、だいぶ楽な戦いになる。そして俺は以前の王以上の永久的な代償は求めない。しかしお前も我々遊牧民に対し前の王以上の介入をするな。それがお前の祖父のキャラバンの存続に関する事でもな」

「それは半分承諾出来ません。この国は俺の国になるのです。そして俺の半分の血は、遊牧民の血が流れている。だから俺は、難しくとも塀の内と外の関わり方を模索していくつもりです。祖父も俺の民です。違いはありません」

「お前は良くも悪くも祖父の血を引いていて、嫌になるなぁ。夢想家で、夢ばっかり追うくせに、無駄に力があるせいで、俺たちを巻き込もうとする」

「わかった。お前に若いのを何人か付かせる。決行はいつだ?」

「3日後、夜9時から」

 こうして決行の日はきまった。
 荷馬車に乗って来たのは美女、美男子の2名。
 なんか、ゾルトの思惑わかりやすい……。

 村をでてからだいぶたった所で、俺は乗って来た2人に問う。

「お前たちこの荷馬車に乗ったのなら、俺に従うのが通りってのがわかっているな? こっちも勇者として漏らされたく情報の1つや2つはあるんでな……」

「わかった」「わかっているわ」
 2人は、そう言った。

「本当に、わかっているのか――?」

「わかってる。先祖代々の名前に誓える」
 そう言うので、「ハヤトもういいですよ」と、ルイスが言った。

 そしてスフィンクスが、ごろんとした。
 
「初めまして! 草薙ハヤトです」
 そう言うと、すぐスフィンクスをもふもふする。

 オリエラも、彼ら挨拶するとすぐ――。
 「ウィッシュもやってみなよ! 来る時は緊張して全然もふれてないでしょう?」

「王子、危ないです! お辞めください!?」

「でも、ウッリマリア、今回の作戦には彼の存在が欠かせなかった。功労者を労う事は当然だ。ウッリマリアも僕の騎士として彼を労う必要があると思うぞ」

 そう、僕らギャーギャーやってる横で、ルイスは新しい情報を知ろうと乗って来たシロル、クスキを質問攻めにするのであった。
 
      つづく

 
 
 
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